希望する保育園に入れず困っている家庭が多いなか、なぜこの数年で、待機児童数が減少したのでしょうか。今回は、待機児童数が減少した背景とゼロにならない原因を探るとともに、実際に待機児童となったママパパの体験談をご紹介します。
待機児童とは?
まずは、「待機児童」の意味についてみていきましょう。実際には、希望している保育が利用できていない児童がおり、「待機児童数」に含まれていない「隠れ待機児童」が多く存在してます。「待機児童」と「保留児童」との違いもみていきましょう。
待機児童の意味
厚生労働省によると、保育所等利用待機児童とは、「保育の必要性の認定(2号または3号)がされ、特定教育・保育施設(認定こども園の幼稚園機能部分及び幼稚園を除く。)又は特定地域型保育事業の利用の申込がされているが、利用していないもの」と定義しています。
待機児童を簡単に言うと
保育園入園資格があり、特定の保育園に入園申し込みをしているが、施設が定員に達しているなどと言った理由で、保育施設を利用できていない児童を指しています。
保育園への入園資格として、保育認定(2号または3号)を受ける必要があります。就労、妊娠・出産、保護者の疾病・障害、同居又は長期入院等している親族の介護・看護、災害復旧などといった理由で「保育の必要性」がある場合、自治体に認定申請をし認められた場合、認定証が交付されます。
「保留児童」との違いとは
保留児童とは、保育園に入園資格があり希望しているのに、利用できていない児童でありますが、待機児童の定義にあてはまらないため、待機児童としてカウントされていない児童をさします。「隠れ待機児童」とも呼ばれ、その数は全国で6万人以上ともいわれています。
待機児童数には、希望していた保育園には入れなかったため、一時預かり保育や保育室などといった自治体が行っている保育サービスなどを利用していたり、仕方なく幼稚園に通っている児童は含まれていません。さらに、利用可能な保育施設があっても、特定の保育園の入園のみを希望していて、利用していない場合も待機児童数から除外されます。
2021年4月の時点で、待機児童数は全国で5634人で、2017年の26,081人に比べて大幅に減少したと報告されています。しかし、実際にはこの数字以上の多くの子育て家庭が希望する保育園に入園できておらず、実態が把握しずらいのが現状です。
待機児童問題はなぜなくならない?
では、なぜ待機児童問題がなくならないのでしょう。その原因には、さまざまな要因が重なり合っており、単に保育施設の数や定員数を増やすだけでは待機児童問題が解消されません。待機児童問題の根底に潜む原因をみていきましょう。
夫婦共働きの増加による保育申込数の増加
待機児童問題がなくならない原因のひとつとして、夫婦共働き世帯が増えていることから、保育のニーズが高まっていることが挙げられます。総務省発表の「労働力調査」によると、2019年の24歳~44歳の女性の就業率は77.7%で、コロナの影響があった2020年の若干の減少を除くと年々上昇傾向であると報告しています。また、厚生労働省は、女性就業率が増加するにあたり、今後も保育のニーズが高まることを予測しています。入園状況の改善がすすむなか、保育申込数は年々増えており、保育の需要と供給のバランスがとれていないことで待機児童問題がなかなか解消できてないのが現状です。
保育士の確保が困難
もうひとつの原因として、深刻な保育士不足の問題が挙げられます。厚生労働省によると、平成29年において、保育士登録者数は約147万人いるにもかかわらず、実際の従事者数は約57万人だけであることを指摘しています。資格を保有しているのにも関わらず、保育士の就職を希望する人が少ないその背景には、保育士の仕事量に対する賃金や勤務時間など待遇や責任の重さに対する不安がとりあげられます。保育士の処遇改善や勤務環境の改善、人材育成に向けた対策が国や自治体で行われていますが、いまだに保育士不足の状況が続いています。
保育の需要とズレた保育園の年齢枠
定員数に達していない保育園があるにも関わらず、年齢枠とその地域の保育ニーズがあっていないため、待機児童が発生しているケースもあるようです。例えば、ある保育園では、5歳枠には空きがある状況が続いているけれど、1歳枠はずっと満員で多くの1歳児が待機児童となっている状況に。「保育所等関連状況取りまとめ」によると、待機児童の75.7%が1・2歳児、0歳児も含めると、全体の87.9%を占めています。地域によっても保育申込児童の年齢に偏りがあるため、保育園に空きがあるのに待機児童を多く抱えているという自治体もみられます。
待機児童を経験したママパパの体験談
待機児童を経験したママパパはどのように乗り越えたのでしょうか。実際に待機児童となって直面した困難や突きつけられた現実をどのように対処していったのか、ママパパの体験談を教えてもらいました。
自宅で保育
コロナ禍の状況が続き、保育園に通わせることをあきらめた家庭も多いようです。その影響もあり、昨年は特に都市部において保育申込数が減っており、全体的に待機児童数が減ったひとつの要因でもあると考えられています。体験入園や見学など、通常なら入園を決める前にできていたことも制限されていたという背景もあり、安心して子供を預ける場所を見つけることができず、自宅で保育することにした家庭も少なくないようです。
二次募集で自宅から遠い園に入園
仕事や家庭の事情で年度途中の入園を探すのも一苦労。復職が決まっていながらも、子供を安心して預けることができる場所が見つからず、日々不安な気持ちが募るばかり。近場で見つけることができず、認可外保育園の二次募集でやっと入園できたケースも。入園できる保育園が見つかっただけでもラッキーと自分に言い聞かせているママも多いよう。
一時預かりを利用
自治体が行っている一時預かり事業は、急な用事や仕事、買い物、子育てからリフレッシュするためなどの理由で、一時的に子供を預かってくれる制度です。仕事をするために子供を預けても、月々にかかる保育費用が高額となり、働く意味を感じなくなるといったママも多いようです。
※自治体によっては、就労や通院などの理由を利用条件としているところもあります。
保育ママ制度を利用
保育ママとは、自治体が行っている家庭的保育事業で、「保育士または看護師の資格を有する家庭的保育者(保育ママ)が、保育所と連携しながら自身の居宅等において少数の(主に0~2歳児)を保育する」サービス。保育園と同様に保育環境が家によって異なるので、見学して決めるのがおすすめだそうです。
待機児童ゼロまで課題はまだ山積み
保育園の新設が進み以前に比べて待機児童は減ってきているものの、まだまだ待機児童ゼロになるには多くの課題が残っています。待機児童数に含まれていない隠れ待機児童とも呼ばれる保留児童は、全国でいまだに多く存在しているのが現状です。「子育てをしやすい社会」に向けて、保留児童を含め本質的に待機児童問題が解決できる対策が必要とされています。
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文・構成/HugKum編集部