娘が「余命宣告」……小児がんと闘う子どもと家族の応援団

医療従事者に感謝したいと思う方々も多い昨今。筆者は、以前から国際医療ボランティア団体である特定非営利活動法人「ジャパンハート」のサポーターをしております。サポーターといっても、「継続的な寄付」を行っているだけなのですが、今回は、ジャパンハートのさまざまな活動の中でも特に「がんと闘う子どもと家族の応援団『SmileSmilePROJECT』」としての取り組みをより多くの方に知ってもらいたくてご紹介します。ジャパンハートは少額からの寄付や「ふるさと納税」などさまざまな形の寄付も用意されていますので、もし、あなたも「私にもできることがあるかな」と思ってくれたら嬉しいです。

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ジャパンハートとは?

国連によると、世界の人口の半分は十分な医療サービスが受けられていません。がんのような非感染性疾患による早期死亡の削減は、SDGsでターゲット3、4に指定されています(※)。この世界的な課題に対して、日本で活動をしている団体の一つが 「特定非営利活動法人ジャパンハート」です。

※…全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、支払い可能な費用で受けられる状態を、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)と呼び、SDGsでもその一日も早い実現を目指している。

 

「第5回ジャパンSDGsアワード」賞受賞

ジャパンハートは、「目の前のひとりの生まれてきて良かったを、日本の医療から」を理念に国内外で活動している団体で、 2021年には「第5回ジャパンSDGsアワード」 SDGs推進副本部長(外務大臣)賞を受賞。

小児外科医が無償でスタート

1995年に、小児外科医の𠮷岡秀人さんが単身ミャンマーで始めた無償の医療活動に端を発し、現在はミャンマー、カンボジア、ラオスの3カ国で、子どもへの無償治療を中心に年間約2.5万件の治療活動を行っています。

日本の小児がんの現状と課題

日本国内で小児がんは、年間2,000~2,500人 が発症し、そのうち7~8割の子どもは元気になります。

大人になっても後遺症が

それでも、半年から数年と入院の期間は長く、退院しがんが寛解した後、成長して大人になっても後遺症が残ったり、他の人よりがんを発症する可能性が高かったりします。

SmileSmilePROJECTに参加されたご家族

長く続く治療の間、入院している本人はもちろん、親が入院に付き添い他の家族と離れ離れになってしまい、きょうだいがいればその子達も様々な場面で我慢をしなくてはならないこともあります。

そんな、大変な治療と向き合う子どもたちの心もまた、医療の届かないところのひとつ。そう考えたジャパンハートが取り組んでいるのが「SmileSmilePROJECT」です。

小児がんと闘う子どもたちの応援団「SmileSmilePROJECT」

長い治療と向き合う子どもと家族に、生涯深く心に残る輝く記憶の時間をプレゼントしているのが「SmileSmilePROJECT」。治療中、あるいは治療が一段落したときにジャパンハートの医療者が付き添うことで、安心して旅行や外出など、ご家族の思い出作りを楽しんでもらうものです。

ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)、キッザニアなどに招待

実施しているのは、家族の希望の行き先に医療者が付き添う個別旅行や、協賛企業を募り何組かをディズニーランドやUSJ、キッザニアに招待するイベントなど。小児がんの現状や課題を広く知ってもらおうと、ボランティアとして参加できる仕組みをつくったそう。

SmileSmilePROJECTに参加されたご家族

 

プロジェクトの開始は2014年。参加した家族は当初の年間10組ほどから年々増えており、2021年度は、77組の家族、計297人とのことです。

泊まっていたUSJのホテルから緊急搬送

2020年夏、大阪に住む9歳の女の子・中尾遥ちゃんが参加しました。女の子3姉妹の一番上のお姉ちゃんです。脳腫瘍が見つかり、少しずつ「出来なくなること」が増えてきた中で、SmileSmilePROJECTでUSJに行きました。

SmileSmilePROJECTに参加された中尾遥ちゃんご家族。治療を続けてきた遥ちゃんにとっては、待ちに待ったお出掛け。お母さん、お父さん、二人の妹の家族がそろって、アトラクションに乗ったりショーを観たり食べ歩きしたり♬

何も知らない人から見たら、「本当にがんなの?」と感じてしまうほどに、自分の足で歩き、終始笑顔で朝からたくさん遊んだそう。

しかし、翌朝、容体が急激に悪化。脳腫瘍独特の「ろれつが回らない」症状が遥ちゃんを襲い、泊まっていたUSJのホテルから、そのまま病院へ向かい緊急入院しました。

主治医の先生から伝えられたのは「余命宣告」

それから数カ月後、主治医の先生から伝えられたのは余命宣告。お母さんはその帰り道、自分がどうやって帰ってきたのかもわからないほど混乱しながら自宅に戻ったそうです。

そんな目の前が真っ暗な状態で手に取ったのが、SmileSmilePROJECTから届けられた一冊の写真アルバム。写真に写っているのは、楽しそうな遥ちゃんと、それを笑顔で見守る自分の姿。お母さんは改めて娘の病気と向き合うことを決意し、最期まで、母としてできることを続けたと語っていました。

遥ちゃんは天国へ

遥ちゃんが天国へ旅立ってから今でも、あの日の楽しかった思い出が、ご家族の心の支えに。

SmileSmilePROJECTの活動は、単に外出サポートをするだけではなく、がんと闘う子どもとご家族の「心のケア」を大切にしています。たとえ、それが助かることのない命でも。これが、SDGsでも掲げられている「すべての人の健康」「心の健康」に繋がる、新たなカタチの医療だと考えます。

ジャパンハートの理事長に聞く、今後の展望

今後の展望について、ジャパンハートの理事長である𠮷岡春菜さんに取材することができました。

キャパシティが課題

𠮷岡春菜さん「2014年の設立以来、ありがたいことに、年を追ってより多くの病院・レジャー・宿泊施設からのご理解、ご協力を頂けるようになりました。それでも、子どもによって症状や対応が異なるため、各所との連携においてさまざまな壁にぶち当たります。

年間70組以上のご家族との外出に対して医師1名と看護師3名のみで対応しており、単純にキャパシティの課題もあります」

ネットワーク作りを強化したい

𠮷岡春菜さん「そこで、病院・レジャー施設・宿泊先等外部との連携を強化し、一つのネットワークを確立させることで、もっとたくさんの子どもやご家族が気軽に安心して参加できて、子ども同士や親御さん同士、そして社会とも繋がれる仕組みをつくっていきたいと考えています。

SmileSmilePROJECTの母体である認定NPO法人ジャパンハートは、『目の前の一人を救う』ということを理念に掲げています。これから先、一人でも多くのお子さんとご家族と出逢い、そのすべての方達が、参加してよかった、生まれてきてよかったと思ってもらえるよう、少しずつ輪を広げていくこと。それが『誰もが健康で幸せな生活を送れる世界の実現』に一歩近づくと信じています」

「私にできること」から

今回、ジャパンハートを取材して、SDGsや医療の在り方について考えさせられました。多くの命を助けることも当然大切ですが、一人ひとりが「生まれてきてよかった」と思える世界を創ることはSDGsでもあり医療でもあることを認識しました。

筆者はこれまでジャパンハートのサポーターとして支援を続けてきましたが、これからも新たな形の医療の実現に向けて共に歩み、SDGs達成に貢献したいと思います。

ジャパンハート【公式】ホームページはこちら>>

監修/ジャパンハート

文・取材/峯あきら

今回の記事で取り組んだのはコレ!

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 4 質の高い教育をみんなに

SDGsとは?

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