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コロナ禍で、子どもの肥満傾向が増加中!
コロナ禍による生活習慣の変化で、大人だけでなく、子どもの間でも肥満、いわゆる「コロナ太り」が増えています。昨年発表された2020年度の文科省の学校保健統計調査によれば、肥満傾向がある子どもの割合が全般(高校一年を除く)で上昇していることがわかりました。児童生徒約69万人を対象に行ったこの調査では、特に増加幅が大きかったのは小学5年生の男児で、他の学年でも肥満傾向の割合の増加は顕著で、5歳と小学生全学年、中学2年では、過去最多を記録しました(ただし、2020年度はコロナ感染症拡大の影響で調査時期が例年と異なるため単純比較はできません)。
肥満傾向の増加は、感染予防のための運動不足が要因と考えられますが、肥満の原因は、エネルギーの摂りすぎです。特にコロナ禍は家にいることが多いため、食べ過ぎ、運動不足により食べたものが消費されず、脂肪がついたのだろうと予想されます。必要以上にエネルギーを摂りすぎると、過剰になる部分が蓄積し、それが継続すると肥満になります。ホルモンが要因の病的なものもありますが、ほとんどが毎日の生活習慣から起こっています。
子どもの肥満は「小児生活習慣病」を招くことも
肥満になると「小児生活習慣病」を引き起こす恐れがあります。小児生活習慣病とは、生活習慣病の子ども版。小児は15歳までが目安と定義されています。
小児生活習慣病にかかると、生理的な働きが悪くなるだけでなく、太っていることから体の動きも鈍くなります。そうすると活動量が減る、運動不足になる、運動がきらいになる、といったことから、さらに食べたものが蓄積されて、肥満がどんどん増大していきます。まさに負のループです。
小児生活習慣病は、小さいうちなら治る可能性が高いですが、思春期になると治りにくく、そのまま大人に持ち越してしまいます。大人になって生活習慣病になると、糖尿病などにみられるように、いろいろな合併症が出て、大変になるのは、みなさんのイメージどおりだと思います。
身長・体重の発育基準、標準体重がわかる「成育曲線」については、こちらの記事で
極端な食事制限はNGです。必ずリバウンド&脳のホルモンにも影響が
肥満は身体面だけでなく、精神面にも悪影響を及ぼす可能性があります。つまり肥満の子は、脂肪が多くて見た目がぶよっとしているため、周りの子からからかわれる。それを自分でもいやだと思って、劣等感を持つ場合もあるのです。
小学校高学年ぐらいになると、太りすぎを気にしてダイエットをする子も出てきます。「ちょっと太ったから、ごはんを半分にしよう」という程度なら問題ありませんが、全く食べないとか、食べてもある食材ばかり食べるとか、極端に食事制限をする子もいて、これは大問題。こうすると確かにやせますが、必ずリバウンドします。リバウンドして太って、またやせるとなると、脳のホルモンに異常をきたし、ますます太る、最悪の場合、拒食症になってしまいます。
ダイエットは女の子に多いイメージですが、太っているのが格好悪いという風潮があるのか、最近はダイエットをする男の子も少なくありません。正しくダイエットするには、まず親が子どもの発育に正しい知識を持ち、発育のためにはバランスよく栄養を摂り、それが体を元気に動かせることということを子どもに教えてほしいですね。
食事だけでなく、運動や睡眠も発育には欠かせません。小学校に入る前から繰り返し伝えておきたいですね。
肥満を改善する3つの方法
では、現在、肥満になっている子は、どうやったら肥満を改善できるのでしょうか。その方法は3つあります。
(1) 食事の回数を見直す。夜食の内容を考慮
肥満の子は、とにかく食事の回数が多いのです。学校から帰ってきたら、おやつを食べて、夕食を食べて、夜食を食べる。塾に行っている子は、塾の前に食べて、塾が終わってから夜食を食べる。。。食事の回数が多いと間違いなく太りますから、まず回数を見直して、なるべく減らしましょう。また夜食に、ラーメンなど脂っこいものを食べるのも避けましょう。
(2) 運動する習慣を1日のルーティンに組み込む
食べて運動しなければ当然、肥満になります。朝5分だけラジオ体操をする、休日は外で体を動かす、といった習慣をぜひ親子でつけましょう。
体を動かさないと、動かさないのが平気になりますが、毎朝起きたら前屈や後屈をする、夜寝る前に背伸びやストレッチをするなど、一日のルーティンに組み込めば、やらないと気持ち悪くなります。そうすると自然に習慣になっていくでしょう。
(3) 「早寝・早起き・朝ごはん」を習慣化する
昔から言われているキャッチフレーズですが、肥満改善に役立つので、改めてその大切さを知ってほしいです。
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今、肥満傾向の子は夏休みが改善のチャンスです
教えてくれたのは
小林正子先生
お茶の水女子大学理学部化学科卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程修了。博士(教育学)。
東京大学教育学部助手、国立公衆衛生院(現 国立保健医療科学院)室長を経て、2007年より女子栄養大学教授。2020年より現職。
発育の基礎研究のほか「発育グラフソフト」を開発し、全国の保育園、幼稚園、学校等に無償提供し、成長曲線の活用を促進。発育から子どもの健康を守る重要性を啓発している。著書に『子どもの足はもっと伸びる! 健康でスタイルのよい子が育つ「成長曲線」による新子育てメソッド』(女子栄養大学出版部)、最新刊に『子どもの異変は「成長曲線」でわかる』(小学館新書)
子どもの発育研究に長年携わってきた小林正子先生が、子どもの健康を守るため、家庭でも「成長曲線」を活用することの重要性を提唱する1冊。
子どもの異変は、「成長曲線」のグラフに記録することで早期に発見できると、子どもの発育研究に長年携わってきた小林正子氏は語ります。
子どもの健康を守るため、家庭でも「成長曲線」を活用することの重要性を提唱します。
取材・構成/池田純子 イラスト/まる
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