貴船神社とは?
「貴船神社(きふねじんじゃ)」は、参道の両側に赤い灯籠(とうろう)がずらりと並ぶ光景が印象的な、京都の人気観光スポットの一つです。いつ頃、誰を祀(まつ)るために建てられたのか、貴船神社の基本情報を見ていきましょう。
パワースポットとして人気の古社
貴船神社が立つ場所は、JR京都駅から北へ約18km、車で行けば40分ほどの「左京区鞍馬貴船(くらまきぶね)町」です。
貴船町周辺は、京都の奥座敷として知られるエリアで、神社の近くを流れる貴船川沿いには「川床(かわどこ)」をしつらえた旅館や飲食店が軒を連ねます。
清流と豊かな緑のおかげで、夏でも涼しく、避暑のために訪れる観光客で賑わっています。
川の上流に立つ貴船神社も、緑に囲まれた境内に清々しい空気が満ちあふれ、パワースポットとしても大変人気です。
なお、地名は「きぶね」ですが、神社の名前は「きふね」と読みます。神社の起源でもある清らかな水が濁らないように、との願いが込められているためです。
参照:貴布禰総本宮 貴船神社
貴船神社の由緒
貴船神社の創建年代は不明ですが、相当古くから存在していたことは確かなようです。社伝には、今から約1300年以上も前に、社殿の建て替えが行われたとの記録が残っています。
由緒については、以下の二説が伝わっています。
・太古に貴船山中の鏡岩に天から神様が降りてきた
・約1600年前に、神武天皇の母・玉依姫命(たまよりひめのみこと)が黄船に乗り、到着した場所に祠(ほこら)を建てて水神を祀った
貴船神社に祀られている神様
貴船神社には三つの社があり、それぞれに神様が祀られています。
本宮と奥宮に祀られる「高龗神(たかおかみのかみ)」は、水を司る神様です。降雨をコントロールするほか、地中の水を適切に湧き出させる力があるとされています。
奥宮には、同じく水の神である「闇龗神(くらおかみのかみ)」と玉依姫命も合祀されていると伝わっています。
本宮と奥宮の間に立つ結社(ゆいのやしろ)の祭神は、「磐長姫命(いわながひめのみこと)」という名の女神です。
貴船神社の御利益
貴船神社を参拝すると、どのような御利益があるのでしょうか。磐長姫命を祀る結社と、水の神を祀る本宮・奥宮とに分けて見ていきましょう。
縁結び
結社は、縁結びの御利益があるとされ、平安時代にはすでに良縁を願う人が多く参拝に訪れていました。歌人の和泉式部(いずみしきぶ)が、心変わりした夫との復縁をかなえたことでも知られています。
ところで、結社に祀られる磐長姫命には、「木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)」という名の美しい妹がいました。
神武天皇の曾祖父「瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)」が、木花開耶姫命にひとめぼれして求婚すると、姉妹の父神は磐長姫命も一緒に嫁がせます。
しかし、磐長姫命は妹と違って大変醜かったため、実家に帰されてしまいました。傷付いた磐長姫命は、人々が自分と同じ思いをしないように良縁を授けようと考え、貴船の地に鎮座したといわれています。
運気隆昌、諸願成就
本宮・奥宮には、運気を高め、願い事を成就(じょうじゅ)させる御利益があると信じられています。
本宮や奥宮の祭神が司る水は万物の元であることから、「気」が生ずる根源として、古くは「きふね」を「氣生根」と記していました。
そうした言い伝えから、貴船神社は清らかな神の気が生ずる場所であり、神の気に触れることで人の運気も高まりやすいといわれています。
実際に朝廷では、飢饉や疫病が発生したときに、貴船神社へ勅使(ちょくし)を派遣し、収束を祈願していたそうです。特に日照りや長雨が続いたときは、生きた馬を献じて雨乞いや雨止みを祈っていました。
後に、生きた馬に代わって馬の絵を描いた板を使うようになり、現在の「絵馬(えま)」の元になったとも伝わっています。
貴船神社の見どころ
京都には、観光スポットがたくさんあるため、1カ所に滞在できる時間は限られます。効率よく見てまわるために、貴船神社の見どころを押さえておきましょう。
本宮の水占みくじ
貴船神社の名物は、本宮の「水占(みずうら)みくじ」です。一般的なおみくじと違い、選んだ紙には何も書かれていません。
社殿の近くに霊泉が湧き出る場所(水占齋庭、みずうらゆにわ)があるので、浸してみましょう。「水占」の名の通り、紙が濡れると占いの結果が浮き出て読めるようになります。
浮かんだ文字は、紙が乾くと次第に消えていきます。水がなければ読めないおみくじは、いかにも水の神を祀る神社らしく、よい思い出になるでしょう。
龍穴がある奥宮
奥宮は、玉依姫命が船でたどり着いた場所とされ、貴船神社創建の地です。
かつては、ここが本宮でしたが、1046(永承元)年の洪水被害を受けて本宮が現在の場所に移された後は、奥宮となっています。
森に囲まれ、ひっそりと佇(たたず)む奥宮の本殿は、とても神聖な雰囲気に包まれています。社殿の近くにある「船形石(ふながたいわ)」には、玉依姫命が乗っていた黄船が隠されているそうです。
本殿の下には「日本三大龍穴(りゅうけつ)」の一つに数えられる、大きな穴があるといわれています。ただし、龍穴は大地のエネルギーが噴き出す場所であり、人が覗き見ることは許されません。
四季折々の美しさ
四季折々の美しい自然も一緒に楽しめるのが、貴船神社の大きな魅力です。
春には山桜、秋には紅葉を堪能できます。桜や紅葉は、本宮近くの休憩処「龍船閣(りゅうせんかく)」から眺めるのがおすすめです。
夏は、樹々の緑に赤い灯籠がよく映え、写真撮影にも気合が入ります。森林浴気分でゆっくりと散策しましょう。冬には雪が積もることもあり、灯籠とのコントラストが幻想的です。
日が暮れると、灯籠がライトアップされる時期もあるので、スケジュールを合わせてみてもよいでしょう。
由緒ある貴船神社で、運気を呼び込もう
清らかな水と空気、古い歴史を持つ貴船神社は、日本でも指折りのパワースポットといわれています。都会の喧騒(けんそう)が届かない静かな境内を歩いていると、ふと神様が近くにいるように感じられるかもしれません。
貴船神社でよい運気をたくさんいただき、京都旅行のひそやかなお土産にしましょう。
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構成・文/HugKum編集部