児童相談所の一時保護とは? 目的から期間、保護に至る流れも解説

ニュースで見かけることのある「児童相談所の一時保護」とは、どのような目的で行われるのでしょうか? 通告を受けてから一時保護に至るまでの手順と、一時保護が終了した後に保護されていた子どもがどこへ行くのか、それぞれ解説します。

児童相談所の一時保護とは

児童相談所では、必要に応じて子どもの一時保護を行っています。どのようなときに一時保護が必要と判断されるのでしょうか?

まずは、一時保護の基本的な意味を解説します。

子どもの安全を確保するための措置

児童相談所長が必要と認めて行う一時保護とは、子どもの「安全確保」を目的に行われる措置です。虐待や非行などにより子どもの生命が脅かされているときは、安全確保のために子どもを一時保護所や第三者へ託します。

生命の危機のほか、現在の環境が子どもの権利の尊重や自己実現に悪影響とされるときも、保護が必要と考えられるタイミングです。

保護期間中は、生活を通した関わりの中で子どもに寄り添うとともに、子ども本人やその家族への支援方針を決めていきます。

児童相談所の一時保護までの流れ

子どもの安全確保を目的に行われる一時保護には、決まった手順があります。一連の流れの中で、子どもの安全が脅かされているかを確認し、保護する必要があると認められた場合に一時保護が実施されます。

一時保護が行われるまでの流れを見ていきましょう。

当事者や個人、関係機関からの通告

児童相談所では、子どもの安全を守るために必要な一時保護を速やかに行えるよう、子どもやその保護者はもちろん、学校・児童福祉施設・病院などの関係機関から、文書や口頭による通告を受け付けています。

そもそも、保護が必要な子どもを発見したときは、児童相談所や福祉事務所へ通告しなければならないと「児童福祉法第二十五条」で定められています。

個人からの通告も重要な情報です。近隣住民からの通告をきっかけに、子どもの一時保護につながるケースもあります。なお、通告は匿名でも可能です。

参考:児童福祉法(昭和二十二年法律第百六十四号)

安全確認および面接

通告を受けた児童相談所は、子どもの「安全確認」や「面接」を行います。

安全確認までの時間は、通報を受けてから原則48時間と定められており、職員が子どもに直接会って行います

このとき、現状では一時保護の実施について、保護者へ同意を求める必要はありません。子どもの安全が脅かされている状況であれば、児童相談所の判断で保護できる仕組みです。

しかし、実際には親の反発を恐れ、児童相談所が子どもの一時保護をためらってしまうケースも少なくありません。

そうした現状を受けて、2024年4月に児童福祉法の改正法が施行されます。この改正法の主な変更点は、一時保護に対する親の同意を得られない場合は、裁判所による「司法審査」で必要性を判断することです。

司法審査の導入により親の理解が得やすくなること、速やかな保護につながりやすくなることが期待されています。

参考:
虐待相談の対応の流れ|東京都福祉保健局
児童福祉法等の一部を改正する法律案の概要 |厚生労働省

立入調査

児童相談所の職員は「児童虐待防止法」に基づいて立入調査を実施することが可能です。

保護者が、立入調査を正当な理由なく拒否した場合や虐待が疑われる場合には、裁判所の許可状を取得し、強制的に入室することもあります。ケースによっては、警察のサポートを受けながら連携して対応します。

参考:
児童家庭課/千葉県 第4章 児童相談所の機能 
児童虐待の防止等に関する法律(平成十二年法律第八十二号)

保護・安全確保

立入調査の結果、必要と判断されると子どもの一時保護の決定が下されます。この決定は、保護者や保護される子ども本人から同意を得られなくても実施できます。

ただし、子どもに同意を得ないまま保護すると、保護期間中の生活に影響が及ぶ可能性が否めません。

そのため、オリエンテーションによって一時保護所について伝え、子どもの意向を聞いた上で保護するのが良いといわれています。

一時保護の期間は?終了したらどうなるの?

一時保護はその名の通り、期間限定の措置です。決まった期間が経過すれば、子どもは一時保護所を出ることになります。保護期間が終わった後、子どもはどこへ行くのでしょうか?

一時保護の期間とその後の行き先をチェックします。

原則的な一時保護の期間

保護期間は、原則として「2カ月」とされています。

以前は、一時保護に期間の定めはなかったため、いつまで保護が続くのか分からない不安から、児童相談所に反発する保護者もいました。

そうした事態を受けて、保護期間が2カ月と定められました。ただし、必要に応じて延長される場合もあります。

2020年6月に全国の児童相談所219カ所へ行った調査によると、一時保護期間で最も多いのは「29日~2カ月未満」です。この期間内に子どもや家族への支援方針を決定します。

参考:実態把握調査の結果(追補)について

家庭復帰するか、施設や里親の元へ行く

それぞれの事情に合った保護期間を過ごした子どもの多くは、保護が終了すると「家庭復帰」します。

「実態把握調査の結果(追補)」によると、2カ月以内に一時保護が解除された子どもの66.5%は元の家庭へ戻っています。

家庭復帰が決まるのは、子どもの意思と再発のリスクがないことが認められた場合です。再発を防ぐサポート団体とのネットワークも、家庭復帰となるポイントといえます。

一方で、状況により家庭復帰が難しい場合は、施設や里親の元へ移る子どももいます。

参考:実態把握調査の結果(追補)について

子どもを守る児童相談所の一時保護

児童相談所の一時保護は、子どもの安全を守るための措置です。そのため、必要と判断すれば、子ども本人や保護者の許可を得なくとも一時保護は行えます。原則的な保護期間である2カ月以内に、子どもを家庭復帰させるか、施設への入所や里親の元での生活へ移るかを判断するのです。

安全が脅かされている疑いのある子どもは、個人や匿名の通告から見つかることも多くあります。通告もまた、一時保護と同様に子どもを守ることにつながる行動なのです。

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構成・文/HugKum編集部

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