「家では残さず食べるけど、園ではお弁当を残します」【保育経験41年・元園長先生の相談室29】

子どもが生まれると、成長に合わせていろいろな悩みが出てきます。健康のことはもちろん、しつけのこと、園生活でのこと、学習についてなど、「どうしたらいいの?」とふと誰かに聞いてみたくなる疑問は尽きません。そんなみんなが感じる育児のお悩みや疑問に、保育経験41年の元園長先生・田苗孝子先生に答えていただきました。ふっと気持ちが軽くなる、そんな先生のお答えをQ&Aでご紹介します。

子どもの健康、しつけ、園生活の悩みをズバリ解決!!

 

入園して約2か月ほどたちますが、最初のころよりお弁当を残すことが多くなりました。家では残さず食べるので、好き嫌いが原因ではないようですが、少し心配です。どうしたらいいでしょう。

愛知県 S・Aさん

 

まずはお弁当の量を少なめにして様子をみてみる

ゴールデンウイークを乗り越え、少し経った5月中旬から6月にかけては、急に蒸し暑くなり、汗ばんだりすることが多くなる時期。気候の変化に体調が追いつかず、子どもの食欲が落ちることがあります。まず、お弁当の量を少なめにして様子をみてください。お母さんもこのころはお弁当作りに慣れたころで、気づかないうちにお弁当のおかずを作りすぎている場合もあります。園から帰宅したとき、お腹がすいていておやつをほしがるぐらいが適量です。気候に体が慣れていくに従って、徐々に食欲も回復すると思います。

しかし、しばらくしても食欲に変化がなく、体調も良好ということでしたら、心に負担がかかっていることが考えられます。まずは、家庭環境に最近変化がなかったか、考えてみてください。たとえば、家族に病人が出て心配しているお母さんの気持ちを子どもが察して、食欲が落ちている場合もあります。

また、お子さんの園でのストレスが原因になっていることもあります。入園してしばらく経ったこの時期は、お友だち関係も生まれて園生活にも慣れ、楽しくなってきていると大人は思いがちですが、子どもにとっては毎日が新しい体験で、ドキドキしたり、うれしかったり、不安だったりしています。お友だちとの関わりも慣れて深くなったぶん、意見のくい違いやうまくいかないことが出てきます。

しかも、それはほんのささいなことが多く、たとえば、遊び方が違うことに戸惑ってしまったり、活動的になったお友だちの言動が乱暴に見えて心配になったりしているというようなことだったりします。だから、子どもは少しストレスを感じても、なんとなくそのままやり過ごしてしまうことが多いのです。

小さなストレスが原因の場合は子どもの心に寄り添ってあげる

小さなストレスが積み重なってくると、だんだん気が重くなり、それが食欲に現れるケースがあります。私たち保育者は、そういったことがあるのをわかっているので、子どもの食欲には気を配り、サポートするようにしています。もし、お母さんがお子さんの様子に不安を感じたら、担任に園での様子を聞いてみてください。園ではお子さんの様子に気を配り対処します。

そのうえで、お母さんは子どもの気持ちに寄り添い、家での生活を楽しくするよう配慮してください。それは「いつもより30分長く公園で遊ぶ」「テレビやDVDをいっしょに見ておしゃべりをする」といったちょっとした思いやりでいいのです。くれぐれも「園で何があったの?」と問い詰めるのは厳禁。あくまでも子どもの気持ちに同調するよう心がけてください。

園でのサポートと同時に、家庭でお母さんがこうして寄り添っていくことで、子どもの心が徐々に楽になり、やがて食欲も戻ると思います。

 

回答していただいたのは…

田苗孝子先生  宝仙学園幼稚園元園長。1949年広島県生まれ。2007年から20193月まで園長を務める。41年間にわたり、保育現場でさまざまな家庭で育つ子どもとその親を見守り続けた、その深い見識には定評がある。豊かな経験を活かして、『幼稚園』(小学館刊)で育児相談コーナーを担当。子育て中のママたちに温かなメッセージを伝えてきた。

 

 

構成/山津京子 イラスト/手丸かのこ 『幼稚園』2014年6月号

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