快眠のプロに聞く「正しい寝姿勢」とは?やっぱり仰向け、手のひらは天井に…

睡眠と発育には、切っても切れない関係があることは、誰でもわかっているはず。にもかかわらず、上手に眠る・わが子を眠らせるとなると、正しい知識を持っていない人も多いのではないでしょうか。
そこで明治45年創業の老舗布団屋『ねむり家』(富山県富山市)の5代目店主にして、寝具製作技能士の大郷卓也さんに、上手な寝姿勢を教えてもらいました。

仰向けに寝て、仰向けに起きる

眠りには、寝具や寝室の環境が大事だと、いろいろな場所で言われています。しかし、そもそも体が喜ぶ寝姿勢とは、どのような姿勢なのでしょうか。

「子どもの場合は体が柔らかいので、どんな姿勢で寝ても構わないのですが、大人は違います。

理想的なのは仰向けに寝て枕の上で小さな寝返りを一晩で20回打ち、仰向けに静かに起きる

横向きやうつぶせが心地良いと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、その寝姿勢に慣れているだけであって、本当に体が喜んでいるとは言えません。

極端な言い方をすれば寝ている時に体を痛めて、体の変形で猫背になったり、肩こりや腰痛につながったりする可能性もあります」(大郷さん)

大郷卓也さん。5kgの重さが人の頭にはあると言う

手のひらを天井に向け、鎖骨を開く

では、仰向けでも、どのような点に具体的に注意すればいいのでしょうか。

「仰向けに寝たら、手のひらを天井に向け、鎖骨を開いてください。女性の場合、仰向けに寝るとつま先が「ハ」の字のような形(つま先が内側を向く)になりがちですが、逆ハの字でつま先を外へ向けてください。

呼吸に関しては鼻呼吸が基本です。上の前歯の根元に舌の先をぺたっと付けた状態を意識して、鼻から息を吸い、鼻から息を出す深呼吸を、仰向けのまま10回くらい繰り返す練習を最初は心掛けてください」(大郷さん)

慣れていないと、気が付けば寝ているうちに、いつもの悪い寝姿勢に戻ってしまっている可能性が高いです。

しかし、大郷さんいわく、寝始めだけでもせめて正しい姿勢を意識したいとの話。その上で、理想的な姿勢で寝られる時間を少しずつ延ばしていけばいいようです。

写真のように、お腹の上で手を組んでしまうくせが筆者にはあった。手は体の横に、手のひらを天井に向けるが基本

子どもと一緒に練習したい寝返り運動

大郷さんは、子どもにもこの寝姿勢を意識させてあげたいと言います。

「小さいお子さんは放っておくと布団の上であちらこちらに移動してしまうと思いますが、深く寝入ったら仰向けに戻してあげて、手のひらを上に、鎖骨を開いて、足先がハの字に開くように整えてあげてください。

また、寝る前には、親子で一緒に寝返り運動をしてみてはいかがでしょうか。

仰向けに寝た状態でひざを上げ、顔→肩→体の順番で右に左に体を転がす練習です。

順番がとても重要です。顔→肩→体を力まずに動かし、左右5往復くらい転がってください。こんなに簡単な動作でも、左右のどちらかで大人の方は動かしにくさを感じるはずです」(大郷さん)

朝目覚めた時に体の痛み・張りを感じるパパ・ママは、悪い寝姿勢と、寝返りが上手に打てていないためにトラブルが生じている可能性が高いとのこと。

親子の寝具を整えるとともに、寝姿勢についても見直してみると、子どもの成長やパパ・ママの健やかな生活に、劇的な変化をもたらしてくれるかもしれません。

早速、今夜から正しい寝姿勢を心掛け、寝返り運動も試してみてくださいね。

【取材協力】大郷卓也さん。有限会社寝装の大郷(ねむり家)5代目店主、国家資格寝具技能士、健康睡眠アドバイザー。医師やカウ ンセラー、スポーツトレーナーらと「ぐっすり眠る会」を設立する。眠りの勉強会や講演会を主催し、布団職人として布団を製造す るとともに、心と体を芯から癒す眠りの知識を広める活動を展開。主な著書に『睡眠は1分で深くなる!』(自由国民社)

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取材・文/坂本正敬 写真/荻矢陸央(一部を除く)

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