子どものIQを測れる! 知能検査WISC(ウィスク)を知ってますか? 就学相談や特別支援に使われることも

「知能検査」「IQ」という言葉を聞いたことがありますか?「WISC(ウィスク)」は心理学に基づいて、お子さんの認知能力・知的能力を客観的に測るための検査で、世界的に使われています。

お子さんの小学校入学に向けて、また入学後は特別支援に向けて「検査を受けてみませんか?」と言われた方もいるかもしれません。今回は子ども向けの知能検査「WISC(ウィスク)」について解説します。

WISCでIQが測れる!? WISC(ウィスク)って何のこと?

お子さんのことをもっと理解したい、客観的に捉えたいという思い

元教員である筆者は、担任している子どもの保護者に「WISC(ウィスク)という検査があるのをご存知ですか?」と尋ねたことがあります。
すると、「知っています」と答える方はごく少数で、ほとんどの方が「知りません」「初めて聞きました」と答えました。

お子さんに合った接し方や支援を知りたいなど、お子さんのことを客観的に捉える必要があるときに、学校現場では「WISC(ウィスク)」が話題に上がることがあります。

今回は、子ども向けの知能検査「WISC(ウィスク)」について、教員目線からご紹介します。

WISC(ウィスク)は子どもの知的能力を測定する検査

WISC(ウィスク)は、子どもの知的能力の程度を測定するための検査のこと。子どもの認知能力を数値化し、客観的に捉えるための検査です。
正式には、「ウェクスラー式児童用知能検査」と呼ばれています。全体的な認知能力を示す「全検査IQ」と、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」という4つの指標について数値化されます。

対象年齢は5歳0か月から16歳11か月までで、小学生・中学生世代を中心に、年中さんから高校1年生くらいまでが対象となっています。
検査は、およそ60分から90分程度の時間、心理の専門家とお子さんのマンツーマンで行います

複数ある知能検査の中でもシェア率が高く、世界中で取り入れられており、各国の言葉に翻訳されて使われています。

 WISCを受けただけでは、発達障害などの診断は得られません。そのような診断は、心理士ではなく医師が行うもの。
WISCの目的はあくまでも、その子の得意な面や苦手な面を知り、その子に合った関わり方やサポートのヒントにすることです。

 知能検査はうちの子に関係ある?

では、知能検査は誰でも受けられるものなのでしょうか。また、検査を受けた方が良い子はいるのでしょうか。ここでは、小学校に関連した場面をピックアップしてみましょう。

 就学相談を受けたとき

就学相談とは、小学校入学にあたり、就学先を決める相談をする場です。具体的には、「通常学級、特別支援学級、特別支援学校」のどこに行くか、また通常学級にいながら週に数回通級するのかを、子ども・保護者・教育委員会で話し合い、決めていきます。

判断材料の1つとして、WISCなどの知能検査を受けることがあります。
「通常学級と特別支援学級のどちらに入学させようか迷っている」「幼稚園・保育園での生活を見ていると、通常学級でやっていけるか不安」という方が相談されることが多いようです。 

特別支援教室、介助員などのサポートを申請するとき

小学校に入学後も、WISCを受ける機会があります。それは、特別支援教室、介助員などのサポートをお願いするときです。
週に数時間だけ別室でお子さんに合わせたカリキュラムでのサポートを受ける特別支援教室、クラスでの授業にサポートとして入ってもらう介助員や支援員を依頼するには、教育委員会に申請書類を提出しなければなりません。
そのとき、「この子は特別な支援があるとさらに力をつけていけるだろう」という客観的な資料が必要になります。

そこで、知的能力の程度を数値化できるWISCを受けることになります。 

受けている支援を続けるか、やめるか判断するとき

すでに特別支援を受けているお子さんが、それを続けるか、やめるか判断するときにもWISCを使うことがあります。例えば、学校での困り感が薄れてきたので、進級したら介助員なしでも大丈夫か判断するときが挙げられます。また、中学校でも特別支援教室を利用し続けるか判断するときもあるでしょう。

 IQが高いと頭が良いイメージがあるけど…そもそもIQって何の数字?

IQが高い人=頭のいい人」というイメージを持たれている方が多いと思います。
しかし、「IQが高いこと」と「頭が良いこと」はイコールではありません。それは、「頭の良さ」にもいろいろな捉え方があるからです。
WISCでは、「頭の良さ」ではなく、「全般的な知的能力」を測定しています。

WISCでは、「同じ年齢の集団の中で、その子はどの位置にあるか」をIQの数値として示します
同じ年齢の中で最も平均を100として得点を出し、IQ85~115の間に約68%の人が収まると言われています。

高校受験や大学受験のときによく目にした“偏差値”と似たイメージかもしれません。偏差値は平均が50ですが、その分布は似た形になります。

 IQを算出するにはいくつかの指標がある

 WISCの検査結果は、項目ごとに数値化されています。
得点の高い項目はその子の強み・得意なところ、特点の低い項目はその子の苦手とするところと分かります。

ここでは、項目の内容をざっくりと見ていきましょう。

 全検査IQ

全体的な認知能力を示しています。基本検査の合計から算出されるものです。

 言語理解

言葉の理解・思考力、言葉から何かを推論する力を示します。

知覚推理

視覚的な情報から物事を理解し、考える力を示します。

ワーキングメモリ

注意深く聴き、正確に理解したり、記憶して処理したりする能力を示します。

処理速度

多くの情報を、事務的な作業として処理する能力を示します。

例えばこんな結果だったら?

 では、検査結果の数値をどのように読み取ればよいのでしょうか。例えばこんな検査結果だったら…と想定してみましょう。

まず、「全検査IQ」が80ということは、平均が100なので平均より低いことがわかります。得点が高い項目は「知覚推理」、特に低い項目は「言語理解」「処理速度」ですね。
視覚的情報の理解は平均より少し高いですが、言葉での理解や単純作業のスピードには課題があるようです。また、ワーキングメモリも低めです。

こんなお子さんには、言葉だけで伝えるよりもイラストや映像があった方が理解しやすいかもしれません。やることの手順をメモしておき、自分で確認できると良いですね。また、作業の量を減らしてあげることも必要かもしれません。

実際の検査結果には、心理の専門家から具体的なコメントが書かれています。検査を受けているときのお子さんの様子も含めて、お子さんの強みや弱み、効果的なかかわりなどが示されます。

 うちの子にも受けさせたい! WISCについてQ&A

WISCってどこで受けられるの?

専門のスタッフが配置されている医療機関や、教育委員会の担当課や教育センターで受けることができます。
支援のため、家庭支援センターや児童相談所で検査をすることもあります。

誰でも受けられるの?

受けたい人が誰でも受けられるわけではありません。

医療機関では、まず医師のもとを受診します。「検査が必要である、したほうが良い」と医師が判断した場合に受けるのが一般的です。

教育委員会で受ける場合にも、検査が必要かを判断するため、書類での申請や面談を行います。

検査の結果は学校に知らせなきゃダメ?

検査結果を学校に共有するかは、検査をどこで受けたか、何のために受けたかによって、違いがあります。

まず、特別支援のために、学校を窓口として検査を受けた場合です。その場合は、検査結果を学校と共有することが必須です。結果を聞く時も先生と共に共有し、どんな支援がお子さんに合っているか、一緒に話し合っていきます。また、サポートを受ける際の申請書類の1つに、検査結果を用いることもあります。

医療機関で検査を受けた場合は、必要に応じて、検査結果を学校に知らせましょう。先生にとっても、お子さんにどんな特性があるのか、客観的な資料があると、接し方や授業の工夫に生かすことができます。

IQは、年齢を重ねると変わっていくの?

日々の生活の中で認知能力は変化していきますので、検査の結果は、年齢を重ねていくと、変化することがあります

改めて検査を受けるときは、2年間程度期間を空けるのが一般的です。
理由としては、短期間では急激に変わらないこと、検査のやり方や内容を覚えてしまって正確な結果とならないことがあげられます。

ネットで“簡単IQテスト”というのを見たけど、どれくらい信ぴょう性があるの?

IQテスト」で検索すると、多くの診断サイトが出てきます。しかしこれらは簡易的なものであり、正確な数値とは言えません。

知能検査の具体的な内容を、外部に漏らすことは禁止されています。
ですから、ネットにあるものはWISCなどの知能検査を参考にしながら、対面ではなくネット上で実施できる項目を挙げたものと言えるでしょう。

 お子さんを知るための1つのツール

お子さんが少しでも過ごしやすくなってほしいと思うのは、親として当然ですよね。しかし、毎日子どもと接している親でも、うまくいかないこと、我が子なのに分からないことは多々あります。
お子さんのためのサポートをするなら、お子さんのことをより深く知る必要があります。そのツールの1つとして、知能検査があると捉えてみましょう。

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文・構成/yurinako

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