「アート思考」は人生を豊かにしてくれる
『アート思考』というと、アーティストになるための方法のように思われている方も多いのですが、そうではありません。簡単に言うと、自分なりのものの見方をして自分なりの答えを持つこと。優れた現代アーティストは、その時代の常識を疑った上で、新たなものの見方を生み出しています。
V U C Aワールドと呼ばれる変化の激しい現代、生き方、働き方、子育てにも絶対的な正解を求めることは不可能。だからこそ、自分なりの答えを出せる現代アーティストのような『アート思考』が人生を豊かにすると思い、さまざまなところでお伝えしています。
そして、そのアート思考を、幼児はもともと持っています。
娘が1歳の頃、なんでも舐めてしまう月齢で、旅先の海岸で砂を口に入れてしまったことがありました。飲み込みこそしないものの、娘は何度も砂を口に運びます。気に入らないものは一度しか口にしないはずなので、「食べちゃダメ!」と言いたくなったものの、どこが気に入ったのだろう?と思い、私も真似をして砂を口にしてみました。
すると、高級なジェラートのようになめらかで柔らか。
思い込んでいたジャリジャリとした砂のイメージとはまるで違うもので、それは絶対に娘の真似をしなければ知らない世界でした。
すべての子どもは「アート思考」ができている
「すべての子どもはアーティストである。問題なのは、どうすれば大人になったときにもアーティストのままでいられるかだ」というパブロ・ピカソの有名な言葉があります。
幼児はもともとアート思考の持ち主。思い込みや常識的なものの見方にとらわれず、目の前の対象に自分なりの仕方で向き合っている。偉大なアーティストたちがしてきたことを、自然に行っているのです。
大人としてできることは、何か特別なことを教え込もうとするというより、もともと持っているものを壊さないようにすることが大切なのです。砂を舐めるかば別として(笑)、危険のない範囲であれば、ぜひ子どもの真似をして、子どもの眼差しで、豊かな世界を味わってみてください。子どもにとっても、ママに真似されるというのは、言葉が使えない幼児期においては特に「あなたのそのやり方を認めているよ」という肯定のメッセージとなって伝わります。
自分なりのものの見方を養うアート鑑賞法
そんな子どもたちも、いずれは大人の世界へと入っていきます。お子さんがすでに幼児期を過ぎているなら、私たち大人と同じように、「視覚による認知」と「言葉による理解」に頼りがちになっているかもしれません。
美術館に行って、作品よりも解説文の方が長く眺めていた、なんてことはありませんか? あるいは、その作品の中に全ての答えが詰まっているとばかりに、探偵のような目で観察をしてはいませんか?
たしかに、それも一つの見方です。しかし、「自分なりのものの見方」ができるようになりたいのなら、別のアプローチが必要です。
以下は私が行っている方法で、誰でも簡単にできますから、ぜひ参考にしてみてください。
1、「気づいたこと」「思ったこと」を箇条書きでできる限りたくさん書き出す
→「どこからそう感じたのか?」「そこからどう感じるのか?」を考える。
2、1でしていた見方を「もしそうでないとしたら……?」と否定する。
せっかく美術展が豊富な秋なので、親子で足を運び、「気づいたことは?」「そこからどう感じる?」「でも、もしそうじゃないとしたら?」などと、楽しく対話を重ねながらじっくりと作品を鑑賞するのも楽しいと思います。自分なりのものの見方を育む鑑賞ですから、作品からアウトプットされるものは、作者の考え、一般的な解釈と違う、ありえない見方、馬鹿げた見方でもいいのです。
必ずしも美術館で名画を見るといったことにこだわる必要はありません。20世紀以降の近代においては、アートと非アートの境界線はなくなっています。身のまわりにあるものでもこのようにして見ると、自分なりのものの見方ができるようになっていきます。
さらに鑑賞を深めたい人はアウトプットを
上記の鑑賞法によって得た気づきを、「短い物語」や、「勝手な作品解説」や、「絵」の形で表現をすると、その過程で自分の想いや考えがさらに広がります。
他の人がアウトプットしたものを鑑賞し合うことによって、また新しいものの見方に出会うことができます。家族でおこなってみても、新鮮な感覚を得られるかもしれませんね。
2022年10月3日(月) 18:00~19:45
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記事監修
『自分だけの答え』が見つかる13歳からのアート思考
取材協力/みんなの教育技術