石英の特徴とは?
石英(せきえい)が具体的にどのようなものなのか、特徴と併せて紹介します。日本では昔からなじみのある水晶との関係や違いについても見ていきましょう。
造岩鉱物の一種
石英は造岩鉱物の一種で、多くの火成岩・堆積岩・変成岩中の主要な構成鉱物です。
鉱物とは、天然の物質でほぼ一定の化学組成・原子配列を持つ、生命力を持たない均質物質を指します。石英は英語で「クォーツ(quartz)」と呼ばれています。
石英の化学組成のほとんどは純粋な二酸化ケイ素(SiO2)で、地球表層のあらゆるところで見られます。
どの岩石に含まれているかによって形状はさまざまですが、一般的にイメージしやすいのは先端のとがった六角柱状の状態でしょう。
純粋なものは無色透明ですが、微量成分や放射線による影響で白・桃・黄・青・黒・紫といった色が付いたものもあります。
「水晶」と同成分
石英と水晶の成分は同じで、二つの区別に明確な定義はありません。ただ、石英のなかでも結晶形態がはっきりしているものを「水晶」とするのが一般的です。水晶は英語で「クリスタル(crystal)」と呼ばれ、「クォーツ(quartz)」とは分けられています。
石英は、二酸化ケイ素が地中の熱で溶けた後に、時間をかけてゆっくりと固まった結晶です。特に長い年月をかけて結晶化したものは、粒が大きく透明度が高くなる傾向があります。さらにそのなかで、結晶としての形状がはっきりした「自形結晶」となったものが水晶と呼ばれるのです。
水晶は無色透明以外にも、乳白色・赤色・黄色・紫色・黄紫色・橙色・灰色・黒色など、さまざまな色があります。
水晶の産地として有名な山梨県
水晶は日本各地で採れていましたが、歴史ある有名な産地は山梨県です。現在、稼働している鉱山はありませんが、その歴史は武田信玄が活躍していた時代にまでさかのぼります。
明治時代には、ガラスの資源として盛んに水晶の採掘が行われていました。乙女鉱山では、明治時代の初頭から100年以上も水晶が採掘されていたのです。
二つの水晶が約85度の角度で結合しハート形になった「日本式双晶」は、世界を魅了したといわれています。
石英の主な用途
石英は、私たちの暮らしに欠かせないさまざまな製品に使われています。具体的にどのようなものに使われているのか、主な用途を見ていきましょう。
石英ガラス
石英はガラスの原料として広く使われています。ガラスのなかでも、二酸化ケイ素の含有率が99.9%と超高純度のものが「石英ガラス」です。
金属の不純物が極めて少なく、高温や熱衝撃に強いため、半導体の製造プロセスや医療分野で使用する検査機器に欠かせません。身近な製品では、パソコンやスマートフォンのメモリーにも使われています。
基本的に、石英ガラスは石英を高温で溶かして作られますが、近年は純度を高めるために化学的な方法も用いられています。
通常のガラスとは何が違う?
世界に流通している一般的なガラスには、二酸化ケイ素だけでなくソーダ灰や石灰が含まれており、それが石英ガラスとの大きな違いです。ソーダ灰を含むことから「ソーダガラス」と呼ばれています。
加工性の高さがソーダガラスのメリットですが、高温と湿度の変化に弱く、火災時に割れやすいのがデメリットです。石英ガラスも割れないわけではありませんが、通常のガラスより高温に強いという特徴があります。
また、ソーダガラスは実際には少し青みがかっているため、ガラス業界では「青板」とも呼ばれています。窓ガラスの場合は横から見ると緑がかって見え、石英ガラスはどこから見ても透明というのも異なる点です。
他にもある!石英が使われているもの
石英は、ガラス以外のものにも使われています。知らないだけで、自宅で使用している製品に使われていることも珍しくありません。そのほかの用途を紹介します。
石英管ヒーター
石英で作られた石英管は、1,000℃近くまで耐えられる耐熱性と高い透明度が特徴です。電熱線の外管に石英ガラスを使用した「石英管ヒーター」や、光ファイバーを通す管として使われています。
例えば、石英管ヒーターは多くのこたつに搭載されています。ハロゲンと比較すると熱が伝わるスピードやパワーは多少劣りますが、少ない消費電力でも暖かくなるので省エネな点がメリットです。
石英管ヒーターは、多くのメーカーのオーブントースターにも使われています。水にぬれても割れたり漏電したりしないため、安心して使えます。
装飾品やジュエリー
結晶の状態がはっきりしている石英(水晶)は、ネックレス・ペンダント・ブローチ・指輪などの装飾品やジュエリーとして使われています。紫色のアメジスト(紫水晶)は2月の誕生石で、ネックレスや指輪などに使われていることも珍しくありません。
ローズクォーツは優しいピンク色で美しいことから、ジュエリーとして高い人気があります。ただ、透明度が高いものは非常に希少です。
シトリン(黄水晶)も希少価値が高く、ビクトリア朝時代のペンダントやブローチにはシトリンが使われているものが多いことがわかっています。
水晶はパワーストーンとしても世界各地で親しまれており、置物としてインテリアグッズにしたり、ジュエリーとして加工されたりしています。
石英は身近なものに使用されている鉱物
石英は造岩鉱物の一種で、化学組成のほとんどが二酸化ケイ素です。一般的に、はっきりとした結晶の形状をしている石英を「水晶」と呼びますが、二つを分ける明確な定義はありません。
石英は「石英ガラス」としてパソコンやスマートフォンなどの部品になったり、「石英管ヒーター」としてこたつやトースターなどに使われたりしています。そのほか、ジュエリーとしても親しまれていることから、私たちの身近にある鉱物といえるでしょう。
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構成・文/HugKum編集部