キッズ無料! 大人500円で「本物」のアート鑑賞! 最強のお出かけスポット「東京国立近代美術館」へ行ってみよう

家族でお出かけなら美術館はいかが? 東京国立近代美術館は、子ども向けの鑑賞お助けアイテムもあり、ミュージアム初心者にも楽しめる工夫がいっぱい。皇居エリアを見渡せる絶景スポットもあります! 周辺には北の丸公園もあって緑が豊か。ファミリーのお散歩にぴったりです。

東京国立近代美術館ってどんなところ? 

皇居エリアにある東京国立近代美術館(愛称・MOMAT)。19世紀末から現代まで国内外の幅広い作品を所蔵、展示しています。

 最寄り駅は東京メトロ・竹橋駅。都心ですが皇居周辺の豊かな緑に囲まれ、美術館に隣接する北の丸公園や公園内の科学技術館に立ち寄るのもオススメ。美術館の前から千鳥ヶ淵まで桜の木が連なっているので、春には絶景が楽しめます。

美術館でビンゴ! まずはMOMATセルフガイドをゲットしよう!

子連れで美術館に行っても何をどうしたらよいのかわからない。そもそも子どもにとって楽しいのか、と二の足を踏んでしまう人も多いかと思います。でも、東京国立近代美術館にはゲーム感覚で作品を鑑賞できるお助けアイテムがあるので、ご安心ください。

その①「セルフガイドプチ&みつけてビンゴ」

「セルフガイドプチ&みつけてビンゴ」。ビンゴカードと展示作品をかわいいイラストで紹介するリーフレットがセットになっている。

4~8歳くらいの小さなお子さんと保護者が一緒に回るなら「セルフガイドプチ&みつけてビンゴ」がおすすめ。展示室をまわりながら、「あか」「はな」「どうぶつ」といったキーワードを作品のなかから探すビンゴゲームができます。これなら子どもも興味を持つこと必至です。なかには「いす」といったキーワードもありますが、展示室内の座るための椅子を発見して穴をあけてもOK。美術館という非日常の空間をまるごと楽しんでしまいましょう。

その② 「MOMATコレクションこどもセルフガイド」

「MOMATコレクションこどもセルフガイド」。カードは全部で50種類以上。何度か訪れてカードをコレクションする楽しみも。

こちらは小中学生対象のワークシート。展示中の作品がプリントされたカードが6枚セットになっています。広いコレクション展のなかから掲載されている作品を探すだけでも宝探し感覚で十分楽めます。カードには「この人たちはどんな人?」「年齢は?」「性別は?」「お気に入りを選んでみよう」といった、子どもと話しながら作品を見るときのきっかけになる言葉が満載です。

 セルフガイドはインフォメーションでもらえますので、展示室に入る前に立ち寄るのを忘れずに!

 

インフォメーションカウンターは1Fロビーにあります。

子ども無料!? 大人ワンコイン! 年パス1200円! で約200点の作品を堪能

「MOMATコレクション」展示室

セルフガイドが使える所蔵作品展「MOMATコレクション」は、広々としてゆったり鑑賞できるので、とくに子連れにおすすめです。驚くべきはその料金。高校生以下はいつでも無料、大人も500円、つまりワンコインで楽しめるんです。しかも、年間パスポート(MOMATパスポート)でも1200円というお得さ。これならお散歩コースに組み込んで、ふらっと出入りするなんて使い方もできますね。ちなみに、窓口で当日券の販売をしていますが、事前にオンラインで日時指定予約することも可能です。

13000点を超えるコレクションのなかから厳選した約200点が、3フロアに展示されています。教科書に出てくるような有名な作品が目白押しです。

「いつもと違う」雰囲気にワクワク。パズルのような壁画に囲まれる部屋。

ソル・ルウィット《ウォール・ドローイング#769 黒い壁を覆う幅36インチ(90cm)のグリッド。角や辺から発する円弧、直線、非直線から二種類を体系的に使った組み合わせ全部。》1994年、東京国立近代美術館蔵   Courtesy the Estate of Sol LeWitt, Massimo De Carlo and TARO NASU Copyright the Estate of Sol LeWitt.

では、展示室に入ってさっそく作品を見てみましょう。とくに子どもたちの興味をそそると評判なのが、3Fにある現代美術作家、ソル・ルウィットの作品。元々の白い壁を黒く塗り、その上に白線を引いて壁画が制作され、この部屋自体が一つの作品になっています。不思議な柄の黒くて高い壁に囲まれると、非日常的で子どももワクワクした気持ちに。作者は既に亡くなっていますが、作家が選んだ「線を引く資格を持つ人」が1ヶ月かけて描き、完成させました。 

カラフルな渦巻きに興味津々。子どもの集まる人気作!

ロベール・ドローネー《リズム 螺旋》1935年、東京国立近代美術館蔵 ※現在は展示されていません。

大人には難解なイメージのある抽象画ですが、こちらのロベール・ドローネーの作品は、子どもたちに大人気。たくさんの色をつかって渦巻がぐるぐると描かれています。ぜひ何に見えるかお子さんに話しかけてみてください。数字の8を発見したり、野菜の断面にたとえてくれる子もいるのだとか。 

まさかの! 畳に寝転んで日本画鑑賞ができちゃう。

「MOMATコレクション」3F日本画コーナー

日本画を展示する部屋で驚くべきものを発見!畳のスペースがあるのです。床の間に飾る掛け軸や、部屋の仕切りとして用いる屏風は、本来、床に座った状態で鑑賞するもの。目線を低くできるように移動式畳が置かれています。抱っこひもから赤ちゃんを下ろしてゴロンとさせつつ、大人は靴を脱いで足を伸ばしてみたり。我が家のようなリラックスした雰囲気で鑑賞できちゃうのは、この美術館ならではです。

椅子を動かしてベストポジションを探そう!

また、この部屋の椅子は観客が絵を見やすい場所に動かしても良いのだそう。これまで数々の美術館に行きましたが、椅子を動かして良い美術館はなかなかないかもしれません。近くや遠くに移動して、どこがベストポジションかお子さんと探してみてください。ラタン製の椅子は、ヤクルトのボトルのデザインでも有名なインテリアデザイナー・剣持勇によるものです。美術館は椅子にこだわったところも多いので、作品以外もすべてが貴重な体験になりますよ。

お堀と高層ビル群が一望のもとに! 今の「東京」を感じられる絶景スポット

子どもや赤ちゃんが飽きてしまったり、ぐずってしまった場合は4Fの「眺めのよい部屋」へ。大手町方面のビル街をバックに皇居のお堀の緑が見渡せる休憩スペースなんです。東京にいてもこんな景色はなかなか見ることができません。この景色だけを見に来る価値があるといってもよいほどです。この部屋では水分補給もOK。ちなみに美術館内(1F、2F)の多目的トイレにはおむつ交換台があります。授乳したい場合は1Fのインフォメーションで相談すればスペースを貸してもらえます。

ミュージアムショップですてきなカードゲームを発見!

「国立美術館アートカード・セット」(税込2500円)。4つの国立美術館の所蔵作品65点がカードになっている。

展示室を出て、お楽しみのミュージアムショップへ。気になったのが「国立美術館アートカード・セット」です。美術作品がプリントされたカードを使っていろんなゲームができます。どのゲームも作品をすみずみまで見て、発見したことを言葉で説明しなければいけないので、自然に鑑賞力とプレゼン力を育める、というすぐれもの。「お勉強」ではなく「あそび」として、それらの力が身についたら願ったり叶ったりですね。

子ども時代から美術に触れることは良いことがいっぱい――東京国立近代美術館研究員に聞いてみました。

さて、ここからは東京国立近代美術館の研究員・細谷美宇さんに、お話を聞きます。

東京国立近代美術館研究員・細谷美宇さん

――東京国立近代美術館では、学校の団体見学も多く受け入れているそうですね。

細谷さん:コロナ禍で少し減っていますが、美術館を利用する学校は徐々に増えています。10年以上前ですが、学習指導要領に、博物館や美術館の積極的活用を促す文言が入ったことも学校が関心を持ってくださる一つの要因だと思います。現在は少人数制なのですが、当館ではギャラリートークというスタイルで、子どもたちと作品が出合う場を提供しています。絵の前でスタッフがナビゲートしながら子どもたちが作品の感想を言い合います。絵を前にすると次々と違う意見が出てきて、たくさんの見方があることを子どもたちは体験します。

――違う意見が受け入れられる場は貴重ですね。

細谷さん:ギャラリートークの環境では、どんな感想でも面白がってもらえるので、クラスのなかで普段発言をしない子どもが意見を出してくれることもよくあります。その様子を見て、担任の先生が感動する姿も目にします。

――学校向けに行われているギャラリートークですが、家庭レベルでもできることでしょうか?

細谷さん:美術館に行って、ワークシートを片手に「この絵、どう思う?」「タイトルをつけてみよう」と家族で話すと良いと思います。教えようと思って連れて行くよりは、ママ・パパもわからないから一緒に見ようと、一緒に絵の世界を探検する態度で行くと、対等に話すことができて良いのではないでしょうか。

また、当館で開催している「おやこでトーク」などのプログラムを利用していただくのも一つの手です。こちらは4~6歳の未就学児と保護者がペアで参加するギャラリートークです(現在は不定期でオンライン開催)。子どもはいろんな常識を身につける前の感覚を持っているので、親が気づかないことを子どもが見つけて「うちの子こんなに絵を見られるの?」と驚く親御さんも多いですよ。

ギャラリートーク等で活用する「オノマトペカード」。カードの言葉に合った作品を展示室から選ぶ。(制作:MOMATガイドスタッフ)

――子どもの「見る力」は、あなどれないですね。

細谷さん:ギャラリートークをしていると、なんの知識もない小学生でも作家の伝えたいと思っていたことや、作品にまつわる背景にたどりつくこともあります。たとえば、100年以上前に描かれた原田直次郎《騎龍観音》この作品を見て、「カードゲームのCGイラストみたい。新しい感じがする」という子がいました。一見作品と関係なさそうなのですが、「なんでそう思ったの?」と聞くと、「絵の具がつやつやで描きたてに見えるから」と言っていて、実際に修復した直後だったことがあります。子どもは良く見てくれています。

ギャラリートーク等で使う補助教材。絵の中の登場人物になりきって会話をしてもらうもの。(制作:MOMATガイドスタッフ)

――美術館で現物を見ることと、デジタル画像で鑑賞することには何か違いがありますか?

細谷さん:当館でも、こどもセルフガイドにデジタル版があったり、大人向けに「オンライン対話鑑賞」を開催しています。高画質の画像を拡大できますし、デジタルならではの良さもあるのですが、実物を見るのとは圧倒的に情報量が違います。実物は3Dなので、絵の具の重なり具合や立体感なども伝わります。一緒に展示される作品によって見え方も変わりますし、美術館の建物やライティング等も含めての体験になります。

近づくと絵の具のムラ、筆跡まで見えてくる。この情報量が実物ならでは。 (ロベール・ドローネーリズム 螺旋》部分 1935年、東京国立近代美術館蔵 ※現在は展示されていません。)

――子どもが美術に親しむ良さはどのような点にあるとお考えですか?

細谷さん:個人的な意見になりますが、アートの世界には正解がありません。表現されたものを自分がどのように受け取るかは自由です。世の中には正しいものを選ばなければならない場面が多々ありますが、そのときにいろんな価値観があることを知っていることは大切です。美術に親しむことは、その多様な価値観を信じ続けるときに有用なのではないでしょうか。また、子ども時代の常識に固められる前の目でいろんなものに出会っておくことは、その後の人生を豊かにするのではないかと思っています。

――子連れで美術館に行こうとしている方にメッセージをください。

細谷さんコレクション展をぜひ活用してほしいです。コレクション展はお財布にも優しいですし、人も比較的少ないです。年間パスポートを買って、好きなときに来て子どもが泣いちゃったら一度外に出る、そういった使い方もできますので、気軽に訪れていただければ嬉しいです。

こども向け・ファミリー向けプログラムも開催!

東京国立近代美術館では、夏休みの小学生対象プログラムや、小学校入学前の小さなお子さんを対象にした「おやこでトーク」を年に数回実施しています(現在はオンライン)。いずれも人気の高いプログラムのため抽選制、申込み期間が限られますので、こまめにウェブサイトをチェックするか、子ども向けプログラムの情報を配信するメールニュースに登録するのがおすすめです。

◆東京国立近代美術館

開館時間 10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)

※いずれも入館は閉館30分前まで。

休館日 月曜日(祝休日は開館し翌平日休館)、展示替期間、年末年始

所蔵作品展「MOMATコレクション」観覧料金

一般500円、大学生は250円※高校生以下および18歳未満、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)は無料。

https://www.momat.go.jp/am/

こども・ファミリー向けプログラムのご紹介

https://www.momat.go.jp/am/learn/kids/

HugKumではARTに関する記事を「子ども×アート」シリーズでお届けしています。

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企画協力/中川ちひろ
撮影/五十嵐美弥
取材・文/藤田麻希
構成/HugKum編集部

 

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