子連れで【ガチ中華】ガイドが教えるディープな楽しみ方♪ 旅育専門家がすすめる「日帰り異文化体験」とは

異文化を学ぶキーワードとして「ガチ中華」に注目するシリーズ。食から見えてくる文化の違いはもちろん、コロナ禍のいま子どもがしておくべき経験と、その方法としての「ガチ中華」体験について、専門家に指南してもらいました。

巷で話題の【ガチ中華】に、親子でチャレンジ!

気軽にできる異文化体験として、HugKumでもお伝えしている子どもの「ガチ中華」体験。これまでは「自宅で楽しんでみる」プランのご紹介でしたが、今回はいよいよ実店舗を訪れます。

そもそも【ガチ中華】って?

TV番組「マツコの知らない世界」や「タモリ倶楽部」「孤独のグルメ」等でも取り上げられている「ガチ中華」ですが、

「海を渡って日本に来た中国語圏の人たちが調理する本場の中国料理を、従来の『町中華』とは別物として、近年『ガチ中華』と呼ぶようになったんですよ」

と解説してくれたのは、「ガチ中華」の動向に詳しい東京ディープチャイナ研究会代表の中村正人さん。

▲「ガチ中華」本も続々発刊!

【ガチ中華】を楽しむ10カ条! ファミリーが押さえるべきコツは?

この度は案内人に中村さんをお迎えして、親子で「ガチ中華」を満喫する方法を教えていただくことに!

「僕たちは『ガチ中華』を楽しむコツを、10カ条にまとめてお伝えしています。シビれる辛さ(麻辣)は大人限定としても、子連れで訪れるなら、2と5と8あたりがポイントでしょうか」(中村さん)

【ガチ中華】を楽しむための10カ条

1.シビれる辛さ=「麻辣(マーラー)」のシャープな味わいを試してみよう

2.味つけに注文をつけるのは悪いことではない

3.オススメ料理は何かを聞こう

4.本当のオススメ料理は店の壁に貼られている!

5.「打包(ダーバオ)」=持ち帰りはお気軽に

6.常連になって毎回違うメニューを頼んでみる

7.オーナーの出身地を聞いてみよう

8.日本語のコミュニケーションが難しいと感じたら「海外旅行」気分で楽しもう

9.中国と同じ味にするには限界もあることも理解しよう

10.彼らは日本人の来客を心待ちにしている

【ガチ中華】は、子どもを熱烈歓迎⁉

「味つけを『辛くしないでほしい』だったり、食べきれない時に『持ち帰ります』だったり。『ガチ中華』のお店、というより中国の飲食店ではごくごく一般的なことなので、それぞれのご家族のリクエストを伝えるのに、遠慮したりする必要はありません。

中華圏では、赤ちゃんや子どものことを『宝宝』と書くように、子どもを大切にする、というより “大切にし過ぎる” くらいの人たちが多い。子どもが多少騒いでも、お店もお客もお構いなしですし、周りも騒がしかったりするので気になりません。むしろ子連れのほうが、う~んと優しくしてもらえるかも(笑)」(中村さん)

▲『現代漢語詞典』(中国・商務印書館)にも【宝宝】子どもに対する愛称、とありました!

「あとは『海外旅行』気分で、親子で異文化に飛び込んでみてください!

コロナ禍で外国を訪れるチャンスも減っていますから、疑似体験としても『ガチ中華』を楽しんでいただけたら」(中村さん)

子どもに【ガチ中華】は心配、という場合は?

「食の安全や添加物などを気にされる方もいらっしゃるでしょう。

意識の高さは日本と同じくお店によりますが、例えば都内で9店舗を展開してブームをけん引する『味坊集団』では、日本国内に自社農園を持っています」(中村さん)

▲中国各地の蒸し料理を味わえる「蒸籠味坊」では自社農園の野菜を提供
「ほかにもデパ地下の催事等でも人気の蘇州料理店『蘇園ワンタン』(都内および埼玉)には、ヴィーガンの中華菓子があったりとか」(中村さん)
▲「蘇園ワンタン」では、色鮮やかなワンタンも合成着色料不使用
「従来のイメージを良い意味で覆してくれるような、さまざまなスタンスの『ガチ中華』店も誕生しているので、それぞれのご家庭の好みやこだわりに応じて、さまざまなアプローチもできるのではないでしょうか」(中村さん)

首都圏から地方へ拡大する『ガチ中華』ムーブメント!

「『ガチ中華』といえば東京! というイメージもあるかもしれません。

たしかに首都圏に集中してはいるのですが、中華フードコート『友誼食府』は池袋、立川(東京)、松戸(千葉)のほか、福岡にも店舗があります。

関西圏なら大阪日本橋や道頓堀界隈なども『ガチ中華』店が増えていて、すでに全国に点在しているのです」(中村さん)

▲「ガチ中華」の中心地・池袋には、アジアの街角と見間違えそうなエリアも

「在日中国人が全国でこれだけ増えていますから、日本人客には『町中華』のメニューを作っているけれども、実は中国人客には『ガチ中華』を出している、という中華料理店も少なくありません。

中国人が住むところには『ガチ中華』あり! と考えれば、町の新たな魅力を発掘できるかもしれませんよ」(中村さん)

【ガチ中華】のゲートウェイ! 中華フードコートへ

「ガチ中華」を楽しむための基礎を伝授いただいたところで、実際に「ガチ中華」のお店へ!

「今日は僕らが『ガチ中華』のゲートウェイ的存在と呼んでいる、池袋の中華フードコート『友誼食府』へご案内しましょう。

『ガチ中華』ブームの先駆けとなった『友誼食府』はもともと、そのビルにあった中華食材店『友諠商店』を訪れる中国人客向けに休憩所として作られたのですが、口コミや報道でいまやすっかり有名店になりました」(中村さん)

いざ中華フードコートの代表格「友誼食府」へ

池袋の中華フードコート「友誼食府」と食材店「友諠商店」は、飲食店や書店、カラオケ等が入るビルの4階にあります。

エレベーターが開くと、見るもの聞くもの香るもの、すべてが中華ワールドに……。

▲店内には日本でもおなじみの調味料から、どのように食べるのかわからない商品までズラリ!
▲「これ、食べるの?」と子どもたちも興味津々

そして、いよいよフードコート「友誼食府」に潜入です!

▲「友誼食府」フードコート店内
▲四川・東北・台湾・上海などの料理店が並び、おすすめメニューが所狭しと貼られています
▲中国東北地方の肉料理や腸詰のショーケースは、映画『千と千尋の神隠し』さながら?

キッズ&ファミリー向け【ガチ中華】はコレだ!

「お子さんが召し上がるのであれば『台湾夜市フライドチキン』がイチオシでしょうか。

『台湾巨大から揚げ』という異名がある通り、本当に大きいので、顔と並べてスマホで撮影して“映え”を狙う子たちもいるようです」(中村さん)

▲「台湾夜市フライドチキン」(正宗台湾炸大鶏排)800円

「マイルドな味わいの『上海料理』も食べやすいかな。

『ワンタン』や『チマキ』、ほかにも『焼き肉まん』など、日本のものと中国のものの違いを比べてみてはいかがでしょうか」(中村さん)

▲上海風小ワンタン(小餛飩)580円
▲チマキの具もナツメに豚肉、塩タマゴとバラエティ豊か
▲上海料理「牛肉焼き饅頭」(牛肉煎包)1個200円。割ると肉汁がじゅわわ~

「もっと『ガチ中華』らしい(?)ものを、ということであれば、四川のシビれる辛さ(麻辣)を堪能できる『マーボー豆腐』をどうぞ。

『友誼食府』には在日四川人やガチ中華ファンが通う四川料理店も出店していて、それが人気の理由のひとつにもなっています。また四川料理には甘味もあるので、お子さんや、辛いのは苦手という方も大丈夫ですよ」(中村さん)

▲これぞガチ中華!「マーボー豆腐」(単品)580円
▲四川風人気デザート「黒糖ゼリー」(四川冰粉)350円

「ドリンクは、お隣の中華食材店でお好きなものを購入して持ち込めます。

中医学や中国茶をベースにしたものや、大陸や台湾で好まれる甘めのフルーツジュースだけでなく、普通の清涼飲料やミネラルウォーターもありますから、冒険好きな子もそうでない子も安心ですね」(中村さん)

▲中医学の流れを酌むソフトドリンク「王老吉」「酸梅湯」は各139円(税別)
「アルコール類も中国酒から変わり種のビールまで、いろいろあります。大人も旅行気分で一杯、どうでしょう?」(中村さん)
▲「台湾ビール」260円(税別)「台湾ビールハニーラガー」271円(税別)

ちょっと変わった会計方法のナゾ

「ところで『友誼食府』は会計の仕方が、日本人には新鮮(?)かもしれません」(中村さん)

「フードコートの各店で注文したい料理を伝えると、店員さんからチャージ額0円のプリペイドカードを渡されるので、そのカードを持ってレジへ行き、注文するメニューの価格分をチャージしてもらいます。

チャージ済のカードをお店に返しに行くと、会計済という確認が取れて、オーダーが完了。料理が提供される、という流れです。

ほかの『ガチ中華』店やフードコートでは、スマホとQRコードだけで決済できる、キャッシュレス化の進んだ最近の中国らしいシステムのところもあるのですが、『友誼食府』については20世紀の中国に近いスタイルです。

不便な感じもするのですが、代金を取り損ねることがなく、かつ不正が生まれにくい方法ではあるので、それも含めて『日本とは違うんだなぁ』と思ってもらえたら有り難いですね(笑)」(中村さん)

▲帰りがけには中華食材店でお土産を物色「これ、どんなお菓子?」
「子どものうちに異文化に触れることは、いい経験になります。皆さんもぜひ親子で『ガチ中華』、体験してみてくださいね」(中村さん)

子どもの経験値が激減!コロナの影響を【ガチ中華】で補おう

「ガチ中華」案内人の中村さんに「親子で『ガチ中華』のコツ」を存分に教えていただきましたが、もうおひとり「子連れガチ中華」をおすすめくださった方がいます。

旅と異文化体験を通じて子どもを育む「旅育」の専門家で『海外旅行で子供は育つ!!~子供の人生を豊かにする旅育のヒミツ』の著者、株式会社たびえもん代表の木舟周作さんです。

「コロナ禍のいま、旅に出る機会が激減しています。

危惧されるのは、いわば“マイノリティ(少数派)になる経験”を、普段“マジョリティ(多数派)”の側にいる子どもたちが、得づらくなることです」(木舟さん)

▲「旅育」をすすめる木舟周作さんの著書

「海外の人と交流するという点では、在日外国人が増えている昨今、クラスメートや地域の人たちと、体験できることもあるでしょう。

でも学校や日本国内のコミュニティで出会う外国の方は、日本語が話せたり、日本の文化についてもある程度 理解していることがほとんどですから、『みんなが外国語でしゃべっていて、何を言っているんだかまるでわからない』という、自らが“マイノリティになる経験”にはなりません。

時にはそれが差別だったりすることもあるかもしれませんが、自分がマイノリティとして扱われる、自身がマジョリティではない体験を通じて、子どもなりに感じたり考えたりすることが必ずあるはずです。

“マイノリティになる経験”をしていると、例えば転校生が来た時にも、偏見を持たずに温かく迎え入れることができたり、他者への優しさや想像力が育まれます。

またその経験が転じて『世界はここだけではない』ことを実感していれば、問題にぶつかった時などにも柔軟に『違う見方』がしやすくなります。

『ガチ中華』のお店は中国人客ばかりで、飛び交う言語も中国語だけ、ということも多く、親御さんによっては不安を覚える方もいらっしゃると思います。でもお子さんにとっては大切な、とりわけコロナ禍においては貴重な経験をさせてあげることができる場なのではないでしょうか」(木舟さん)

*  *  *

ますます注目が集まる「ガチ中華」。おいしくって気軽でありながら超ディープ、子どもにとってかけがえのない異文化体験ができること請け合いです。いまこそ親子で「ガチ中華」、訪れてみませんか。

※価格等の情報は取材時(2022年夏)のものです。

▼「ガチ中華」の過去記事はこちら

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取材・文/ちかぞう

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