「アマニ油」が頭のいい子を育てるワケ。育脳ごはんのパイオニア・小山浩子さんが教える効果と取り入れ方

脳の60%は脂肪でできています。脂肪というとダイエットの敵!というマイナスなイメージがありませんか?でも、脂肪は、脳の成長には欠かせない栄養素。脳に良い油とは?その効果について、育脳ごはんのパイオニアである、管理栄養士の小山浩子さんに教えていただきました。

脳の6割を占める脂肪。脳でどんな役割をしているの?

脳の6割を占める脂肪は、どんな役割をしているのでしょうか。ズバリ、「神経回路」を柔軟に働かせる栄養となっているのです。

脳は、前頭葉・側頭葉・頭頂葉・後頭葉のエリアに分かれていて、それぞれのエリアが、記憶をコントロールする、触感や空間的情報などの処理など、決まった役割を果たすようになっています。それぞれのエリア同士をつなげているのが神経回路。神経回路がそれぞれに情報を運ぶことで「脳活動」が行われています。

学習によって刺激を受け、発達する際には、脳内では、木の幹から枝が伸びるようにして神経細胞が広がり、つながって神経回路をつくります。神経回路が多ければ多いほど、その動きはスムーズになり、脳内の処理能力はアップするのです。

脂肪は、「神経回路」を増やすためには欠かせない栄養素です。

アマニ油が「脳に良い油」である理由

脳にいい脂肪を作るためには、「良質な油」を摂取することが大事です。では、「良質な油」とは、どのような油なのでしょうか?

それは、「不飽和脂肪酸」に分類される「オメガ3系脂肪酸」と呼ばれるグループに属す油です。イワシやサバなどの青魚に含まれる「DHA(ドコサヘキサエン酸)」や「EPA(エイコサペンタエン酸)」は、みなさんもお聞きになったことがあるでしょう。DHAとEPAは、「オメガ3系脂肪酸」の油の代表的なものです。

「オメガ3系脂肪酸」は、魚に多く含まれるため、昔の日本人の食生活ではよく摂取されていましたが、魚離れの傾向が進む現在は、オメガ3系脂肪酸は不足しています。

逆に、ファストフードや菓子パンに含まれるオメガ6系の油は摂取過剰傾向にあります。オメガ6系の摂取が過剰になると、アレルギーリスクが高まると言われています。脳を活性化するだけでなく、健康を考えても、オメガ3系の油を積極的に取る必要があります。

2015年から、0歳からのオメガ3系脂肪酸の摂取が国の基準に

厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」は、健康寿命の延伸のためにエネルギーや栄養素の摂取量の基準を示したガイドラインです。5年ごとに改定されており、「オメガ3系脂肪酸」の摂取基準も示されています。

2010年版では、子どもの摂取目安量は示されず、18歳以上は、男女問わず一律1g/日の摂取が基準とされていましたが、2015年版からは、0歳からの摂取量の目安が示されるようになりました。これは、国が一定以上の効果を認めたからだと思われます。

1日あたりの摂取目安量:「日本人の食事摂取基準」2015より一部抜粋

年齢 男性 女性 備考
0~5(月) 0.9g 0.9g 乳児、男女同じ
6~11(月) 0.8g 0.8g 離乳食をスタートした乳児、男女同じ
1~2歳 0.7g 0.8g 離乳食を食べている子ども
3~5歳 1.3g 1.1g 幼児食を食べている子ども
6~7歳 1.4g 1.3g 就学前後の子ども
12~14歳 2.1g 1.8g 第二次性徴期に入った子ども
18~29歳 2.0g 1.6g
50~69歳 2.4g 2.0g

オメガ3系脂肪酸の中で「アマニ油」をすすめるワケ

食生活で魚を摂取する量が減少傾向にある今、わたしがおすすめするのは、「アマニ油」です。アンチエイジングや認知症予防にも効果があると言われているので、ご存じの方も多いのではないでしょうか。

アマニの花
アマニ油はアマニの種を抽出したもの

アマニ油にはDHAと同じ働きの「α-リノレン酸」がたっぷり!生のまま使いましょう

「アマニ油」は、アマ科の一年草「亜麻(アマ)」の種子「アマニ」が原料です。「アマニ」を圧搾、または潰して抽出した油が「アマニ油」です。アマニ油は熱に弱い性質があり炒め物など、熱を加えると生臭いにおいが出てしまいますので、生のまま使います。

アマニ油」には、「α-リノレン酸」が豊富に含まれています。α-リノレン酸は体内でつくられず、食物から摂る必要がある必須脂肪酸です。その働きは、DHAやEPAと同じ効果があります。

えごま油や、しそ油も同じα-リノレン酸をふくむ油ですが、価格的にも高めです。その点、「アマニ油」は、出回っている商品も多く、買いやすく、えごま油やしそ油に比べて、匂いのクセがないので、お子さんにも抵抗なく使えると思います。

アマニ油の選び方・保存の仕方

酸化しやすいので1ヶ月を目処に使い切って。保存は冷蔵庫がおすすめ

空気に触れると酸化しやすいという特徴もあります。酸化すると風味が落ち、特有のにおいが出てきますので、封を開けたら一ヶ月以内を目処に使い切ってください。酸化しにくい「遮光フィルムボトル」を使ったものも出ています。そして、開封後の劣化を防ぐためにも、保存は冷蔵庫がおすすめです。

良いアマニ油を選ぶ目安は「低温圧搾法」による製造

さまざまな商品が出回っていますが、高温による加熱工程がない「低温圧搾法(コールドプレス法)」で製造されたものを目安にしてください。このごろは、国産のものも出回っています。信頼できる原産地のものを選びたいですね。

幼児には、1日にティースプーン1/2のアマニ油を。継続が大事です

繰り返しになりますが、アマニ油に含まれるα-リノレン酸は体内でつくられず、食物から摂る必要がある必須脂肪酸です。脳を育てるためには、毎日、欠かさず取る事が大切です。

先に示した国が定めた子どもへの摂取基準と照らし合わせると、3~5歳の男児で、1.3g、女児で1.1gとなっています。小さいティースプーン1杯が2gですから、約半分を目安にしてください。

食べ方のおすすめは、納豆やヨーグルトにかけること。お味噌汁に入れるのもコクがでておいしくいただけます。どうぞお子さんの賢い脳を育てるための食習慣にしてください。

「頭よくなる油の取り入れ方」はこの記事でも

知ってる?子どもの頭がよくなる油。食事への取り入れ方も教えます【育脳ごはんのパイオニアに聞く】
毎日の食事作りで欠かせない、でも、案外気を配っていないのが「油」ではないでしょうか。育脳ごはんのパイオニアである管理栄養士の小山浩子さんによ...

教えてくれたのは

小山浩子|管理栄養士

大手食品メーカーを経て2003年にフリーに。料理教室の講師やメニュー開発、特に育脳レシピを数多く手がける。2014年『目からウロコのおいしい減塩「乳和食」』(主婦の友社)で、グルマン世界料理大賞を受賞。著書に『子どもの脳は「朝ごはん」で決まる!』『かしこい子どもに育つ! 育脳離乳食』(小学館)など多数。最新著書は『やる気と集中力を養う3~6歳ごはん』(池田書店)。公式ホームページ

取材・構成/Hugkum編集部 イメージ写真/繁延あづさ

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