今宵は紅白歌合戦!なぜ最後に出演する人を「トリ」って言うの?【知って得する日本語ウンチク塾】

国語辞典編集者歴37年。日本語のエキスパートが教える知ってるようで知らなかった言葉のウンチクをお伝えします。

最後に出演する人のことをなぜ「トリ」と言うの?

いよいよ2022年も大晦日を迎えました。今宵は「紅白歌合戦」を楽しまれるご家庭も多いことでしょう。

毎年、紅組、白組、それぞれ最後に歌う「トリ」が誰なのかが、年末恒例の紅白歌合戦にまつわる話題の一つですが、なぜ、「トリ」と呼ばれるのかご存じでしょうか?

「トリ」は寄席からうまれた語。その由来とは?

まさか「鳥」のことだとは思っていませんよね。

実はこの「トリ」という語は、寄席(よせ)から生まれた語なんです。

昔の寄席では、最後に出演する人(主に真打の落語家です)が、その興行の主任格となり席亭(寄席の主人)の取り分を引いた売り上げを全部取るシステムになっていました。この取るということから「トリ」という語が生まれたのです。売り上げを取るから「トリ」なのです。

寄席には他の芸人も出演しているわけですから、「トリ」は収入を全部自分の懐に入れてしまうわけにはいきません。ちゃんと、出演者に出演料を分配します。客一人につきいくらと出演者に割り当てるのですが、それを「割り」「席割り」などと呼んでいます。お客さんの入りが悪いと、「割り」は少なくなってしまうわけです。

この名残で、今でも寄席の出演表では、最後に出演する落語家を「主任」と書いて「トリ」と読ませる風習が残っています。

「大トリ」は紅白歌合戦から生まれた語

そして「トリ」という語は次第に寄席に限らず興行界に広まります。最後に上演したり上映したりする呼びものの番組や映画、歌番組などで最後に出演する歌手なども「トリ」と呼ばれるようになったのです。

NHKの紅白歌合戦では特に、最後に歌う人を「大トリ」と呼んでいます。この「大トリ」という語はもともとあったわけではなく、どうやら紅白歌合戦から生まれた語のようです。

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神永(かみなが・さとる)
辞書編集者、エッセイスト。元小学館辞書編集部編集長。長年、辞典編集に携わり、辞書に関する著作、「日本語」「言葉の使い方」などの講演も多い。著書『悩ましい国語辞典』(時事通信社/角川ソフィア文庫)『さらに悩ましい国語辞典』(時事通信社)、『微妙におかしな日本語』『辞書編集、三十七年』(いずれも草思社)、『一生ものの語彙力』(ナツメ社)。監修に『こどもたちと楽しむ 知れば知るほどお相撲ことば』(ベースボール・マガジン社)。NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』にも、日本語のエキスパートとして登場。新刊の『辞典編集者が選ぶ 美しい日本語101』(時事通信社)が好評発売中。

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