『坊っちゃん』のあらすじと登場人物、最低限これだけはチェック【知らないと恥ずかしい日本文学】

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「坊っちゃん」は、日本近代文学の文豪、夏目漱石の初期の代表作。無鉄砲な性格の数学教師、坊っちゃんが、田舎の学校でくせものの教師たちに立ち向かう物語です。漱石の教師時代の経験をもとに書かれた作品とも言われています。今回は、「坊っちゃん」のあらすじや登場人物などを紹介しましょう。
<画像:道後坊っちゃん広場(愛媛県松山市)の坊っちゃんのキャラクター銅像>

「坊っちゃん」ってどんなお話?

『坊っちゃん』は、教師時代の体験をもとに描いた、夏目漱石初期の代表作です。漱石の作品は国語の教科書にも使われ、誰でも一度は読んだことのある作家の一人ではないでしょうか?

作品自体に馴染みはあるものの、漱石自身のことはよく知らない方も多いはず。一体どんな人物だったのか見ていきましょう。

夏目漱石ってどんな人物?

夏目漱石(1867〜1916)は、明治から大正時代にかけて活躍した小説家・英文学者です。千円札の肖像にもなった日本を代表する文豪です。漱石は1867年に現在の東京都新宿区に生まれました。兄弟が7人と多かったこともあり、生まれてすぐに養子に出されますが、義父母が離婚してしまい実家に戻ります。

その後帝国大学文科大学に入学。俳人の正岡子規と親交を深めました。大学卒業後は教師となり、その後文部省に命じられてイギリスに留学します。留学後は、朝日新聞の専属作家になり数多くの作品を執筆しました。

夏目漱石の作品・作風

漱石は38歳の時に発表した『吾輩は猫である』が大評判となり、その後数々の作品を執筆しました。「吾輩は猫である、名前はまだ無い」の一言から始まる物語は有名ですね。中学教師のくしゃみ先生に飼われる猫の目線から、人間たちの滑稽さや面白みが語られています。

その翌年に『坊っちゃん』『草枕』などの話題作を次々に発表。

前期三部作『三四郎』『それから』『門』、そして後期三部作『彼岸過迄』『行人』『こころ』には、それぞれテーマが設けられていたと言います。前期三部作では人間の自我や愛、後期三部作では人間の不安や孤独に焦点が当てられています。

1916年(大正5年)に執筆された『明暗』が漱石最後の作品と言われており、胃潰瘍による漱石の死により未完に終わっています。

物語のあらすじ

『坊っちゃん』は、東京生まれの主人公(坊っちゃん)が、四国の学校に赴任し、個性豊かな教師や生徒と出会って、ずるいことをした教頭を懲らしめて学校を辞めるまでの1か月間を描いた物語です。教師たちとのやりとりや事件などが、坊っちゃん目線の軽妙な語り口で描かれています。

あらすじ

子どもの頃から負けん気が強く、いたずらばかりしていた主人公。小学校では同級生の挑発に乗って学校の2階から飛び降りて腰を抜かすなど、無鉄砲なことをしていました。家族からは呆れられ、可愛がられなかった彼ですが、下女の清だけはいつも彼を「坊っちゃん」と呼んで、優しく見守ってくれていました。

やがて学校を卒業した主人公は、教師になることを目指します。そして生まれ育った東京を離れ、ひとり四国の中学校へ赴任することになったのです。そこで出会ったのは、個性豊かな教師たちと、言うことを聞かない生徒たち。主人公は教師たちにあだ名をつけて、田舎での生活が始まります。

しかし、自分よりも背丈の大きな生徒たちに、天ぷらそばを4杯も食べているところを見られ、「天ぷら先生」とあだ名をつけられたり、宿直室の布団にイナゴを入れられたりと、いたずらをされる始末…。

そんなある日、赤シャツと呼ぶ教頭がマドンナという美女と付き合っていること、また赤シャツがうらなりからマドンナを奪ったこと、赤シャツはうらなりのことを邪魔に思い、転勤させる気なのだと言うことを知りました。正義感の強い主人公は、赤シャツをこらしめようと同僚の山嵐と共に計画を立て始めるのです。

対決当日。夜遊びをする赤シャツたちを主人公と山嵐は待ち伏せをし、主人公は生卵を叩きつけ、山嵐は赤シャツを散々殴ってこらしめました。そのまま二人は学校を辞め、四国を離れます。

離れていく四国を船の上で眺めながら、主人公はどこか晴々とした気持ちになり、煩わしさから解放されたような気持ちに浸りました。そして、自分の帰りを待ってくれていた清のもとに戻り、二人で穏やかに暮らすようになったのでした。

あらすじを簡単にまとめると…

正義感が強く曲がったことが大嫌いな主人公が、数学教師になり四国松山の中学校へ赴任します。言うことを聞かない生徒たちや隠れて卑怯なことをしている教師たちがいる田舎での暮らしは、江戸っ子気質の彼には我慢できないことばかり。

あるとき、教頭の赤シャツが部下の恋人を奪っていたことを知り、主人公は仲間の山嵐と一緒に赤シャツをこらしめようと頑張ります。結局、二人とも性格に合わなかった職場と別れを告げ、主人公の坊っちゃんは清と東京で穏やかに暮らしました。

主な登場人物

「道後坊っちゃん広場」(愛媛県松山市)の登場人物たちの銅像。一度読んだ人なら、誰が誰かピンとくるはず…

『坊っちゃん』に登場するのは、人間味のある個性的な人ばかり。赴任した中学の校長や教師たちにユニークなあだ名をつけているところは思わず共感してしまうかも。

主人公(坊っちゃん)

子どもの頃から曲がったことが大嫌いな無鉄砲な性格。東京生まれの江戸っ子。よく揉め事を起こすため、家族からは冷たく扱われる。四国の中学校に数学教師として赴任することになる。

主人公の家の下女。主人公を「坊っちゃん」と呼んで可愛がり、色々と世話を焼いてくれる。

山嵐(堀田)

主人公と同じ数学教師。最初は坊っちゃんと仲が悪かったが、やがて意気投合する。

赤シャツ

学校の教頭。いつも赤いシャツを着ているので、主人公から「赤シャツ」と呼ばれている。物腰は柔らかいが、実は卑怯な性格。

うらなり

英語教師。お人好しで気が弱い。婚約者であるマドンナを赤シャツに奪われてしまう。

マドンナ

うらなりの婚約者だったが、現在は赤シャツと交際している。

教師時代の経験がもとになって生まれた作品

実は、夏目漱石自身も松山で教師をしていました。明治28年から1年間、愛媛県の中学校に英語教師として赴任していたそう。その後も、熊本県や東京の高校、大学などで教員生活を送りました。

10年以上の教師時代の体験が、小説『坊っちゃん』のもとになっているのかもしれませんね。1895年(明治39年)、漱石が39歳の時に書き上げました。

名作「坊っちゃん」を読むなら

『坊っちゃん』は、様々な出版社から出版されています。カラーイラスト付きのものや、時代背景などの解説付きのものもありますので、お好みの本を選んでみてくださいね。

世界名作シリーズ 坊っちゃん(小学館)

 

小学館ジュニア文庫。原作を大事にしながら、現代かなづかいに改め、改行や読点を増やしているので、子どもでも大人でも読みやすくなっています。

坊っちゃん(新潮文庫)

 

新潮文庫のロングセラー。用語や時代背景についての注解、解説付き。

坊っちゃん(学研プラス)

 

10歳までに読みたい日本名作シリーズ。登場する人物が紹介されている物語ナビ付き。オールカラーイラストです。

いつ読んでも共感できる名作

負けず嫌いの坊っちゃんや、くせものの赤シャツ、お人好しのうらなり…。『坊っちゃん』は、100年近く前に書かれた小説ですが、今読んでいても共感してしまうような人間味あふれる人物たちが描かれています。

悪巧みをする赤シャツをこらしめた坊っちゃんと山風は、結局学校を辞めることになりますが、理不尽なことに立ち向かう坊っちゃんの真っ直ぐさと、それを見守る清の愛情が作品全体を温かく包み込んでいるようです。

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構成・文/鈴木菜々絵(京都メディアライン)

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