アンデルセン童話とは
アンデルセン童話は、いつ誰が書いた物語なのでしょうか。物語の特徴もあわせて見ていきましょう。
デンマークの作家が執筆した物語
アンデルセン童話とは、「ハンス・クリスチャン・アンデルセン」が執筆した童話を指します。アンデルセンは1800年代半ばに活躍したデンマーク出身の作家で、「親指姫」や「人魚姫」など多くの童話を執筆しました。
アンデルセン童話には大人が読んでも楽しめる物語が多く、映画やドラマの原作となった作品もあります。例えば、2013年にアメリカで公開されたディズニー映画「アナと雪の女王」は、アンデルセン童話の「雪の女王」をもとにして創作されました。
ハンス・クリスチャン・アンデルセンの軌跡
物語の世界観を理解するには、作者の人物像を知るのも有効です。アンデルセン童話の作者ハンス・クリスチャン・アンデルセンについて、誕生から有名作家となるまでの軌跡を紹介します。
1805年デンマークに生まれる
アンデルセンは、1805年にデンマークの都市オーデンセで生まれます。父親は靴の修理、母親は洗濯の手伝いで生計を立てていました。暮らしは大変貧しく、同居する祖父母が精神的な問題を抱えていたこともあって、アンデルセンは暗い少年時代を過ごします。
しかし、アンデルセンの父親は読書好きで、教養がありました。息子にも物語を読み聞かせたり、人形劇の舞台を作ったりして育てました。後にアンデルセンは自身の伝記に、物語や芝居が好きになり、創作活動に興味を持ったのは父親のおかげと書いています。
青年期から旅・小説・童話の日々
アンデルセンが作家になったのは、大学生のときです。14歳に成長したアンデルセンは、オペラ俳優を目指して首都コペンハーゲンに上京しましたが、現実は厳しく挫折します。
その後は知人の支援を受けてラテン語学校やコペンハーゲン大学に通い、勉学に励みます。そして大学在学中に発表した小説が評判となり、本格的に作家活動を始めました。
また、アンデルセンは無類の旅行好きでも知られています。作家デビューから間もない頃に、失恋をきっかけに旅に出たことから、すっかり旅行にハマったと伝えられています。
30歳のときには、旅行体験をもとに書いた小説「即興詩人」が大ヒット。人気作家となったアンデルセンは、同時期に童話を書き始めています。32歳で出した「人魚姫」を含む童話集は、高い評価を得ました。
40歳過ぎには国民的童話作家に
人気作家として経済的にゆとりができたアンデルセンは、旅行と童話執筆の生活を続けます。40歳を過ぎる頃には、デンマークの国民的童話作家として不動の地位を築き上げました。
旅行先では、童話作家のグリム兄弟や「レ・ミゼラブル」の著者ヴィクトル・ユゴー、「三銃士」の著者アレクサンドル・デュマなどと出会い、交流を深めています。
1875年、アンデルセンは病によって70年の生涯に幕を下ろします。国を挙げての葬儀が行われ、王室関係者を始め多くの人が参列しました。
アンデルセン童話の代表作
アンデルセン童話を読んだことがあっても、正確なストーリーを覚えていない人も多いでしょう。代表作品を3つ選び、あらすじを紹介します。
人魚姫
「人魚姫」は前述の通り、アンデルセンが童話作家として評価されるきっかけとなった作品です。
ある夜、人魚姫は嵐に遭って溺れている人間の王子を助けます。王子を好きになり、もう一度会いたいと思った姫は魔女の家を訪れ、声と引き換えに尻尾を人間の足に変える薬をもらいます。
魔女は「王子が別の女性と結婚したときは、姫は海の泡となり消える」と警告しますが、姫の決心は変わりませんでした。無事に王子と再会した姫は、宮殿に迎えられて幸せに暮らします。しかし王子はなぜか、他国の王女と婚約してしまいます。
王子は、その王女が嵐の日に自分を救った女性だと勘違いしたのです。
泡になる運命となった姫に、姉たちが1本のナイフを渡します。魔女が作ったそのナイフで王子を刺し、返り血を浴びれば、姫は人魚に戻れるのでした。
しかし姫は、どうしても王子を刺せず、ナイフを波間に投げ捨てて自分も海に入ります。姫は泡となって天に昇り、風の精霊となって人々に幸せを運びました。
みにくいアヒルの子
「みにくいアヒルの子」は、子どもの頃に苦労したアンデルセンの自伝的な物語としても知られています。
アヒルの巣で1羽だけ、他の雛と違う姿で生まれた主人公「アヒルの子」は、母やきょうだいからいじめられ、ある日巣を飛び出してしまいます。
孤独な生活を送るアヒルの子は、ある日湖で白鳥の群れを見つけました。大きくて真っ白な姿に憧れながら冬を越したアヒルの子は、春になって自分が飛べることに気付きます。
勇気を出して白鳥の群れに近付いてみると、意外なことに皆が歓迎してくれました。驚いて水面を見ると、そこには立派な白鳥が映っています。自分はアヒルではなく、白鳥だったと知った主人公は喜び、仲間とともに大空へ飛び立っていきました。
マッチ売りの少女
寒い冬の夜には、「マッチ売りの少女」の話を思い出す人も多いのではないでしょうか。アンデルセンが40代の頃に書いたこの作品は、大変悲しい結末で知られています。またこの作品は、アンデルセンの母の幼少期をモデルにしたともいわれています。
ある大みそかの夜、1人の少女が路上でマッチを売っていました。しかし、マッチは一向に売れません。マッチを売り切らなければ父親に叱られるため、少女は家にも帰れず途方にくれていました。
ついに寒さに耐えられなくなった少女は、少しでも暖まろうと商品のマッチに火をつけます。すると灯りの中に、おいしそうな料理や暖かいストーブが現れました。うれしくなった少女が再びマッチを燃やすと、今度は少女をかわいがってくれた亡き祖母の幻が現れます。
火が消えると祖母も消えてしまうと思った少女は、急いで全てのマッチに火をつけます。祖母は明るく光る火の中から少女を抱き寄せ、天国へと連れていきました。
なおアメリカでは、少女が裕福な家庭に引き取られて幸せになるといった、別のストーリーも出版されています。
長く愛読される物語を楽しもう
アンデルセン童話は、作者の誕生から200年以上経った現在も、世界中で多くの読者を惹きつけるロングセラー作品です。作品には暗い子ども時代を経験した作者のさまざまな思いが込められており、必ずしもハッピーエンドではないストーリーも多く存在します。
長く愛読されてきた物語をあらためて楽しむと同時に、童話の結末について子どもと話し合ってみると、よい勉強になるでしょう。
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文・構成/HugKum編集部
参考:ジャパンナレッジ