『わらしべちょうじゃ』はどんな話? 主人公は運がよかっただけ? この物語が伝えたいことを考えてみた

『わらしべちょうじゃ』の元となる話は『宇治拾遺物語』や『今昔物語』にあります。あらすじは、男が持っていた一本のわらが、物々交換を経て大きな屋敷になるというもの。この物語の教訓とは何なのでしょうか。あらすじ、登場人物などを詳しく紹介しながら考察します。

『わらしべちょうじゃ』ってどんなお話?

『わらしべちょうじゃ』は、子ども向けの日本昔ばなし。元は、『宇治拾遺物語』や『今昔物語』の中の話でした。あらすじは、男が持っていた一本のわらが、物々交換を経て大きな屋敷になるというもの。大筋は同じで、詳細が若干異なる話も、数多く存在しています。

絵本や紙芝居、劇などを通して、子どもの頃から身近な物語。『わらしべちょうじゃ』を経済学の視点から見た、梶井厚志著『わらしべ長者の経済学』という評論は、高校の現代文の教科書にも載っています。

『宇治拾遺物語』『今昔物語』って?

『宇治拾遺物語』(うじしゅういものがたり)は、鎌倉時代初期の説話集。説話とは、昔話や神話、伝説、民話などのことです。作者は不明。『わらしべちょうじゃ』だけでなく、『こぶとりじいさん』『雀のくれたひょうたん』など、有名な昔話を含む数多くの物語が収められています。

『今昔物語』(こんじゃくものがたり)は、平安時代後期の説話集。こちらも作者は不明。『宇治拾遺物語』と『今昔物語』には同じ話が80話ほど含まれています。

物語のあらすじ

『わらしべちょうじゃ』という物語は知っているけれど、いざ内容を説明しようとすると、細部まで思い出すのは難しいもの。子どもの頃に数回聞いただけでは、次々と交換される物まで覚えきれません。まずは、あらすじを紹介します。

あらすじ

主人公は、貧しいひとりの男。あまりにも貧しいので、ある日観音様に「どうにかしてください」とお願いしました。すると観音様が告げたのは、「掴んだものをはなさないように」とのこと。

歩き出した男は、転んだ拍子に一本のわらしべ(わらの芯)を掴みました。男は、観音様の言葉を思い出し、そのわらしべを掴んだまま歩き出します。しかし、歩いている目の前を、虻が飛んでうるさいので、その虻を捕まえてわらしべに括り、また歩き出しました。

しばらく歩いていると、子どもがやってきて、「男が持っている虻がついたわらしべが欲しい」と。男が、虻がついたわらしべを子どもにあげると、お供の者がお礼に、みかんを3つくれました。

 

みかんを持って歩いていると、呉服屋が「喉が渇いて死にそうなので、そのみかんが欲しい」と言いました。男は、みかんを3つとも呉服屋にあげることに。呉服屋はお礼に、反物(着物などに使うの織物)を3反くれました。

さらに歩くと、道端で死にそうな馬を見つけます。男は、飼い主に反物3反を渡して、「これで馬を引き取りたい」と言います。引き取った馬に水を飲ませて介抱すると、馬はたちまち元気になりました。

馬を引いて歩いていると、旅に出かける人が「急いでいるのでその馬を譲って欲しい」と。「代わりに屋敷と田んぼを貸しましょう。しかし、もし3年経っても私が旅から戻らなかったら、屋敷と田んぼを、そのままあなたに与えます」と言いました。男は馬を渡し、その屋敷で暮らし始めることに。

 

3年経っても5年経っても、家主は帰ってきませんでした。男は、わらしべ一本から、広い屋敷と田んぼを手に入れたので、みんなからわらしべ長者と呼ばれました。

あらすじを簡単にまとめると…

貧しい男が、観音様の「掴んだものを離さないように」というお告げを守り、転んだ拍子に掴んだわらしべを持って歩き出します。道ゆく人と出会いながら物々交換をしていくと、わらしべはみかんに、みかんは反物に、反物は馬に、そしてついに、馬は広い屋敷と田んぼになりました。貧しい男は、わらしべ一本から物持ちの百姓になったので、わらしべ長者と呼ばれました。

主な登場人物

物語は長くありませんが、次々と人物や物が登場します。わらしべが、あっという間に別のものに変わっていく様子は、読み手を一気に物語に引き込みます。実は、主役は人間ではなく、物の方なのかもしれませんね。

貧しい男。観音様のお告げを守る、誠実で信仰深い性格です。

観音様

男に貧しさについて相談され、「掴んだものを離さないように」と告げます。

子ども

男が持っている、虻を括ったわらしべが欲しいと言います。わらしべとみかんを交換。

呉服屋

喉が渇いて死にそうなので、男が持っているみかんが欲しいと言います。みかんと反物を交換。

馬の飼い主

瀕死の馬の飼い主。男から反物と交換してくれと頼まれ、反物と馬を交換します。

旅に出る人

急ぎの用のために、屋敷と田んぼを貸して、男から馬を借ります。旅に出る時、3年しても自分が戻らなかったら、屋敷と田んぼは男に与えると言い残し、そのまま戻りませんでした。

名作『わらしべちょうじゃ』を読むなら

『わらしべちょうじゃ』は、有名な昔話であることもあり、多くの出版社から出版されています。イラストはもちろんですが、内容も細部が異なる場合があるので、こだわりがある場合は、試し読みをしてから購入するといいかもしれません。

『わらしべちょうじゃ (日本名作おはなし絵本)』(小学館)

わらしべが、ふきの葉、みそ、お皿、風呂敷、馬に変わり、最終的に男は、お金持ちの婿になります。躍動感あるイラストも魅力的。

『わらしべちょうじゃ (むかしむかし絵本17)』(ポプラ社)

わらしべが、みかん、反物、馬に変わり、最後は屋敷と田んぼを手に入れます。交換される物が、画面いっぱいに大きく綺麗に描かれています。

『よみきかせ日本昔話 わらしべちょうじゃ (講談社の創作絵本)』(講談社)

3・4歳向けの読み聞かせに適した絵本。可愛らしく、ひょうひょうとしたイラストが特徴です。短いおまけの物語『しおふきうす』も収録。

『わらしべちょうじゃ』が伝えたいことは?

『わらしべちょうじゃ』は、一般的に「観音様のお告げを守れば、いいことがある」という、「信仰心の大切さ」を伝えています。しかし、観音様の「掴んだものを離さないように」というお告げを、言葉通りに捉えるのであれば、子どもにわらしべを渡さないのが、正解だったのではないでしょうか。そこで、信仰心と同じくらい大切なのが、男の「親切心」です。

男はなぜ、子どもにわらしべを渡したのか。きっと男は、自分が貧しさから抜け出すために観音様からいただいたお告げよりも、目の前の子どもの気持ちに応えたいと思ったのではないでしょうか。そして、そのあとも、自分の利益よりも、喉が渇いて困っている人を助けたい、死にそうな馬を助けたい、急いでいる人の力になりたい、そう思って行動したはずです。

男は「交換で得をしよう」とは考えていませんでした。純粋な親切心からとった行動が、結果的に報われたのです。『わらしべちょうじゃ』の物語は、信仰心だけでなく、「見返りを求めない親切の大切さ」も、わたしたちに教えてくれています。

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構成・文/伊藤舞(京都メディアライン)

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