学びのホットワード「探究」はなぜ子どもたちに必要?探究心に火をつけるには?パイオニア・探究学舎の講師陣と探る

子どもたちが自らの手で幸せな未来を切り拓いていくために必要な力であると、今、小中高、全ての学習指導要領において重要視され、教育分野において最もホットなキーワードとなっているのが「探究」です。

わが子を探究する子に育てるために、学校だけでなく親のサポートはどのようにしたら良いのでしょうか。

そこで探究学習のパイオニアである探究学舎の講師の方々にお話をお聞きします!

探究学舎とは…?

東京・三鷹にある「探究学舎」は、学校教育や受験に沿った勉強を教えない探究学習をする塾です。現在は教室に子どもたちが集まって行われる授業の他、全世界に配信するオンライン授業では、さまざまな国の子どもたちが同じテーマを探究し、関わり合いながら、日々驚きと感動の授業を受けています。
最近よく耳にする「探究」を、実際に親の立場からどのようにサポートするにはどうしたら良いのか、そんな悩みを個性豊かな講師の方々からアドバイスいただきます。
第一回目は、たかおさんこと、木元隆雄さんです。

「好き」を肯定してもらえたことが探究のトリガーに

―木元さんは、探究学舎で主に歴史の授業のコンテンツ作成を担当されているそうですが、子どもの頃から歴史好きだったのですか

小学生の頃に、日本人が好きな偉人100人を紹介していたテレビ番組を見たのをきっかけに、歴史に興味を持つようになりました。とはいえ、「なんとなく好き」という程度。学校の図書室においてある歴史漫画を読んだり、大河ドラマを見たりしていたくらいでした。小学生時代の僕と比べたら、探究学舎に来ている子たちの方がはるかに探究しているし、詳しいですね。ただ、「好き」という気持ちが僕の中で継続したのが歴史というジャンルだったとは言えます。

―その「好き」という気持ちは、その後、木元さんの中でどんな風に深まっていったのでしょうか

探究学舎に来ている子どもたちからもよく聞くのが、自分がすごく好きなこと、例えば歴史について、学校には共有できる人や共感してもらえる人がいなかったけれど、探究に来たら自分と同じように歴史好きな子に出会え、とてもうれしかったという声。

僕も高2の時に、同様の体験をしています。

僕は中高一貫の男子校に通っていたのですが、成績がふるわず、他に飛び抜けてできることもなかったので、自己肯定感が下がり、学校生活をあまり楽しめていなかったのですが、そんな中、知人の紹介で現在の探究学舎の塾長である宝槻に出会ったのです。

当時、歴史と共に政治にも興味関心を抱いていた僕が発した、「俺が日本を変えるんですよ!」という言葉を、宝槻が、「面白いね」と真正面から受け止めてくれました。

そんな風に、ありのままの自分を受け入れてくれる人に出会ったのは初めてで、それをきっかけに、自分は自分でいいんだと思えるようになりました。この体験が、僕の探究のトリガーになり、探究学舎で働く今の自分にもつながっていると思います。

探究とは、心の底から湧き上がる「知りたい」気持ちを育むこと

―子どもたちの将来に、探究力が必要であると言われていますが、いまいち捉えどころがなく、よく分かりません。探究学舎が考える、その意味や意義とは

世の中では、既存の教科内容的な物事について、自分で主体的に学習することが探究の念頭に置かれているように思いますが、探究学舎が考える探究はそれとは少し違っていて、「知りたい」「やってみたい」「見てみたい」という、心の底から湧き上がる気持ちを育んでいくことこそが探究であると考えています。

でも僕らは4歳や5歳の子でも、「よくわからないけれど、こういう世界があるんだ」と感じること、知ることが大事だと思っていて、そういう経験を積み重ねることで、「きっと他にももっと面白い世界があるんじゃないか」「色々な所に通じる扉があるんじゃないか」という視点を持つことができ、様々なことを面白がれる人になれると思っています。

―幼い頃から探究の土壌を育むことで、探究力が身に付き、将来役に立つと

探究の経験は、物事に対する視点や視座を増やし、思考の解像度も上げます。それは結果的に、受験にも、社会人生活にも、日常生活にも役に立つ。僕自身、そういう実感があります。まあ、役に立たせるために探究しているわけではないので、あまりそこは強調しないのですが。

一方で、それ以前に、道を歩くだけで探究できるって、とても豊かな人生なんじゃないかと僕は思っています。

探究の火をつけるには、子どもの特性にあったアプローチが必要

 ―「わが子にも探究力を身に付けさせてあげたいのだけれど、なかなか火がつかなくて…」と悩む親は少なくありません。どうしたら、子どもを上手く探究の道に誘うことができるでしょうか

探究学舎に来ている親御さんからも、「うちの子は探究しないんです」とよく言われるのですが、決してそんなことはない。子どもの様子をよく見ていると、意外と食いついていたり、自分なりに考えていることが多いです。

 子どもって、大人が思う通りに探究するとは限らないんですよね。

例えば、歴史に興味を持ってもらいたいと思った時にやりがちなのが、歴史系の本やマンガを買って与えてみるとか、ドラマなどの映像を見せてみるという2択のアプローチ。ですが、それで食いついてくるのは、読んだり見たりすることを楽しめる特性の子のみなのです。

他方、そのアプローチでは反応を示さなかったものの、お城に行ってみたり、チャンバラ合戦をしてみたりと、体を動かす体験をきっかけに歴史への興味が開花する子もいます。

ですから僕も、授業を作る際には、色々なタイプの特性や知能を持つ子どもがいることを意識して、「見てみよう」「実験してみよう」「描いてみよう」「クイズやゲームをしてみよう」といった具合に、様々な授業展開を盛り込むようにしています。

また、授業が終わった後も自分なりの探究につなげていけること、次のサイクルにつながる余韻を残すことも大事にしています。

同様に親御さんも、我が子はどういうタイプの子なのかという観察、仮説、見立てのもとで、その子に合いそうな形でアプローチしてみるというのは結構大事なのではないかと。

一方で、あまり子どもが食いつかなかったら、「この子はこういうジャンルには興味がなかったのね」と思うこと。そうすれば、変に焦らなくなると思いますし、その子の中にある、別の光るものを見つけてあげる一つのきっかけになるのではないかと思います。

―これからの時代を生きる子どもたちを育てている親に向け、メッセージをお願いします

親御さんからすると、戦国時代の探究が、この子のこの先の人生にどうつながるのだろうかと思ってしまうかもしれません。

探究スペシャル・戦国英雄編で手作り兜をかぶる子どもと木元先生
探究スペシャル・戦国英雄編で手作り兜をかぶる子どもと木元さん

確かに、戦国時代の史実だけを学んでいたら、将来役に立つことはあまりないと思うのですが、そこから導き出される抽象的な学びもあると思うのです。なぜ人は争うのかとか、どうすれば人はまとまるのかとか、どうやって仲裁すればいいのかとか。そういうことって、将来的に色々なところで生きてくると思うのです。

先日も、戦国合戦編の授業で行っている陣取りゲームで、1つのチームが他の全チームから袋叩きに合って滅亡してしまうという、戦国さながらのドラマがありました。

負けて大号泣している子がいたり、そんな様子を見て、ちょっとやりすぎちゃったかなと感じている子がいたり。この体験が、子どもたちの将来にどうつながるかは分からないですが、印象には残ると思いますし、きっと何かの学びにはなっているだろうなと思うのです。

一つのことを深めると、横にも広がり、つながっていく。探究を、そんな風に捉えてもらえればいいなと思います。

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お話を伺ったのは

木元隆雄さん|探究学舎講師
東京都中野区生まれ。早稲田大学社会科学部卒業。高校時代に宝槻泰伸と出会い、学ぶことの面白さに目覚め、2012 年、探究学舎創設とともに、第1号生徒として入塾。2018年、探究学舎に新卒で入社。授業コンテンツ作成や教室運営を行う。また、エン人材教育財団と提携し「大学生・社会人むけ興味開発」も行っており、「幅広い世代の興味開発」の可能性を模索している。

取材・文/鈴木友紀

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