運転中の文句や舌打ち…これってパパの更年期症状?専門家に聞く、女性の更年期との違いは?

更年期症状という言葉を聞くと女性がなるもの、と思っていませんか? 今回は、更年期医療の専門家にパパも更年期になるのか、男性の更年期症状とは? また、女性の更年期症状との違いなどについても詳しくお聞きしましたので、ご紹介します。

男性にも更年期症状はあるの?

HugKum編集部のスタッフAさんは、夫の運転が危なくて嫌だと語ります。

「路駐の車がいたり、前の車が曲がろうとしたりするだけで、文句を言ったり、舌打ちをしたり。とにかくイライラしながら運転するので、助手席に座っていると私がまるで怒られている気分……。男性にも更年期症状ってあるんですかね?」

と話していました。

そういえば、筆者も40歳を超えたあたりから、気力が少し落ちた気がしています。そこで、更年期医療に詳しい有馬牧子先生にお話を伺いました。

すぐイライラするのも更年期症状のひとつ
すぐイライラするのも更年期症状のひとつ

女性だけではなく、男性にも更年期のような症状が現れる場合があります。

男女の更年期症状の違いは?

有馬先生:男女の更年期の違いとして、女性は約10年間で女性ホルモンが急激に減少するのに比べて、男性はホルモンの減り具合が緩やかなことと、女性は誰もが閉経を迎えることによって生殖機能が停止する点です。男性の場合は、女性の閉経のように誰もが迎えるわけではないので、一般的には男性の方が、症状を認識しにくいです(全く症状が現れない人もいる)。これも認知度が低い一因です。また、男性の方が精神症状に現れやすい傾向があと言われています。それゆえに、周囲に相談せず、我慢してしまう男性が多いです。

男性は更年期症状を認識しにくい

公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会が日本放送協会(NHK)と共同で行った大規模調査では、自分の症状が更年期によるものだと理解し、適切に対処できたかという問いに対し、女性が全体の30%弱、男性はわずか約10%という結果が出ています(40-59歳以上の男女が対象、女性約4,000人、男性約1,000人が回答)。男性に至っては、更年期症状ということすら知らなかった人が約40%いました。男性の更年期への理解・認識は特に課題ですね。

こんな症状が出たら更年期のサイン

更年期に現れる症状を「更年期症状」と呼び、その症状が重く、日常生活に支障をきたすことを「更年期障害」と呼びます。

代表的な身体症状の例として、のぼせやほてり、多汗、関節痛、頭痛、肩こりなどが挙げられます。一方、精神症状は、入眠困難や不安感、うつ、イライラ、意欲の低下などです。更年期症状には200種類以上の多様な症状があると言われています。また、元々肩こりや頭痛持ちの人が、更年期症状としての肩こりや頭痛があっても、更年期症状によるものだと気がつかないケースもあるんですよ。

では、いったい何歳くらいから更年期になるのでしょうか。

有馬先生:女性は閉経(平均閉経年齢は50.5歳)の前後である45-55歳の約10年間を更年期と呼び、女性ホルモンであるエストロゲンの急激な減少により更年期症状が起こります。一方、男性の場合は、主に40歳以降に男性ホルモンであるテストステロンが減少するのが更年期症状の原因です。

【目安】

女性…45-55歳の約10年間

男性…主に40歳以降。

更年期症状はスコア表でチェックできる

有馬先生:女性は40歳代半ば、男性は40歳過ぎから更年期の症状が出る傾向があります。特に、以下の設問にある症状に見覚えがあったり、これまでなかった症状が現れたら、更年期かもしれないと考えても良いでしょう。

女性の場合は簡略更年期指数(SMI)、男性の場合は男性更年期障害チェックシート(AMS)により更年期症状の程度を評価できますので、気になる方は確かめてみてください。

女性用(SMIスコア)

男性用(AMSスコア)

ちなみに、筆者はAMSスコアが38点で受診勧奨レベルでした(汗)。

20-30代の女性で、更年期のような症状が出ることも

有馬先生:20-30代の女性で、ストレスや食生活の乱れ、睡眠不足などから卵巣機能が一時的に低下し、更年期と似た症状が現れることがあります。

これは閉経により生じているのではないため、更年期症状ではありません。産婦人科などを受診し、適切な治療を受ければ治ります。男性はテストステロンの低下により、生活習慣などが原因で30代前後でも同様に、このような症状が起きることもあります。

更年期症状が起きる原因と予防策、治療方法は?

更年期の症状には個人差があります。では、更年症状の原因にはどんなものがあるのでしょうか。予防、治療法についてもお聞きしましたので、紹介します。

3つの要素が原因

有馬先生:更年期症状は、ホルモンの欠乏、日常環境の問題、気質・心理の3つの要素が原因で生じます。

実際にどのような更年期症状が自分に出るかは予測がつきにくいです。ただ、元々落ち込みやすい性格の人が、更年期症状が現れてさらに落ち込みやすくなった例などがあります。

予防策

有馬先生:十分な休養、バランスの良い食生活、適度な運動、人とのコミュニケーションを。これらは日常生活の積み重ねなので、若いときからの過ごし方が大切です(更年期だけ元気に過ごせばいいわけではありません)。

症状を感じたら

有馬先生:不調を感じたら、自己判断や我慢をせずに、女性なら産婦人科、男性なら泌尿器科や内分泌内科、心療内科(精神症状が強い場合)を受診してください。

いつからどのような症状が出たかをメモしておき、何に悩んでいてどう改善してほしいかを医師に伝えましょう。そうすることで医師の前でスムーズに、自分の症状や状況を伝えられることでしょう。

更年期の治療方法

有馬先生:女性の場合は、不足したエストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が一般的な治療法です。

HRTには、のみ薬と貼り薬、塗り薬があり(女性は過去に乳がんに罹患した場合、HRTは適用されません)、世界的に確立された一般的な治療法で、保険が適用されます。のほかに漢方薬や精神薬を併用することも多いです。

男性の場合も不足したテストステロンを補う治療法があり、注射で投与するのが一般的です。

更年期症状で苦しんだ患者さんから「もっと早く治療をしておけばよかった」という声を聞きます。適切に治療すれば、症状がやわらぎ、生活の質が向上することを知ってほしいです。

更年期でパートナーが毎日イライラするようになったら…

もし、パートナーが更年期症状になった場合、どのように付き合えばよいのかも教えてもらいました。夫婦そろって更年期を迎えている場合もありますよね。

パートナーが更年期症状になったと思われるときに取るべき行動は?

有馬先生:パートナーが辛そうだったら、声をかけ、寄り添うことを心がけてください。対面で声をかけにくかったら、家族内でのLINEなど、SNSを使うのも有効です。症状がひどければ、受診をすすめてみるのもよいでしょう。

日頃からパートナーとコミュニケーションを取り、お互いが変化に気づくことが大切です。最近、話す機会が減ったなあと思ったら、何気ない日常の会話から始めてみるのがおすすめ。きっかけを作りやすくなるでしょう。

特に子どもがいる家庭が気を付けることは?

有馬先生:親も1人の人間なので、イライラして子どもに当たってしまうこともあります。そういうときは、後でしっかりフォローしてください。子どもに「ママは(パパは)体調が悪い時期だからイライラしちゃっている」、「このところ笑顔が少ないかもしれないけど、あなたたちのことは大好き」と率直に伝えれば、子どもはわかってくれるはず。10代など年齢の高い子どもには、自分が更年期という体調が悪くなる時期だからこういう症状があることを伝えてもいいと思います。いい親でいようと思うと疲れてしまいますので、肩の力を抜いてみてくださいね。

「年だからしかたない」、「これくらい我慢すべき」というのは禁物

筆者は自分の体の声に耳を傾け、問題があったら 1人で抱えこまずに信頼できる人に相談する大切さに気が付きました。

また、パートナーの変化も感じ取り、寄り添う姿勢を忘れないようにしたいですね。そのために日ごろのコミュニケーションの心がけが必要ですね。私はセルフチェックでは受診勧奨だったので、早速泌尿器科の受診予約をしました!

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お話を伺ったのは…

有馬牧子|医学博士
昭和大学医学部 医学教育学講座 講師(医学博士)、日本女性医学学会評議員、公益社団法人 女性の健康とメノポーズ協会理事、国家認定キャリアコンサルタント
経歴:
ボストン大学大学院医学部公衆衛生学科卒業。ボストン市ブリガム&ウィメンズホスピタルを経て帰国後、国立保健医療科学院研究員を務める。国内・海外の医療の政策や、公衆衛生に関する研究に携わる。
2006年東京医科歯科大学大学院博士課程修了。東京医科歯科大学 学生支援・保健管理機構 男女協働参画支援室助教を経て2020年より昭和大学医学教育学講座の講師となる。多様な働き方を含めたダイバーシティの研究に携わっており、更年期と仕事の両立を主な研究テーマとしている。                       様々な世代の男女のキャリア支援や、家庭と仕事との両立支援のための活動を行っている。各世代の女性が、家庭に仕事に地域に元気で活躍するためのキャリア支援をライフワークとしている。またキャリアコンサルタントの立場から、キャリアに関する相談や仕事と家庭との両立に関する相談にも対応している。
受賞:
第7回更年期と加齢のヘルスケア学会学術奨励賞
2014年国際ソロプチミスト鹿児島・日本財団女性研究者賞受賞
2015年度内閣府「女性のチャレンジ賞」受賞

文・取材/峯あきら ※写真はイメージです。

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