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花まる学習会代表・高濱正伸先生×謎解きクリエイター・松丸亮吾さんの豪華対談が実現!
HugKumでは2020年から、松丸亮吾さんと日本の教育界をリードしてきた識者の方々との対談を、人気連載としてお届けしてきました。その連載を書籍化した、『松丸くんが教育界の10人と考える 答えがない時代の新しい子育て』が大好評発売中です。
発売を記念して、連載の初回ゲストにご登場いただいた、花まる学習会代表・高濱正伸先生と謎解きクリエイター・松丸亮吾さんのオンライン講演会を開催しました。お二人の提案する「地頭力」の鍛え方やワクワク学ぶ秘訣についてお話しいただき、子育てのヒントがたくさんの90分となりました。
テーマ1「地頭力」は生まれつきのものではなく、鍛えることができる!
そもそも「地頭力」とは、どんな力のことをいうのでしょうか?
松丸 僕らの定義している「地頭力」という言葉は、誰かに教えてもらったり、やり方を学習して問題を解くということではなく、初めて見る問題に立ち向かった時に、自分の持っている力を使ってどう答えを導き出していくか、その思考力全体のことを指しています。
今までの教育環境では、教科学習で方法論を教えていくことが多かったのですが、最近少しずつ教え方も変わってきていて、やはりこういう地頭力というのも、テーマになってきていますよね。
高濱 昔から学校は「その教科の知識を覚えて、テストに反映する」というようなシステムでしたが、私は”エンジン”が大事だと考えてきました。何かの謎に直面した時に いろんな角度で試行錯誤して、「あ、わかった!」というひらめきがあって、鍵を探し出して突破する。そこが一番肝心なところだと思っています。それでできたのが「なぞぺー」という算数パズルのシリーズなんです。
「地頭力」というと、「生まれつきの頭のよさ」という意味に捉えられがちですよね。
松丸 今までは「地頭力」というと、生まれつき備わったものという認識があったと思うんですよね。でも、僕の友人の話を聞いてみると、はじめから勉強ができたという人より、どこかのタイミングで地頭力が鍛えられるような出来事があったり、自分の好きなことを求めた結果、地頭力が鍛えられ、気づいたら勉強ができるようになっていたというパターンがすごく多いと感じます。
高濱 やっぱり自分が面白いと思うことに集中することですよね。どんなことでも「面白くなって、ずっとやりたくなる」という過程を経ることが大事だと思います。
松丸 そういう意味で、「地頭」は、鍛えられるものなのではないかという研究を進めています。
高濱 「地頭力」は鍛えられますよね。
松丸 絶対鍛えられます!!
テーマ2 子どもの「好き」を認めることで、力を伸ばすことができる
子どもが好きなことを見つけるために、親がしてあげられることはあるのでしょうか。
高濱 2〜4歳くらいの子どもを見ていると、何にも言わなくても没頭しているんですね。でも、それがなぜ失われるかというと「親に評価されること」に意識が向き始めるからです。親の評価基準が「◯◯のテストに合格すること」のようなものになると、子どもは「本当は面白くないけど、お母さんが喜ぶからやろうかな」という気持ちになっていくんです。本当の自分はただ虫を見ているのが好きなのに、それがもうやれなくなってしまう。褒められる側にいこうとしてしまうんですよね。
ですから、「子どもの遊びを止めない」ということが基本です。「石をいっぱい拾ってくる」とか「昆虫を見る」とか、何であろうと「あ、今この子は本当に、これが好きなんだな」というのを認めてあげるということですよね。言うのは簡単ですが、なかなか難しい。親はつい「あれしなさい、これしなさい」となってしまいがちですよね。
松丸 以前、動画を観たのですが、興味深い実験があって、ランドセルの色を子どもが選ぶ、というものなんですが、親が見ていないところで、”親が喜ぶと思う色”のランドセルを子どもに選ばせると、ほとんどの子どもが”親が喜ぶと思う色”を当てられるんです。
でもその後に、「パパママのことを気にせずに、本当に自分が好きなランドセルはどれ?」と聞くと、さっき選んだのとは違う色のランドセルを選ぶという結果になったんです。
親の気持ちって、子どもに痛いほど伝わっていて、 子どもは忖度しながら動くことがある。ショッキングなくらい、子どもの読み取る力ってすごいですよね。
好きなことをさせたいと思いつつも、つい「やってほしいこと」をやらせてしまうんですよね。
松丸 子どもの「好き」や「没頭できること」を見つけるには高濱先生のおっしゃるように、「ある程度の放置」が必要なのだと思います。「好きなことを見つけさせなきゃ」って思うと、子どももやっぱり気づくんですよね。やらせようとしていると、やっぱり「褒められよう」「喜ぶようにやろう」としちゃうんですね。
僕も子どもの時そうだったんです。僕が「謎解き」を好きになったときも、はじめは関連するパズルとか、クイズとかいろんな本を与えられたんですけど、それを見ると全部やらなきゃいけない気がして…。でも親は気づいたみたいで、途中からは本を買ってきても、僕に渡さなくなったんですよ。でも家にはあるんです。さりげなく置かれていて、僕がそれを選ぶ。だから、僕は「好き」を阻害されてる感じがしなくて、本を読む気になったんです。
高濱 それは素晴らしい方法だね! 同じようなことで言うと、よくスポーツ界でいわれているのが、ワールドカップなどの選手も次男が多いというデータがあるんですよ。つまり上の子は「やりなさい」って言われてやってるんですよね。でも、2番目はお手本があるから、それを見てやるだけ。今は末っ子が1番いいって言われていて、WBCの選手も末っ子が多い。
本当は生まれた順は関係なくて、「放置された子ほど伸びる」ってことだと思うんですよね。松丸くんが言った「放置」っていうのは、本当にキーワードかもしれない。そういえば松丸くんも末っ子ですよね。
松丸 ちょっと言いづらかったんですけど、僕も末っ子やらせてもらってます(笑)
親子の会話が、子どもの「好き」を深めるきっかけに
今回のトークセミナーでは参加者の皆さんからの質問にたっぷり答えていただきました。お子さんの好きにどうやって伴走すればいいのかわからないという声が多く寄せられ、お二人から回答いただきました。
松丸 親が無理して子どもに合わせて好きなふりをする必要はないと思います。 僕は子どものときに、謎解きがすごく好きでしたが、別に父や兄も謎解きが好きだったわけではなくて、何か問題出してくれたり、自分の話を聞いてくれてる瞬間がただただ嬉しいんですよね。
だからお子さんが好きなもののことを話しているときに、ちゃんと聞いてあげるだけでいいんじゃないですか。親が子どもの好きなことに関心を持って、色々調べるというより、子どもが頑張って調べたことを真剣に聞く方が大事かなと思いますね。僕が子どもの時はそうでした。
高濱 最新の知見で、「クオリティタイム」というのがあります。これは、親がどういう時間を子どもと過ごすかが大事ということなんですが、今の話のように子どもが関心を持ったことに、親も関心を寄せるような時間はぜひとりたいですよね。 例えば「次に、どんな電車に乗ってみたい?」とか、その子の関心を深堀りしていったり。
子どもが戦国武将が好きで、「◯◯時代ってこういうことがあったんだよ」とか言うのを、親は「すごーい!」ってどんどん聞いていく。自分が仕入れた知見を、ドヤ顔で親に言いたくなるような会話が豊かにあれば、子どもはどんどん自分で深掘りしていきますよ。だから、親は観客でいいと思うんですよ。とにかくマニアになった子って、自分でどんどん進んでいくので、親はエネルギーを後押ししてあげればいいですよ。
時々ちょっとだけ踏み込んで、「お母さんもこういうの勉強したんだけど」と言って、子どもに「そんなの簡単だよ〜」って言わせるのもいいですよ(笑)
今回のトークセミナーのテーマでもあった松丸さんの最新刊、好評発売中!
謎解きクリエイターの松丸亮吾氏が、教育界の10人のカリスマたちと語り合う。
「良い大学を出て良い企業に就職すれば安泰」というモデルが通用しなくなった現代は、「正解」がどこにもない時代。そのなかで、自己肯定感の高い子に育てるための親のかかわり方、これからの学習のかたちなど、教育や子育てについて納得の話が飛び出します。実際に、教育の現場で子どもたちを相手に活動し、世界中の実証データを研究する専門家ならではの説得力ある教育論が満載です。
【10人の先生たち】高濱正伸さん(花まる学習会 代表)/宝槻泰伸さん(探究学舎 代表)/藤本徹さん(ゲーム学習論研究者)/石戸奈々子さん(CANVAS代表)/齋藤孝さん(教育学者)/中島さち子さん(数学者・ジャズピアニスト)/工藤勇一さん(横浜創英中学・高等学校校長・)/中室牧子さん(教育経済学者)/小宮山利恵子さん(スタディサプリ教育AI研究所所長)/篠原菊紀さん(脳科学者)
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花まる学習会では親御さんに役立つセミナーを配信中。子育ての悩みは子どもの年齢や個性によってもさまざま。
子育ての専門家や、受験の専門家など幅広い登壇者の講演を、カテゴリに分けて、紹介しています。
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