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『雪の女王』ってどんなお話?
『雪の女王』は200年以上も前に書かれていますが、アンデルセンの代表作の一つ。今もなお世界中で親しまれています。1844年に発売された「新童話集」の中に収められています。
アンデルセン童話『雪の女王』とは
デンマークが生み出した偉大な童話作家アンデルセンは、『親指姫』、『マッチ売りの少女』、『人魚姫』、『みにくいアヒルの子』など日本でも絵本や児童書で親しまれています。
原題:”Sneedronningen“、英語表記”Snow Queen”
国:デンマーク
発表年:1844年
作者のアンデルセンってどんな人?
ハンス・クリスチャン・アンデルセン(Hans Christian Andersen、1805年 – 1875年)は、デンマーク語読みではアンナセンといい、フュン島のオーゼンセで貧しい靴屋の子として生まれました。
彼の代表作には、「人魚姫」「みにくいアヒルの子」「裸の王様」「親指姫」「赤い靴」「雪の女王」」などがあります。これらは、子どもだけではなく、大人にも愛される心温まる物語や寓話で、アンデルセンの独創的な想像力と感受性が反映されています。詩や旅行記も執筆、デンマーク文学の発展に貢献しました。
作品は当時の社会や人間の心の葛藤を描写しており、没後もアンデルセンの童話は数多くの映画や舞台化されたり、様々な形で再解釈されているほど、今なお世界中の人々に愛され続けています。
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「アナ雪」と『雪の女王』の共通点は?
ディズニー映画『アナと雪の女王』(※以下、略して「アナ雪」と表記)はアンデルセンの『雪の女王』からインスピレーションを得ていますが、その内容は大きく変更されています。
「アナ雪」にもゲルダやカイが出てくる
『雪の女王』の主人公、ゲルダとカイの名前は、「アナ雪」ではエルサとアナが住むアレンデールのお城の使用人の名前として登場しています。
ゲルダは、エルサを探す旅から戻ったアナを優しく迎え、アナを元気づけるシーンで登場します。カイは、アナやエルサの幼い頃からアレンデール城内で働いており、エルサの載冠式では、王室の手続きを行い大勢の国賓の前でエルサが新しい女王であると発表します。
雪の城
エルサの作り出す城と同様に、『雪の女王』に出てくる女王も雪の城に一人で住んでいます。「アナ雪」では制御できない自分の魔力に悩むエルサ、『雪の女王』では冷淡な心により人々が離れて行ってしまうことに悩む女王、どちらもに一人で住んでいる「孤独」に悩みます。
トロール(精霊)
「アナ雪」では、エルサの日増しに強くなっていく「雪や氷を作る魔法の力」をどうにしかしてほしいと、トロールに両親が助けを求めるシーンがあります。
『雪の女王』では、少年の目と心臓に刺さる割れた邪悪の鏡を作ったのがトロールです。このトロールが出てくるのも共通点です。
クリストフ・トナカイのスヴェン
「アナ雪」では、旅の道中で出会った山男のクリストフ、彼の相棒でトナカイのスヴェンが出てきます。対する『雪の女王』では、山賊の娘、そしてその娘に譲ってもらうのがトナカイとよく似ています。
『雪の女王』のあらすじ
それでは、『雪の女王』のあらすじを見ていきましょう。
※以下では、物語の核心にも触れています。ネタバレを避けたい方はご注意ください。
詳しいあらすじ
ある所に少女ゲルダと素直で聡明な少年カイがいました。二人は隣同士に住む幼馴染で大親友。毎日一緒に楽しく遊び、幸せな日々を送っています。
そんな中、雪の女王の国では、悪いトロール(精霊)が全てのものが真逆に映るという「よこしまな魔法の鏡」を作ってしまいます。
美しい風景は濁った泥水のように、徳のある優れた人はおぞましく見えるなど、世の中が全てひっくり返って映ります。傑作ができた、と大喜びする悪いトロールは、天に昇って天使と神様を「よこしまな魔法の鏡」で、からかってやろうと企み、高く高く飛んで行きます。
天まであと少しのところで、「よこしまな魔法の鏡」はガタガタ震え出し悪いトロールの手をすり抜け地上に落ていってしまいました。落ちた「よこしまな魔法の鏡」は何億、何十億という数に砕け散り、世界中に拡散してしまいます。
そんな事を知る由もないカイ。ある日その鏡の破片がカイの目と心臓に入ってしまいます。それにより、カイは驚くほど冷酷で性格の悪い子どもに急変してしまいます。豹変してしまったカイに驚くゲルダ。
その頃、北極にほど近いラップランドの北の方に住む『雪の女王』は、冷酷無慈悲な心を持つ聡明な男性はいないかと花婿を探していました。我こそはと、多くの男性が詰めかけますが、どれも女王の心には響きません。そんなとき女王が見つけたのがカイです。公園で遊ぶカイを女王は連れ去って行きます。
カイが雪の女王に連れ去れたことを知ったゲルダはカイを助ける旅に出ます。
ゲルダは、旅の途中、魔女に騙されそうになったり、山賊に襲われたりと、様々な困難が立ちはだかります。また、極限を超える寒い気候とも戦いでした。
それでも、ゲルダは動物や優しい人々に助けられながら、カイを見つけ出すためにトナカイに乗って、北へ北へと進んでいきます。そしてついに、ゲルダは雪の女王の城に辿り着き、カイを見つけます。
もともとは、トロールの作った「よこしまな魔法の鏡」の破片が刺さった事で冷たい心を持つようになったのですが、雪の女王が額にキスしたことで、カイはより一層冷たい心を持つようになっていました。
ゲルダはカイを見つけると、すぐさま彼を抱きしめ、再会に温かい涙を流します。その涙がカイの心を温め、突き刺さっていた冷たいガラスの破片は溶けて消え去り、元に戻ります。
ゲルダの真実な愛によってカイは、鏡の破片の呪いから解放され、二人は喜び家へ帰ります。
あらすじを簡単にまとめると…
ゲルダ少女とカイ少年は仲良しの親友でしたが、ある日、悪いトロールが作った「よこしまな魔法の鏡」の破片が、カイの目と心臓に刺さってしまい、冷淡で笑わない人間になってしまいます。ゲルダはただただ驚くばかり。
すると、雪の女王は冷たい心を持つカイを気に入って連れ去ります。ゲルダはカイを助けに行く旅に出ますが、様々な困難が待ち受けており難航。命懸けでカイを助け出し、ゲルダの真実の愛でカイの心を取り戻す冒険物語。
『雪の女王』から得られる教訓とは
相手を心から想う強い気持ちは、どんな辛いことでも乗り越えることができるということを伝えています。『雪の女王』では他にも大切なメッセージがたくさん隠されています。
冷たさは孤独を招く
「よこしまな魔法の鏡」が刺さったカイは、ゲルダに対し、冷たい言葉を投げるようになります。その後、雪の女王によって連れ去られ、より冷たさを増すカイ。さらに冷たい感情しか持たなくなり、自分さえよければよいという他者を顧みないその自己中心的な態度は、人間関係を壊し、結果的に孤立していくように描かれています。
温かい心は相手のハートを溶かす
冷酷無慈悲なカイを見つけ、ゲルダは抱きしめ涙します。その瞬間、心臓と目に刺さった魔法の鏡の破片は解け、女王の魔法も溶け、カイは温かい心を取り戻します。
ここに、相手を想い愛情を注ぐ温かい心は、氷のような冷たい心でもその扉を開き、絆を築くことができるというメッセージがあります。
自己成長と勇気
ゲルダはカイを救うために勇気を持って冒険に出ますが、実はそれは彼女の自己成長の旅でもありました。他者のために立ち上がったゲルダでしたが、実はゲルダ自身の成長の旅だったことも伝えられています。
これは、人のために何かをすることは、自分のためでもあるという事教えでもあります。
『雪の女王』の主な登場人物
ゲルダは旅の途中で様々な人や動物と出会いますので、多くの登場人物がいますが、ここでは主な登場人物に絞ります。
ゲルダ
物語の主人公の少女。カイの親友であり、彼を救うために冒険に出ます。彼女は温かい心を持ち、真実の愛でカイを解放します。「アナ雪」では、アレンデール城で働く女中として登場します。
カイ
物語の主人公の少年。悪いトロールがつくった「よこしまな魔法の鏡」の破片が刺さり、心が冷たくなったことで、雪の女王に連れ去られてしまいます。「アナ雪」では、アナやエルサの幼い頃からアレンデール城内で働く、お城のスタッフとして登場します。
雪の女王
冷たい心を持つ女王。冷たい心を持つカイを気に入り、氷のお城へ連れて行ってしまいます。
山賊の娘
旅の途中に、ゲルダにトナカイを譲り、雪の女王の居場所を教えてくれます。
カラス
ゲルダに雪の女王とカイの情報を教えてくれます。
『雪の女王』を読むなら
それでは、おすすめの『雪の女王』の絵本/書籍を、文字数・ルビの有無・発行年などに触れ、難易度順にご紹介します。
雪の女王(TOブックス)
絵本。読み聞かせ向けまたは英語勉強用。英語併記、二カ国語絵本。28ページ、2014/11/25 ルビあり、挿絵全ページ 絵本、電子版
雪の女王 (10歳までに読みたい世界名作plus 2)
雪の女王 アンデルセン童話集 (角川文庫)
小学校高学から中学生向け。 山室 静 (翻訳) 漢字あり、ルビほとんど無し、挿絵ほぼ無し、224ページ 2019/9/21 書籍、電子版
雪の女王 アンデルセン童話集 (竹書房文庫)
中学生から大人向け。2014/8/28 ルビ一部あり 漢字あり 挿絵少し
145ページ表題作を始め、六編〈『雪の女王 七つのお話でできたものがたり』『人魚姫 リトル・マーメイド』『親指姫』『雪だるま ~スノーマン~』『おまめのプリンセス ~えんどう豆の上に寝たお姫さま~』『雪の花 ~スノードロップ~』〉を収録。
アンデルセン童話の結末は予想できない!?
150話以上あるアンデルセン童話の特徴は「結末が予想できない」という点があります。ハッピーエンドの物語もあれば、バッドエンドを迎える物語もあります。
そのなかで『雪の女王』はハッピーエンドですので、安心してお子さんにおすすめすることができます。ファンタジー要素を多分に含んだ冒険物語で、読者はゲルダと一緒に旅を疑似体験しながら楽しく読み進められるでしょう。
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文/加藤敬子 構成/HugKum編集部