摩擦力ってなに? 日常生活でも活用される力のしくみについて学ぼう【親子でプチ科学】

自動車のブレーキのように、摩擦力を利用した製品は身の回りにたくさんあります。摩擦が日常生活でどのような役割を果たしているのかを知り、目に見えない力の存在を感じてみましょう。摩擦力の定義や分かりやすい実用例を紹介します。

摩擦力って何? 身近な方法で感じてみよう

そもそも摩擦力とは、何に対してかかる力なのでしょうか。家庭にあるもので摩擦力を感じる方法も合わせて見ていきましょう。

物体が別の物体上を動くのを妨げる力

摩擦力とは、ある物体が別の物体の表面に沿って動くことを、妨げようとする力のことです。例えば机の真ん中に、昨日の宿題で使った国語辞典が置いてあったとしましょう。

今日の勉強には使わないので横に動かそうとしても、指で少し押す程度では重い辞典は動きません。このとき、机と辞典の接触面で、辞典を動かそうとする力を妨げているのが摩擦力です。

もっと力を込めて押すと辞典は動きますが、動いている最中も常に動く方向に逆らうように摩擦力が働いています。

「摩擦力」より「押す」力のほうが大きいとき、物体は押した方向に動きだす。
「摩擦力」より「押す」力のほうが大きいとき、物体は押した方向に動きだす。

身近なものを使って摩擦力を体感する方法

机や床の上に置いたものを動かす以外にも、身近に摩擦力を体感できる方法があります。まずは、大きさとページ数が同じ本を2冊用意しましょう。

読み終えた雑誌や電話帳、使い終わったノートなどでも構いません。できるだけ大きくて厚いほうが、摩擦力を感じやすいでしょう。本を用意できたら、背表紙が外側に来るように並べ、ページを互い違いに重ねていきます。

重ね終わったら、両手で本を持ち上げて背表紙の方から引っ張ると、ページ同士がくっついたように離れなくなります。糊付けしたわけでもないのに本が離れないのは、ページが接している部分に摩擦力が働いているからです。

接する面積やページ数が多いほど離れにくくなるため、本の大きさや重ね合わせるページ数を変えながら、何度か試してみるとよいでしょう。

接しているぺージが多いほど摩擦力も多くはたらき、ふたつの本ははずれにくくなる。
接しているぺージが多いほど摩擦力も多くはたらき、ふたつの本ははずれにくくなる。

摩擦力の種類とそれぞれの特徴を確認

摩擦力は物体の動き方によって、「静止摩擦力」「動摩擦力」「ころがり摩擦力」の3種類に分類されます。それぞれの特徴をチェックしていきましょう。

静止摩擦力

静止摩擦力は、静止している物体に力を加えたときに発生する摩擦力です。また、静止中の物体が動き始める瞬間の静止摩擦力を、「最大静止摩擦力」といいます。最大静止摩擦力は、以下の公式で求められます。

●最大静止摩擦力=μN

「μ(ミュー)」は「静止摩擦係数」、「N」は「垂直抗力」です。摩擦係数には、物体同士の組み合わせや接地面の状態によって、さまざまな値があります。表面が滑らかな氷と凸凹の地面では、摩擦係数は大きく異なると考えてよいでしょう。

垂直抗力は物体の接地面で、重力と反対向きに生じる力です。物体には動かす力と摩擦力の他に、重力と垂直抗力が働いています。同じ大きさでも、重い物体のほうが軽い物体よりも動かすときに大きな力が必要となるのは、垂直抗力が影響しているからです。

Wは重力、Nは垂直抗力、Fが押す力で、F’が摩擦力。

動摩擦力

動摩擦力は、動いている物体と接する面との間に発生する摩擦力です。動摩擦力は以下の公式で求められます。

●動摩擦力=μ’N

「μ’」は動摩擦係数、「N」は垂直抗力です。摩擦係数の値が違うだけで、求め方は最大静止摩擦力と同じと考えてよいでしょう。ただし動摩擦力には、静止摩擦力と違って最大値はなく、常に一定です。移動速度など、他の要因によって変わることもありません。

また動いている物体を動かし続ける力は、静止している物体を動かす瞬間の力よりも小さくて済みます。そのため動摩擦係数は、必ず静止摩擦係数よりも小さくなります。

物体が動いているときの摩擦力(図中のF’)は、静止物体が動き出す直前より小さい。
物体が動いているときの摩擦力(図中のF’)は、静止物体が動き出す直前より小さい。

ころがり摩擦力

ころがり摩擦力とは、ボールやタイヤのような球や円状の物体が転がるときに発生する摩擦力のことです。転がっているため接触面が常に異なり、静止摩擦力や動摩擦力に比べてはるかに小さいという特徴を持っています。

ころがり摩擦力の特徴を使えば、重いものを楽に移動させたり、物体同士の摩擦を減らして動きを滑らかにしたりすることが可能です。実際に、現代のように便利な機械がない時代から、人々は「ころ」や車輪を付けた道具を使って重いものを運んでいました。

「ころ」は、丸太のような細長い円筒状の道具を指します。数本の「ころ」の上に荷物を置いて引っ張ると、地面に置いて引っ張るときよりも楽に動かせます。

ただし、はるか昔から知られていたにもかかわらず、ころがり摩擦力を求める公式は未だに存在しません。公式を作れないのは、荷物を載せたときに生じるゆがみや、車輪が完全な円ではないことなどが理由とされています。

摩擦力の日常生活における実用例を紹介

昔の人が「ころ」で重いものを運んだように、摩擦力のコントロールは生活のさまざまなシーンで使われています。摩擦力を活用した具体的な事例を見ていきましょう。

ブレーキ

自転車や自動車などのブレーキは、基本的に摩擦力を利用しています。ブレーキをかけるとブレーキパッドが、タイヤと一緒に回転している「ディスクローター」に接触し、摩擦力が発生してタイヤの回転速度を落とす仕組みです。

ブレーキの仕組みは他にも、さまざまな製品に応用されています。脱水中の洗濯機のドアを開けると脱水が止まるのは、ブレーキの技術によるものです。釣り竿のリールにも、釣り糸の動きを制御するためのブレーキが内蔵されています。

自動車のブレーキパッド交換。ブレーキパッドは摩擦によってすり減るので状況によって交換する。
自動車のブレーキパッド交換。ブレーキパッドは摩擦によってすり減るので状況によって交換する。

超電導リニア

超電導リニアは、東京から大阪までを結ぶ「リニア中央新幹線」としての実用化が計画されている乗りものです。時速500km以上の高速走行が可能で、東京から大阪までわずか1時間ほどで移動できるとされています。

超電導リニアがそれほど速く走れる理由は、摩擦力をなくしているためです。現在の鉄道は、車輪とレールとの摩擦を利用して進みますが、速度を上げると摩擦が減って車輪が空転してしまいます。

そのため日本最速を誇る新幹線「のぞみ」でも、最高時速は300kmほどしか出せません。一方の超電導リニアは、磁石の力で地面から浮いて走ります。車体が浮けば車輪と線路との摩擦がなくなるため、超高速走行が可能なのです。

鉄道総研とJR東海により開発が進められている超電動リニア。磁気浮上式リニアモーターカーが正式名称。
鉄道総研とJR東海により開発が進められている超電動リニア。磁気浮上式リニアモーターカーが正式名称。

カーリングのブラシ

冬季オリンピックなどで、カーリングの中継を見たことがある人も多いでしょう。競技中に選手たちがストーンの前をブラシではく「スイープ」は、カーリングの見どころの一つといわれています。

スイープの目的は、氷の表面を滑らかにして摩擦力を減らし、ストーンの動きをコントロールすることです。摩擦力が小さくなるほど、ストーンはより遠くまで移動します。

反対にスイープをあまりせずに、摩擦力が大きいままにしておけば、ストーンを早めに停止させられます。こする場所や強さを変えることでストーンの軌道を変化させ、思い通りの位置まで運ぶことも可能です。

摩擦力を調整してストーンの動きを操る競技「カーリング」

私たちの身近にある「摩擦力」を学ぼう

摩擦力は私たちが暮らす上で、身近に存在する力です。言葉で説明すると少し難しくなりますが、本のページを重ねる実験や車のブレーキなどの事例を通して、実際に力が発生する様子を見ると、すんなり理解できるかもしれません。

子どもと一緒に、摩擦力が発生するケースを考えてみるのもよい勉強になるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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