シートン動物記とは?
『シートン動物記』は、動物をテーマにした物語のシリーズ。全部で55話があります。そんな『シートン動物記』が、いつ、だれによって作られたものなのか、まずはシリーズが作られた背景から迫ってみましょう。
アメリカのアーネスト・トンプソン・シートンの作品(作者情報)
『シートン動物記』の作者は、アーネスト・トンプソン・シートン。イギリス出身のアメリカの作家です。1898年に、雑誌に掲載されていた物語8編をまとめた作品集が最初に発表されました。
原題:Wild animals I have known(最初の8編)
作者:アーネスト・トンプソン・シートン
国: アメリカ
発表年:1898年
おすすめの年齢:小学校低学年以上
アーネスト・トンプソン・シートンってどんな人?
アーネスト・トンプソン・シートンは1860年にイギリスで生まれました。『シートン動物記』の作者であるほかに、美術学校を卒業して絵の勉強をしてきた画家、さらに博物学者という顔も持っている人物です。
アメリカで、雑誌に発表してきた物語8編を集めた作品が最初に刊行されると、大ヒットとなったのです。『シートン動物記』には、シートン自身が書いた動物の挿絵が数多く使われています。
いつの時代の話?
アーネスト・トンプソン・シートンは1860年に生まれ、1946年に亡くなりました。彼が最初に、のちの『シートン動物記』と言われる作品を発表していたのは、1800年代後半。主にそのころに書かれた作品です。
アメリカはその頃、国内の開拓を完了しようとする頃で(「フロンティアの消滅」は1890年)、一大農業国、工業国として着実に国力を上昇させている時期でした。
シートン動物記の代表的な物語とあらすじ
『シートン動物記』で有名な物語をいくつかご紹介しましょう。
オオカミ王ロボ
『シートン動物記』の中でも、よく知られていて人気の物語が『オオカミ王ロボ』の話です。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
昔、アメリカにロボという名前のオオカミがいました。とても賢くて、どんな罠をしかけられても、決して捕まることはありませんでした。ロボには懸賞金がかけられ、多くの猟師がロボを捕まえようとするのですが、うまくいきません。そこで、シートンはロボたちのオオカミの行動をよく観察していくのです。
すると、ロボの群れのなかで、リーダーであるロボの前を唯一歩くことが許されているブランカというメスがいることがわかったのです。ブランカは、ロボが大切にしている奧さん。そんなブランカが捕まえられたことで、ロボは冷静さを失い、ついにシートンの罠に捕まってしまうのです。ブランカを殺され、鎖につながれたロボは、その後も誇り高く死んでいってしまうのでした。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
ロボというオオカミは、人間が罠をしかけて捕まえようとしても、賢く決して捕まることがありませんでした。しかし、あるときロボに懸賞金がかけられてしまうのです……。
灰色グマの一生
灰色グマが主人公の『灰色グマの一生』のあらすじを見てみましょう。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
アメリカのロッキー山脈で暮らす、灰色グマのワーブ。あるとき、一緒にいたクマが射殺され、ワーブは一人ぼっちになってしまいます。山のなかで一人で暮らしていたワーブですが、ある日偶然、森の中でモキという青年と出会います。モキは、最初にワーブが仲間が殺されたときに現場にいた人物。そんなモキは、ワーブとの再会に不思議な運命を感じます。
その後も巨大になったワーブに驚いた、牧場の馬や牛が暴走するようになり、牧場主である大佐はワーブを退治しようとします。そしてついに、ワーブと出会った大佐でしたが、谷に落ちてしまい絶対絶命のとき。モキはワーブに向かって大声で「遠くに行くんだ!平和に暮らせ」と叫びます。
するとワーブは木を爪でひっかくと遠ざかっていったのでした。爪で木をひっかいたのは、「この土地は自分のものだ」という証。だから、ワーブが二度と牧場に現れることはありませんでした。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
家族を失い一人ぼっちになってしまった、灰色グマのワーブ。厳しい自然のなか、一人でたくましく生きていくことになります。
クラッグ クートネーの雄ヒツジ
人間とヒツジの間の関係を描いた『クラッグ クートネーの雄ヒツジ』も『シートン動物記』の代表作です。
詳しいあらすじ(ネタバレあり)
ロッキー山脈で暮らすヒツジのクラッグ。賢いクラッグは群れのリーダーとなります。しかし立派な角を持ったクラッグは、ハンターたちに狙われてしまうのです。
多くのハンターがクラッグの狩りに失敗するなか、スコッティじいさんというおじいさんは、ついにクラッグを仕留めてしまいました。クラッグの頭部を剥製にして山小屋にかざっていたおじいさんですが、あるとき雪崩が起きて、おじいさんは雪崩に巻き込まれて命を落としてしまったのです。しかし、雪が解けると、クラッグの剥製はそのままの形で残り、ふるさとの山を見上げていました。
簡単なあらすじ(ネタバレなし)
ヒツジのクラッグは賢い、群れのリーダー。あるときハンターに狙われてしまい、どうにか逃げていきます。クラッグの運命は一体どうなるのでしょうか……?
シートン動物記が読み継がれている理由
160年以上前に書かれた作品なのに、いまでも『シートン動物記』が読み続けられているのはなぜなのでしょうか?
物語を通して動物について知れる
『シートン動物記』は、実際の動物たちの習性や生き方にもとづいて作られています。だから、物語を通して、動物たちの真の暮らしなどを知ることができます。さまざまな動物が出てくるので、気になる動物の作品から読むといった楽しみ方もできるでしょう。
シートンによる挿絵が魅力的
画家でもあったアーネスト・トンプソン・シートンは、多くの挿絵を自分で書いて作品につけています。美しく細部まで描かれた挿絵があるから、よけいに物語の中に引き込まれていきます。
映画・マンガ化も
『シートン動物記』は、これまでに映画、マンガ、アニメなどになってきました。映画はディズニー映画の『狼王ロボ』や『灰色グマの一生』がよく知られています。世代を問わず誰もが興味を持つ動物を主人公にした物語であることから、映画などの作品にもなり、人々の親しまれてきました。
名作「シートン動物記」を読むなら
現代も読み継がれている『シートン動物記』を読んでみませんか?
『シートン動物記』
『オオカミ王ロボ』をはじめ、『ぎざ耳坊やの冒険』『スプリングフィールドのキツネ』『名犬ビンゴ』などがおさめられています。
『シートン動物記(1)』
『オオカミ王ロボ』のほか、『ハイイログマの一生』など、大自然でくりひろげられる、動物たちの愛と戦いやかなしみを描いた作品がまとめられています。挿絵も豊富にあり、子どもでも読みやすいでしょう。
『シートン動物記(全15巻セット)』
動物学者の今泉吉晴が担当した完訳版。シートン自身によるイラストもついて、後半にはQ&A形式の解説があり、動物のことや物語の世界をより深く知れるシリーズです。
人間と動物の共生を考える「シートン動物記」
『シートン動物記』は、ただ動物を描いた物語ではなく、人間と動物たちがどうやって共生していくか考えるストーリーが多くあります。動物たちがどのように厳しい自然のなかで生きているのか知り、私たちがどんなふうに動物と共に暮らしていくべきか、考えるきっかけになるはずです。
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文・構成/HugKum編集部