「ケニア」はどんな国? ビル街近くにキリンが生息… 生活や文化の特徴、社会問題、観光スポットまで【HugKum世界紀行】

アフリカ大陸の東部に位置する国・ケニア。雄大な自然を誇る一方で、多くの深刻な課題を抱える国でもあります。本記事では、そんなケニアに住む人々の生活や文化、特徴、社会問題、さらには旅行に行ったら訪れたい観光スポットまでをお伝えします。

ケニアとはどんな国?

まずは、ケニアがどこにあるどのような国なのかを押さえておきましょう。

どこにある国?

ケニアはアフリカ大陸の東部に位置する国で、北はエチオピア、東はソマリア、西は南スーダン・ウガンダ、南はタンザニアとインド洋に接しています。

基本情報

ケニアの基本情報は以下のとおりです。

首都

ナイロビ

人口

5,403万人(2022年:世銀)

面積

58.3万平方キロメートル

言語

スワヒリ語、英語

ケニアの国旗

時差

日本とケニアとの時差は6時間。日本のほうが進んでいます。

気候

赤道直下にあるため熱帯に属する地域が多い一方で、モンスーン(季節風)の影響を受けることから、雨季と乾季があります。ただし、南西部は標高が高いため、温帯です。

ケニアの生活や暮らしは?

ケニアの人々の生活や暮らしぶりはどのようなものなのでしょうか。住居や食文化、物価を中心にご紹介します。

住居

首都ナイロビの景観 Photo by Bobokine, CC 表示-継承 3.0,Wikimedia Commons

ケニアの住まいと聞くと、木や土でできた伝統的な家屋をイメージかもしれませんね。しかしながら、そのような伝統的な家屋は現在のケニアではかなり希少です。特に、ナイロビのような都市部には高層ビルが立ち並んだ都会らしい景色が広がり、多くの人々はコンクリートでできたアパートメント等に住みます。

伝統家屋がケニアの人々の主な住まいだった際は、大人一人につき一軒の家を所有するのが原則だったのだそう。一家の中でもそれぞれが家を持つので、妻と夫が隣り合わせに家を建てていました。

食べ物・食文化

ウガリとスクマウィキ(ケールの炒め物) Photo by Paresh Jai from Nairobi, Kenya, CC 表示 2.0, Wikimedia Commons

ケニアでは効率よく満腹感を得るために、でんぷん質の多い食事を摂ります。

たとえば、ケニアを代表する食べ物である「ウガリ」。トウモロコシの粉でできたこの食べ物を、主食として、惣菜やシチュー等と合わせて食べます。

海に近い地域などでは海鮮類や果物を多く摂ったりと、地域や民族によって食事のバリエーションが異なり、非常に多様な食文化をもつ国と言えます。

物価や給料事情

ケニアの最低賃金は、2022年の時点で毎月1万5,202ケニアシリング(約1万6,722円、1ケニア・シリング=約1.1円)と言われており、日本円に換算すると16,800円程度でした。

それに対して、同じく2022年に平均物価上昇率は5.5%に達し、庶民の実質購買力が低下。さらに、人口増加に伴って、都市部の若年層の失業率も上がっています。

後に詳しく説明しますが、このような状況を一因に、ケニアでは貧困の問題はますます深刻化しています。

ケニアの文化や風習の特徴

そんなケニアは、面白い文化や風習にも注目したい国です。ここでは、ケニアの文化や風習の特徴を見ていきましょう。

唾をかける挨拶?!

ケニアに暮らすキクユ族には「相手の手に唾をかける」という挨拶があります。

日本人としては驚きの風習ですが、唾をかけることで悪いものから身を守る「魔除け」の意味があるのだそう。「幸運が訪れますように」という気持ちを込めた快い挨拶です。

遊牧民・マサイ族も

マサイ族は一番高くジャンプできた人に敬意を払う Photo by Bjørn Christian Tørrissen, CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

ケニアには42の民族が住んでいます。

中でも有名なのは、タンザニアからケニアの西部にかけて分布する、もともとは遊牧民族であったマサイ族。牛と共に移動しサバンナの自然を資源に生きる民族でしたが、最近では都市に移動し、普通の生活を送っている人も多数。自然保護区や国立公園の中に住んで、観光業などを収入源に暮らしている人も少なくありません。

自然と調和する国

ナイロビ国立公園でナイロビ市街をバックに立つキリン Photo by Mkimemia, CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

ケニアには、ライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファロー、シマウマ、キリン…等々、野生動物が生息する国立公園や保護区が多数存在します。

もともとは密猟や農地の拡大にともなって、野生動物の住処は少なくなりつつありましたが、そのことを課題視した政府が人間の居住地と分けた国立公園や保護区を設定。このような公園や保護区が、動物たちの暮らしを守ると同時に、多くの観光客をケニアへと呼ぶことになりました。

空港やナイロビの近隣にもそのような公園があり、都会のビル街を背景に動物たちが生息する、人間社会と自然が調和した姿を眺めることができます。

ケニアで起こっている問題は?

ケニアは多くの社会問題を抱える国でもあります。ここではその一部をお伝えしていきます。

根強く残る貧困と、スラム「キベラスラム」

キベラスラムの景観 Photo by Blazej Mikula, CC 表示-継承 3.0, Wikimedia Commons

ナイロビには都会らしい景色が広がる一方で、ケニア全体には今現在も深刻な貧困の問題が残っています。「キベラスラム」と呼ばれるアフリカ最大のスラムも存在し、ここには最大100万人の貧困に苦しむ人々が在住。

この貧困問題の背景としては、降水量が少なく耕作できる地域が限られているため地方部の農業生産性が低いことや、人口増加に伴う都市部の若年層の失業率の高さ、格差の増加が挙げられます。

この貧困問題に対して、国際社会は様々な支援を行っていますが、未だ解決の糸口は見えていません。

衛生環境の問題

ケニアでは、地域によって飲用水やトイレ等の衛生設備が整っていないことも大きな課題となっています。

ユニセフによると、最低限の飲用水サービスが整っている地域は都市部では87%、農村部では52%。さらに、トイレ等の衛生設備はケニア全体でも33%と非常に低い割合でしか整備されていません。このことによって、マラリア等の感染症が引き起こされるなど、さらなる課題を呼んでいます。

子どもたちの教育に関する問題

貧困のほかにも、ケニアの子どもたちはさまざまな問題を抱えています。ひとつは教育の問題。

8年間の義務教育が設けられているケニアは、アフリカの中では比較的教育制度の整った国です。しかしながら、貧困などを理由に、いまだ満足に教育が受けられない子も少なくありません。

また、学校に通えた場合でも、子どもの数に対して教員の数が不足しており、教育の質自体が低いことも問題視されています。

子どもたちの人権に関する問題

ケニアは、子どもの人権においても深刻な問題を抱えています。たとえば、家庭内での暴力や、文化的・非治療的理由による女性性器切除(FGM)、「児童婚」と呼ばれる早すぎる結婚……等々。

子どもの人権や保護への理解が浸透しておらず、多くの子どもたちが暴力の危険にさらされ、権利を脅かされています。

ケニアの人気観光スポット3選

一方で、ケニアには多数の人気観光スポットも存在しています。最後に、ケニアに行ったら訪れたい名所をご紹介します。

ナイロビ国立公園

ナイロビ国立公園はナイロビからたったの7kmほどの場所に所在する、首都内では最大の国立公園です。

117平方kmの広さがあり、ライオン、バッファロー、ヒョウ、サイ、シマウマ、クロサイ、キリン……等々、約100種類もの哺乳類に加えて、500種類以上の鳥類が暮らしています。

ジョモ・ケニヤッタ国際空港にも近いため、空港への日中の到着便では、公園内の動物たちの姿が見えることもあるようです。

ナクル湖国立公園

2011年に世界自然遺産に登録されたナクル湖国立公園も、ぜひ訪れたいスポット。5平方キロメートルもの広さを誇る湖で、リフトバレー州のボゴリア湖やエルメンテイタ湖と地下でつながっています。

鳥類や野生動物が多く生息しており、水鳥と陸鳥合わせて約450種が分布。特に、フラミンゴたちが湖にぎっしりと集う光景は、ナクル湖国立公園の大きな見どころとされています。

ナイロビ国立博物館

首都・ナイロビに所在するナイロビ国立博物館では、アフリカに生息する動物たちの骨格模型や、はく製などを数百点見ることができます。ツノの生えたキリンの祖先の骨など、興味深い展示物がずらり。ケニアの歴史、マサイ族の暮らし、そして人類の歴史についても学べる施設です。

魅力を知れば知るほど、課題への問題意識も深まる

今回は、ケニアの基本的な情報や、文化、特徴、社会問題、観光スポットまでをお伝えしてきました。

ケニアの魅力を知れば知るほど、そこに蔓延る課題への問題意識も深まるのではないでしょうか。まずは気になるポイントから深掘りしてみましょう。

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文・構成/羽吹理美

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