ひとりっ子と兄弟、子供の性格は違う?長所と短所、対処法をこどもコンサルタントが解説

ひとりっ子には「ワガママな子になるのでは」、きょうだいがいれば 「上の子が赤ちゃんがえりした」など、それぞれに育児の悩みがあります。 きょうだいがいる子といない子では、育児にどのような違いが出るのでしょうか。

ベテラン保育士を経て「こどもコンサルタント」として活躍する原坂一郎さんにお聞きしました。

Qひとりっ子育児と兄弟育児、それぞれに注意すべき点を教えてください

 

1歳から3歳頃は ひとりっ子も兄弟が いる子も、違いが出にくいもの

多くの子供に接してきた原坂先生は、「生まれて数年では、きょうだいがいる子、ひとりっ子の違いはほとんどわかりません。実際に行動や性格に違いが現れるのは小学生以上でしょう」と言います。まわりの人は、下の子がいるお子さんには「お姉(兄)ちゃんだから◯◯ね」と語りかけ、一方では「ひとりっ子は~」という目で見がちです。乳児時代の子どもは生まれた順番にかかわらず、その子自身の個性を見るように心がけましょう。

それぞれに長所が あるので、自信を持って!

3歳までは明確に出ていないとしても、ひとりっ子と、兄弟がいる子はどんな違いが出てくるのかが気になります。「ひとりっ子は短所を、兄弟は長所をよく語られてきましたが、実際のところはそれぞれに長所も短所もあります。まずは長所を見て、自分の家族構成に自信を持ちましょう!」と先生は大事な基本姿勢を強調します。いい面を知ると、子育てにも余裕が生まれます。

 

いま、ひとりっ子家庭は増加傾向に!

過半数の夫婦は子供が2人という傾向は約20年間変わっていませんが、子供の数が3人や4人以上という家庭は減少、1人が増加中です。周囲のおうちを見渡しても実感できると思います。

 

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プロが解説する、ひとりっ子と兄弟の長所と短所

ひとりっ子

原坂先生から見たひとりっ子の特徴とは…!? かつて、ひとりっ子は親の愛情に満たされているのが弱点のように 言われたこともありましたが、実は逆でした。 ひとりっ子が弱点にならないようにするポイントもあわせて紹介します。

いいところは?
親に十分甘えられるので 「満たされ感」がある

「人は満足感があれば、気持ちに余裕が持てて他人にやさしくできるし、自然に笑顔が出ます」と原坂先生。子供は親の愛や関心を求める強い欲求を持っているもの。ひとりっ子は、親をひとり占めできるのが大きなメリットなのです。「きょうだいに邪魔されることなく、やりたいことをやりたいときにやりたいようにできるので、欲求不満が少なく、その満足感から行動も落ちつくんです」とのこと。この長所が今後の友だち作りにも生きるそう。

気をつけたいところは?
先回りはやめて、 見守る姿勢を心がけましょう

ひとりっ子はパパ・ママの関心が集中するもの。両家の祖父母も加えると、最大で6人、大人の12の目が子供に集中します。「その結果、本人が欲しいとか、やりたいとかと言う前にそれが目の前にそろってしまうことが多くなるのです」と原坂先生。生活や遊び全般で先回りされてしまうと、自分の意思を伝える機会がなくなってしまいます。心当たりがあるおうちは、先回りすることを控えて、見守る姿勢や「待つこと」を心がけて。

ひとりっ子に多い特徴チェックリスト

ケンカが苦手

きょうだいゲンカの経験がない。争うくらいならむしろ譲ってしまう平和主義者。

自己主張がヘタ

大人が先回りして整えてくれるので、「こうしたい」とアピールする経験が不足しがち。

指示待ちの傾向がある

大人の視線が集中してあれこれ言われてしまうと、自ら行動する自信が持てない。

マイペース

周囲を気にせずやりたいことができる。無理に人と合わせることなく個性を発揮できる。

大人と会話ができる

話す相手は大人だけのことが多いので、大人とのコミュニケーションが得意になる。

おっとりしている

ケンカや競争のような戦闘態勢の経験が少ないので、おっとりした態度で相手を受け止められる。

「満たされ感」がある

親を独占でき、やりたいことをやりたいようにできる。欲求不満がなく、満たされている。

今日からできる!子育てアドバイス

「見ないふり、わからないふり」で 接してみよう

見守りつつ先回りをしないのは難しそうですが、「コツは、見ないふり、わからないふりです」と先生。「“失敗しそう”と思うときも、大ごとでなければ見守ってみましょう。すると子どもは、どうすればよいか自分で考えて行動します。むしろ、多少の失敗は成長に必要な経験です。失敗して助けを求めてきたら、そのときが親の出番。励ましたり、チャレンジしたことを認めてあげたりしてください」。

チェック!パパとママの価値観が 一致しすぎていない?

親と対立すると、孤立無援になってしまうのがひとりっ子。原坂先生は「同期がいない新入社員状態です。命の危険があるものは別として、ママが怒ったらパパはある程度子供の気持ちを認めてあげるなど、逃げ道を作って。怒られたけど認めてくれる人もいるという感覚も大事」。心得ておきたいものです。

 

兄弟がいる子

兄弟がいれば、子供同士で助け合える、子供同士でもまれて 社会性が身につけやすいなど長所がたくさん。「ただし親の愛情をめぐって、心の底に満たされない思いを持つことも」と注意を呼びかける原坂先生。 子供の不満をすくいとる姿勢がカギになります。

いいところは?
子供同士のかかわりで 社会性を身につけやすい

兄弟がいると、ふだんから子供同士の関係にもまれるので、自己主張しながら相手の言い分も理解する柔軟性を身につけやすくなります。また、上の子も下の子もそれぞれ「がまん」を体験するので、ストレスに強くなります。同時に、兄姉に憧れる、弟妹をかわいがる、相手の思いに共感するなど、さまざまな感情を経験する機会も豊富です。親子の立場とは違う人間関係が、社会性を育ててくれるでしょう。

気をつけたいことは?
親は「平等に接すること」 を意識して!

「親は平等に接しているつもりでも、兄弟の年齢差や個性によって、日々、全く同じように子育てすることはできません。たまに一日を振り返って、接する時間がどちらかに偏っていないか、考えてみて!」と原坂先生は力説。また、無意識のうちに“年上(下)だから”という理由で、対応に差をつけてしまうのも、不公平感を生む原因になります。将来的にも仲よくいられるよう、日ごろから親は兄弟がいい関係で過ごせる橋渡しに心を配りましょう。

兄弟がいる子に多い特徴チェックリスト

ケンカに慣れている

兄弟ゲンカを重ねて、感情のぶつかり合いに慣れてくる。

競争心がある

パパやママのひざの場所、おもちゃを使う順番、テレビのチャンネル権など競争のタネがある。

自己主張ができる

兄弟を見て同じことをしたくなると、「自分も」と主張する。

周囲の状況に合わせる

おやつの分け方も甘える順番もふだんの生活で経験するので、状況を見る敏感さが備わる。

妥協ができる

自分の意見を主張するが、相手の言い分も理解する。いい意味での妥協を知っている。

「がまん」を知っている

自分が抱っこしてほしいけど、弟妹にゆずるなど。欲求不満耐性が育っている。

作戦を立てられる

兄弟ゲンカの作戦を考える、親に怒られるきょうだいを見て学習するなど。

今日からできる! 子育てアドバイス

持ち物はなるべく共有しない。

個別に持たせるのが原則 「2人に2千円のものをひとつ買うより、千円のものをそれぞれに贈るほうがよほど喜ばれます。共同で使うものは争いのタネになりやすいのです」と原坂先生。順番や貸し借りを覚えるのも大切ですが、基本的には使いたいときに使えるほうが、楽しく遊べるはず。自分のものを持てる喜びも格別です。三輪車のような共有するものは、兄弟で不満を抱かないようにするコツを知っておきましょう。

 

チェック!「お兄(姉)ちゃんなのに」と思っていない?

下の子が生まれると上の子に対して手薄になるばかりか、親への協力まで期待してしまいがち。「上の子 は、ふだんいろいろがまんしています。“さすが、お兄(姉)ちゃん、ゆずってくれたのね”と、そのがんばりを認めてほめてあげて。“お兄(姉)ちゃんなのに”は禁句です」と先生。肝に銘じたいですね。

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ひとりっ子と兄弟、ママたちからのリアルQ&A

Q、下の子が生まれたら 上の子がおむつに戻って がっかりです…

A、下の子供が生まれると、上の子はパパやママを取られたような気持ちになります。自分にも関心を寄せようと、急に赤ちゃんのようになって、今までできていたことができなくなったりします。いわゆる「赤ちゃん返り」です。急に甘えたりすることもありますが、決して叱らず、ありのままを受け止めるようにすると、その安心感から、お兄(姉)ちゃんらしいやさしさが自然に出てくるようになりますよ。

Q、ひとりっ子だから、 早く集団生活を経験させた ほうがいいの?

A、「ひとりっ子だから」と考えないで。必要があって保育所に入れるならそれもいいですが、あえて早く集団を経験させなくては、と焦ることはありません。親子の絆がしっかりできておうちで楽しく遊べれば、人間関係の下地はできていきます。地域でさまざまな大人や子どもに接する機会があればなおよしです。地域の幼稚園や保育所を見学しながら、お子さんが興味をひかれているかどうかなど、ゆっくりと様子を見てから決めても遅くありませんよ。

Q、兄弟でよく ケンカします。 どう仲裁したらいいの?

A、一番よくないのは裁判をしたり両方を叱ったりすること。上には「お兄ちゃんでしょ、ゆずりなさい!」下には「そんなことで泣くんじゃない!」では、両方が「相手のせいで怒られた」とモヤモヤします。それぞれに「どうしたの?」と言い分を聞き、「そうだったの」と気持ちをしっかり受け止めてあげましょう。親にわかってもらえたら気分はおさまります。どちらにも言い分はあるのです。言葉で言えないベビブちゃんには親が代弁してあげましょう。

Q、ひとりっ子で過保護なせいか、臆病で優柔不断です

A、お子さんの姿を臆病・優柔不断と否定的にとらえず、「うちの子は慎重」と長所として見ましょう。例えばお店で好きなものを選ぶのに迷っているときに、「早く」とせかしたり、「遅い」と責めたりせず、よく見て選んでいると受け止め、「どれもいいわね」と共感の言葉を。ふだんから小さなこともほめるようにすると、子どもは自信を持つようになります。

 

子供たちで順番を争わせない秘訣

遊具の数が限られているとき、1番に使う子もいれば最後になる子もいます。保育士時代は、最後のほうの子には「よく待てたね」と抱っこしたりしてほめました。すると先を争うことがない、穏やかなクラスになりましたね。家庭でも同じです。上の子が1番に使ったなら、下の子には何かごほうびのようなものを。これで両者とも満足します。

 

 

原坂一郎先生
神戸市で23年間保育所勤務、現在はこどもコンサルタントとして全国で講演、講座を行い、著書も多数。家庭では2男1女の父。

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