国語教師が教える【チャットGPT】子どもと一緒にどう使うのが正解?「子どもの質問力」を鍛えるチャンスにも

「チャットGPT」を使えば、子どもの宿題の答えや作文などすぐにできてしまうなどと話題になります。「チャットGPT」の利用で、子どもの考える力が伸びなくなるでは? いう声も聞きます。
しかし、「チャットGPT」から良い答えをもらうには「質問を考える力」が必要なのです。ここでは、小学生「国語」の塾講師をしている筆者が「上手に質問する方法」「チャットGPT」はどの年齢の子に使わせていいのか、どんな質問をするのががいいのかをお教えします。

「チャットGPT」は、子どもの考える力を奪ってしまう?

一瞬で答えが返ってくる「チャットGPT」。長文の文章もあっという間に出ます。子どもの「考える力」が伸びなくなるでは? と心配されるのも分かります。しかし「チャットGPT」から良い答えをもらうには「質問を考える力」が必要です。
チャットGPTに「質問する」ことも、質問を「考える力」です。今回は「質問する力」と「チャットGPT」の関係について考えてみましょう。

「チャットGPT」は小学生だけでは使えなくなった

「チャットGPT」は、2023年8月現在、小学生だけでは使えません。2023年3月14日前までは、使用に当たっての年齢制限はありませんでした。しかし、翌日から「チャットGPT」のサービス側で年齢制限ができました。

「13歳未満使用禁止。18歳未満保護者の承認が必要」と。

令和5年7月4日に文科省から出た「初等中等教育段階における育成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」からも、抜粋して引用します。

(4)パイロット的な取組(一部の学校が対象)

※主な生成AIツールの規約及び設定、子どもの発達段階や特性を考えると上記のような取り組みは中学校以上で行うことが適当である。小学校段階では、情報モラルに関する教育の一環として、教師が授業中に生成AIとの対話内容を提示するといった形態が中心になると考えられる。

※利用規約 ChtatGpt…13歳以上、18歳未満は保護者同意
Bing Chat…成年、未成年は保護者同意
Bard…18歳以上

引用元:初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン

「チャットGPT」側や文科省の規定から、小学生が使えないことが分かります。小学校では教師が「対話内容を提示」して見せるのがが良いとあります。

「チャットGPT」を使うときは、適切に「質問」する必要がある

「チャットGPT」を利用してみて分かったこと

「チャットGPT」とはどんなものか、「チャットGPT」での質問の仕方などを親がやって見せるのなら大丈夫でしょう。

下の2つは、チャットGPT の特徴です。

①「チャットGPT」は、普遍的な答えを出す。個人の感情のような特有な答えは出さない。
②「チャットGPT」に質問する以前に「質問する文章を適切に作る力」が必要。

「チャットGPT」を使う前に「上手に質問する力」がないと、良い答えは返ってきません。また、必ずしも正しい答えが得られるわけではないのです。詳しくは、以下の項目で解説します。

子どもと親で「対話」しながら「チャットGPT」に質問してみよう

年齢制限を守ることは大前提です。子どもと「対話」しながら「親がやってみせる」のが良いでしょう。
いずれ、子どもが成長して「チャットGPT」を使うときのためにも、以下のようにやって見せましょう。

算数の足し算の答えを導き出すため、チャットGPTに質問してみました。「同じ文面の質問」を何度も繰り返して入れると毎回、答えが変わります。次の例は、1回目に出てきた答えです。


親:「5+2は?」
AI:「5+2は7です。」

※AI・・・チャットGPTの答え(抜粋引用)


親:「5+2の答えとその理由を教えてください。」
AI:「5+2の答えは7です。基本的な数字の足し算です。理由は、5を始めに数えてから、その後に2を足すことによって得られる結果です。


親:5+2の答えとその理由を具体物を使って、小学生にも分かるように教えてください。」
AI:「5+2の答えは7です。例えば、りんごの数を考えてみましょう。1つ目のりんごから数えて、2つ目のりんごを加えると、合計で7つのりんごになります。これが5+2=7の理由です。」


親:「5+2=7になると思います。りんごが5個あったところに後から2個買ってきたら全部で7個になるから、と考えました。5+2=7であっているのか、理由も正しいかどうか教えてください。」
AI:「はい!あなたの考えは正しいです! 数学的に表現すると、5+2=7は正しい式です。りんごの例で説明すると、最初にりんごが5個あります。そして後から2個買ってきたら全部で7個のりんごになります。この場合、5たす2は、最初のりんごの数に後から買ってきたりんごを加える操作をしています。数学的には加法です。その結果、全部で7個になります。したがって、あなたの考えは完全に正解です!」

良い質問とは、どんな質問なのか?

どんな質問をするのが良いのか、先にした①~④の質問について考えます。

①「5+2は?」

②「5+2の答えとその理由を教えてください。」

③「5+2の答えとその理由を具体物を使って、小学生にも分かるように教えてください。」

④「5+2=7になると思います。りんご5個あったところにあとから2個かってきたら全部で7個になるからと考えました。5+2=7であっているのか、理由も正しいのか教えてください。」

①は答えだけを求めました。「チャットGPT」からも答えだけが返ってきました②は答えだけではなく、理由も一緒にたずねました。具体物の「りんご」を出し、理由を答えています。

③の質問は答え方に条件をつけ、指示しています。答え方を指示すると、指示通り出てきました。

④が良い質問です。単に質問するだけでなく、「自分で考えた答えも入れて質問している」からです。答え方も③(小学生も分かるように)のように一緒に指示するとさらに良くなります。

上手な質問の仕方で国語力を伸ばす

上手な質問の仕方は、下記のようになります。

①答えだけを聞かない

②自分の考えも質問に入れる

③答え方を指示する(箇条書きで、200字で、3段落で……など)

「質問の仕方」次第で、「チャットGPT」の答えが変化します。親が子どもが考えた質問を入力すれば、子どもの国語力を知るきっかけにもなります。

ちなみに、「1年生にも分かるように教えて」の質問には「かけ算を使う方法も小学校1年生には分かりやすい」と答えてきました。1年生でかけ算は習いません。「チャットGPT」がいつでも正しいわけではないので、「本当に正しいのか?」と、子どもに考えさせることも大切です。

家庭で親が質問力を伸ばすには、どうすればいいのか

子どもの質問力を伸ばす方法が4つあります。

① 相手の話をしっかり「聞く」姿勢を育てる

相手の話をしっかり聞き理解できないと、聞き返したり質問したりできません。相手の話に対して、普段から「賛成」「反対」「どうして」「本当なのか」などと考えながら聞くようにすると良いでしょう。

② 「読書」に取り組ませる

子どもに本を読ませるだけでも「質問力」を伸ばせます。「子どもにとって興味のある本」を選ばせることで、「どうしてだろう」と考えることも楽しくなり、「質問」も作りやすくなります。

「この物語にはネコが登場したけれど、ネコもイヌのようにたくさんの種類がいるのかな」と子どもが思ったら「イヌには柴犬、チワワなどたくさんの種類がいるけれど、ネコにもいろんな種類のネコがいますか?」のような質問の文章が作れます。

③ 「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」を意識させる

普段の何気ない日常生活の中からも質問をつくることができます。

たとえばスマートフォン。「いつできたの?」「誰が一番最初に作ったの?」「どこでどのように作られているの?」「どうして作られたの?」というように質問ができます。「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どのように」を意識すれば、いくらでも質問を作ることができます。

親子でどんな質問を考えたのか話し合うゲームにしても良いでしょう。

④ 質問を「ノート」に書かせておく

子ども自身が考えた質問をノートに記録してあれば、あとで読み返したとき、前に考えていた質問を作り直すこともできます。

「カレーライスが辛いのはどうしてか」から「香辛料にはどんなスパイスがあるのか」のようにです。「書く」という作業もあり、国語力・考える力を伸ばすことにもなります。子どもに「質問用のノート」を作らせておくと良いでしょう。

この①~④は、そのまま「国語力を伸ばす」ことにつながります。①「聞く力」②「読む力」③「話す力」④「書く力」と国語で求められる全ての力に関わります。

「チャットGPT」を使う前に「上手に質問する力」をつけておくことが大切

このように、チャットGPTを使う時には「上手に質問できる力」が求められるのです上手に質問するためには、普段から「問題意識」を持って物事をよく観察し疑問を持つことです。

「チャットGPT」を使うには「質問力」を伸ばすことが先ということです。

文・構成/須貝 誠(すがいまこと)

塾国語科講師。教育・旅行ライター。現代ビジネス・マネー、コエテコサイト・ソクラテスのたまご、子ども学びラボに執筆あり。著者に「若手教師の働き方」(東洋館出版)がある。教育以外では年間100公演観劇したこともある劇団四季鑑賞マニア。斎藤一人の愛弟子でもある。

 

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