「三大くんち」のくんちって何? 語源や伝統的な九州の秋祭りの見どころを解説

「くんち」は、日本の一部地域で使われている祭りの別名です。「三大くんち」とされる三つの有名な祭りには、例年多くの観光客が見物に訪れます。三大くんちそれぞれの開催場所や日程、チェックしておきたい見どころを紹介します。
<上画像:長崎くんちの龍踊り>

「三大くんち」とは?

そもそも「三大くんち」は、何を指す言葉なのでしょうか。「くんち」の開催地域や語源をチェックしましょう。

「くんち」は九州北部の秋祭り

「くんち」とは、九州北部で古くから使われてきた、秋祭りを指す言葉です。唐津・博多・長崎の「くんち」が特に有名で、「三大くんち」と呼ばれています。

「くんち」の語源には諸説ありますが、「重陽(ちょうよう)の節句」でもある旧暦9月9日の「9日(くにち)」が「くんち」になったという説が有力です。重陽の節句は平安時代の初め頃に中国から伝わったとされる風習で、この日に秋祭りを開催したことで「くんち」と呼ばれるようになったと考えられています。

ほかには神社にちなんで、「供日(くにち)」や「宮日(くにち)」が語源とする説もあります。

佐賀県「唐津くんち」

三大くんちの一つ「唐津くんち」は、勇壮な曳山(ひきやま)と、期間限定の名物グルメで知られる祭りです。開催日程や見どころなど、祭りの概要を紹介します。

唐津駅前に並んだ曳山 MC MasterChef, Wikimedia Commons

祭りの概要

唐津くんちは、佐賀県唐津市にある唐津神社の秋季例大祭です。獅子や鯛、兜などをかたどった、14台の曳山が市内を巡行する「曳山行事」が有名です。

曳山行事は国の重要無形民俗文化財に指定されているほか、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の一覧にも記載されています。

その勇壮な姿を目当てに、毎年国内外から約50万人もの観光客が訪れます。開催日は例年11月2~4日の3日間と決まっており、2024年も通常通り実施される予定です。

豪華絢爛な家庭料理「くんち料理」

唐津くんちのもう一つの名物が、各家庭で作る「くんち料理」です。くんち料理は日頃お世話になっている人に振る舞うもので、非常に豪華で量が多いのが特徴です。何人来ても足りなくならないようにと、100人前以上を用意する家庭も少なくありません。

中でも「アラ」と呼ばれる大きな魚の腹に、大根とゆで卵を詰めて丸ごと煮付ける「アラの姿煮」は、くんち料理のメインメニューとして知られています。アラとはクエのことで、唐津くんちの季節にちょうど旬を迎えます。体長約60cm、重さ約10kgともいわれる巨大な魚の姿煮は、家庭料理とは思えないほどの迫力です。

祭りの期間中は観光客向けに「アラの姿煮」を提供する宿泊施設もあるので、食べたい人は調べてみるとよいでしょう。

旅Karatsu 唐津観光協会|唐津くんち

福岡県「博多おくんち」

福岡県の「博多おくんち」は、どのような祭りなのでしょうか。基本情報と、おすすめの見どころを紹介します。

「博多おくんち」で知られる櫛田神社(福岡市博多区)

祭りの概要

「博多おくんち」は、例年10月下旬に開催される櫛田(くしだ)神社の秋季大祭です。およそ1,200年前から続く伝統的な祭りで、牛車に乗った神輿行列・稚児行列・ブラスバンドが町を巡る「御神幸(おくんちパレード)」が有名です。

神社の境内では、五穀豊穣市や千灯明などの行事があり、多くの人で賑わいます。2024年の開催日は未定ですが、2023年は10月23日(月)・24日(火)に実施されています。

幻想的な雰囲気「博多灯明ウォッチング」

博多灯明ウォッチングは千灯明と呼ばれる寺社の行事をヒントに、1994年に始まったイベントです。博多おくんちに合わせて開催され、数万個の灯明が夜の町を幻想的に照らします。

博多灯明ウォッチング

千灯明とは油を入れた竹や小皿に、子どもたちが火を点けたり消したりして願い事をする行事で、博多では300年以上前から広く行われてきました。

当日は市民の手によって、櫛田神社周辺を始め、博多一帯が灯明で彩られます。灯明を使った地上絵を見られる場所もあり、博多おくんちを訪れる観光客の目を楽しませてくれます。

博多の総鎮守お櫛田さん 櫛田神社 | 博多の魅力

博多灯明ウォッチング

長崎県「長崎くんち」

最後に紹介するのは、長崎県で開催される「長崎くんち」です。どのような祭りなのか、簡単に紹介します。

「長崎くんち」の龍踊り(じゃおどり)

祭りの概要

長崎くんちは、江戸時代の初期から続く「鎮西大社 諏訪神社」の秋季大祭です。1634(寛永11)年、2人の遊女が神前に謡曲「小舞(こめえ)」を奉納したのが、祭りの始まりといわれています。

以降さまざまな奉納踊が取り入れられ、全国でも有数の豪華絢爛な祭りに発展しました。江戸時代を通して、外国との交易窓口として栄えた町らしく、異国情緒あふれる奉納踊が見られるのも、長崎くんちの特徴です。

祭りは例年10月7〜9日に開催されており、2024年も同じ日程で実施される予定です。

ダイナミックな「奉納踊」

長崎くんちの見どころは、各町が披露する奉納踊です。「踊町」と呼ばれる当番の町が担当し、3日間にわたって諏訪神社を含む市内4カ所の会場で、順番に披露して回ります。

内容は「本踊」と呼ばれる日本舞踊から、大きな竜の人形が舞う竜踊・阿蘭陀万歳(おらんだまんざい)・大きな舟やくじらの曳き物まで多彩です。

いずれも長崎独特の文化を伝えるものとして保存がはかられ、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。

長崎くんちの「コッコデショ」。樺島町が古くから奉納している演し物。正式には太鼓山という名称で、コッコデショは担ぐときの掛け声から。大太鼓と5色の大座布団を載せた山車を担ぐ。
長崎くんちの「コッコデショ」。樺島町が古くから奉納している演し物。正式には太鼓山という名称で、コッコデショは担ぐときの掛け声から。大太鼓と5色の大座布団を載せた山車を担ぐ。

長崎くんち <長崎伝統芸能振興会>

九州の秋祭り「三大くんち」を楽しもう

三大くんちと呼ばれる、九州北部の有名な秋祭りを紹介しました。同じ「くんち」が名前に付くとはいえ、地域によって内容は大きく異なります。

見どころとされる行事にも、それぞれの地域の歴史や文化が色濃く反映されています。機会があれば家族で見学に行き、伝統行事の迫力を体感してみると、よい思い出になるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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