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夢をカタチに
野草研究家というオンリーワンへの道をつかんでいった山下智道さんのブランディング力には、子どもたちの才能を引き出すヒントがたくさんありました。
その仕事ぶりは、ご自身が心から楽しんでいる様子が何よりも印象的。野草研究家は年配の方が主流な中、若手での躍進の鍵は、一体どこにあったのでしょうか?
夢をカタチに変えていく生き方について、じっくり深堀りさせていただきました。
インタビュー当日は、北九州市の山下さん宅からZOOMインタビューをさせていただきました。先日、取材で行かれた韓国でも人気の自家製「五味茶」との一コマ。
野草研究家という仕事
–はじめに野草研究家として、どのようなお仕事をされているのか教えていただけますか
山下さん:テレビ番組のロケですとか、講演会などを中心に日本だけではなく、世界中を旅してまわっています。書籍も手掛けているため、薬草や食文化などの取材で海外へ行くことも多いですね。
他には、子どもから大人まで年齢層様々なワークショップや、野草を使った商品開発、企業のブランディングなどを手掛けています。食べられる野草を組み合わせて薬草園を創ったり。庭師だった経験を活かして、庭のプロデュースをすることもあります。
–本当にご活躍が多岐に渡りますね。そもそも野草に興味をもたれたきっかけは、いつ頃からだったのでしょうか
山下さん:小学校の低学年ですね。父親が登山家で一般の方々にガイドをしたりしていました。登山家と植物学者はセットで動くことが多いのですが、一緒に同行させてもらって質問攻めにしていましたね。当時を振り返ると、さかなクンの植物系みたいな少年だったと思います(笑)。
とにかく植物が大好きで、お年玉やクリスマスプレゼントには珍しい植物の苗とか、辞典を買ってもらっていました。母の影響で生け花を習っていたり、祖父も祖母も和漢方の愛好家だったので、自然と植物に親しんでいたというのもあるかもしれません。
10代は人生のスランプ期でした
–植物のプロフェッショナルな方々に囲まれて育ったわけですね。それで、子どもの頃からその道を仕事にしていこうと思われていたのでしょうか
山下さん:いえ、途中から何だか恥ずかしくなってきたんですよね。一度、植物から離れて上京し、モデルやシンガーとして活動していました。でも全然、手応えがないわけですよ。壁にぶち当たって、10代の頃は本当にもがき苦しんでいました。その頃は、自分の個性に迷っていたのです。それからですね、徹底的に自己分析をしていきました。
–自己分析は、どういうことをされたのでしょうか
山下さん:一番、何が好きだったのかを思い出す作業から始めました。結果、小学校の頃から好きだった植物のことを思い出しました。試しに、野草のレシピをブログに挙げてみたら、凄い反応が良かった。シンガーとしてもブログをやっていましたが、アクセス数が桁違いに上がったのです。そんな時、ホームパーティに呼ばれて、野草料理を作ったらすごく喜んでもらえて。自分は、やっぱり野草とか自然を活かした仕事でなら輝けるんだっていう自信が持てましたね。
–もともとお料理はお得意だったのですか
山下さん:料理は中学の頃から好きでよく作っていました。あとは、以前シンガーだけでは生計が立てられなかったので飲食店で働いたんです。店長も任されていたこともあって、料理の基本はそこで覚えました。
–なるほど。山下さんのご著書には、美味しそうな野草レシピがたくさん掲載されている理由が分かりました。その後、植物と関わっていこうと決められてからも自己分析は続けれたのでしょうか
山下さん:はい、自分の長所と短所をパソコンに打ち込んで細かく分析していきました。時代の流れをみても、今後はフリーランスとして個性が輝く時代がくると確信が持てました。個性が強ければ強いほど、ナンバーワンより、オンリーワンを目指せる。自分しかできない仕事を持った方が勝ちだと思ったのです。
それに気が付いて、再び植物に没頭しました。それで、もともと植物は得意だったけど樹木には詳しくなかったので、庭師になって1年半ほど勉強させてもらいました。
「ハーブ王子」として活動開始!
–そこから、野草研究家への道が拓けていったわけですね
山下さん:そうです。自分の武器を深めていこうと決めました。年数で逆算していったんです。1年後はこうなりたい、2年後、3年後…。
「ハーブ王子」という名前も自分でつけました。ブランディングが楽しかったし、得意だったんです。テレビに出ることも本を出すことも年単位で目標を組み立てていきました。それが、本当に願った通りに叶っていった時、周りの評価もがらりと変わっていきました。
もともと教師になりたいと思ったこともあったのです。人に教えるのが好きだったので、ワークショップなどをしている今の仕事は本当に天職だと思っています。
やんちゃだった少年時代
–山下さんは、どのようなお子さんだったのですか
山下さん:今でいう、変な子ですよ(笑)。集団行動ができないような。化学や生物、歴史は好きだったから一生懸命やるけど、興味ないものは一切やらない。先生にも、よく「座っていなさい!」とか言われているような子どもでしたから。ちょっと時間があったら、校庭に植物を探しに行っちゃうとか。目立った集団の中心的な存在だったので、先生には迷惑をかけていたと思います。
–植物に詳しかったということは自由研究などは、お得意だったのですか
山下さん:やれって言われることは、やりたくないんです。
夏休みの自由研究も松ぼっくりを1個拾っただけとか(笑)。自分が好きで研究するのは、とことんやるタイプでした。
親には自分の居場所を認めて欲しい
–好きを極めた仕事をされていますが、ご両親のサポートはありましたか
山下さん:特に父親は、「やるならとことんやれ。バカになるくらいにやれ」っていうのが口癖のような人でした。野草研究家の活動は、とことんやっていたので認めてくれている様子は感じていました。やはり、親は子どもの行動に対して上からコメントするのではなく、後ろ側で見守ってくれているくらいがいいですね。本当に大変そうな時だけ助けてあげるくらいでいい。母親からも、「あなた凄いね」とか、目標をカタチにしていく姿を心から褒めてもらえたのは、とても励みになりました。友達とか彼女とかでもなく、親に認めてもらえるのは、安心感につながりますし、自分の居場所はここでいいんだって再認識できたような気がします。
–今は、ご実家である北九州を拠点に活動されているのですよね
山下さん:出張が多いので、あまり帰れていませんが(笑) アトリエと野草園があります。最近、YouTubeをはじめたのですが、野草園はよく撮影場所として登場しています。気になった方は、ぜひチェックしてみてください。
キラキラと輝いたものに集中して、オンリーワンを探す
–次世代の子どもたちが、山下さんのように自分のオンリーワンを見つけていくためには、どのようすればよいのか。ご自身の経験からアドバイスがあれば教えていただけますか
山下さん:小さな時から自分の好きなことを強制ではなく、楽しみながらやってきました。親には、いろんなものを見せてもらって自由に選ばせてもらってきたというのもあります。その上で様々な経験を通して、自分に合うものを探せたのは幸運でした。
やはり子ども達には、一番好きなことをやらせるのがいいと思うのです。その中で、キラキラと輝いたものに集中して、あとは突き詰めていけばいいのではないでしょうか。1つ見つけたら、勉強も入ってきやすくなりますよね。付随して、歴史とか化学とかにも興味が湧いてくるはずです。それぞれにペースがあるので、その子のタイミングで見つけられるのが1番です。自分のように、親に自然の中に放ってもらって、好きを見つけるきっかけを探すのもおすすめです。
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YouTube https://www.youtube.com/@tomomichi_yamashita