「海岸段丘」はどのように作られる? 成り立ちや有名スポット、「河岸段丘」との違いも【親子でプチ地学】

「海岸段丘」は日本各地の海沿いで見られる地形であり、自然の壮大さを感じられる場所です。特徴や成り立ちを知ると、その土地への理解が深まります。日本の代表的な海岸段丘や、河岸段丘との違いなどについて、さっそく見ていきましょう。
<上画像:三陸海岸北部の鵜ノ巣断崖(岩手県下閉伊郡)>

海岸段丘とはどんな地形?

海岸段丘は名前の通り海辺で見られる地形ですが、場所によって規模が異なるので、注意して見ないと気付けない場合もあります。海岸段丘の特徴や、どのように作られた地形なのかを見ていきましょう。

海沿いで見られる階段状の地形

海岸段丘は海沿いにできた階段状の地形で、海岸線に沿うように見られます。陸地から海辺に向かって下がっていき、平坦な地形と険しく切り立った崖のような部分が混在していることが特徴です。

大きさや段の高さは地域によってそれぞれで、2段になっているものもあれば何段も連なっているものもあります。「海成段丘」と呼ばれることもあるので、覚えておきましょう。

知床岬

地殻変動や波の浸食で階段状になった

なぜ、海岸段丘のような不思議な地形が誕生したのでしょうか。

地球の表面にある層を地殻といい、地震や長期的なプレートの移動などが原因で地面が隆起したり沈降したりして形を変えることを、地殻変動といいます。

海岸段丘は人の手が加えられたわけではなく、長い年月をかけて地殻変動で地表が隆起したり海面が低下したり、波に削られたりしてできた地形です。地域によって隆起や沈降の速度、海面上昇の度合いが異なるため、階段の高さや数などに違いが現れるのです。

海岸段丘ができるしくみ。海底で砂の堆積などによりつくられた平坦な土地が隆起で上昇する、という動きが何度も繰り返されてできる。
海岸段丘ができるしくみ。海底で砂の堆積などによりつくられた平坦な土地が隆起で上昇する、という動きが何度も繰り返されてできる。

日本の代表的な海岸段丘

海岸段丘は日本各地に存在しています。北海道の「知床岬」や青森県八戸市から宮城県の牡鹿半島まで続く「三陸海岸」の北部、高知県の「室戸岬」などが代表的です。

知床岬の先端部にある海岸段丘は、火山活動で形成されたものとされています。登山道が整備されていない、深い自然の中にあります。

知床岬

三陸海岸の北部にある海岸段丘は、スケールの大きさが特徴的です。岩手県の宮古湾を境として、北部が海岸段丘となっており、平坦部の長さは約13kmにもなるといいます。

高知県にある室戸岬の海岸沿いでは、過去に繰り返し発生した地震の影響でできたとされる海岸段丘が見られます。平坦部と切り立った崖の対比が際立っている模範的な場所として、研究家に注目される機会も少なくありません。

高知県室戸市付近の海岸段丘地形の空中写真。段丘面(畑地)と、海水によって深く侵食された谷状の地形が混在している。 © 地図・空中写真閲覧サービス 国土地理院
高知県室戸市付近の海岸段丘地形の空中写真。段丘面(畑地)と、海水によって深く侵食された谷状の地形が混在している。 © 地図・空中写真閲覧サービス 国土地理院

海岸段丘の特徴

海岸段丘は見た目が特徴的なだけでなく、土地の活用法にも影響を与えています。人々の暮らしに関わる土地として、どのような特徴があるのかを見ていきましょう。

地盤が安定している

海岸段丘を構成している堆積物は、洪積世(更新世)に作られた「固い地盤」から成り立っているものが多く見られます。洪積世とは地質学の時代の区分の一つで、約250万~1万年前ごろです。

固く締まった堆積物によって地盤が安定している平坦部は、住宅や施設などの建設に向いています。高台にあって、眺望がよい点も特徴です。

ただし、崖の端や崖に面した部分は、雨や風にさらされた影響で崩れやすくなっています。トンネルや道路などを建設する際に、土木的な問題が起こる場合もあるでしょう。

畜産や畑作に使用される

海岸段丘の平坦部は、畜産や畑作などにも使用されています。例えば三陸海岸の北部にある岩手県洋野町周辺では、なだらかな丘陵地を利用した畜産や畑作が発展しました。東西およそ10kmにもなる段丘面で酪農や養鶏、山ぶどうの栽培などが行われています。

海岸段丘は海沿いなので漁業が盛んに行われていると考えがちですが、実は漁業には向いていません。なぜなら海産物を陸に移す作業を行う際、切り立った崖を何度も往復するのは大変だからです。浜辺と陸地の距離が近いほうが漁業がしやすいといえるでしょう。

海岸段丘の平坦地は酪農や畑地向き
海岸段丘の平坦地は酪農や畑地向き

「河岸段丘」は海岸段丘と違うの?

海岸段丘と似た言葉に「河岸段丘」があります。同じ段丘地形でも、河岸段丘は海沿いではなく川沿いにあることが海岸段丘との大きな違いです。河岸段丘の成り立ちや、代表的な例を見ていきましょう。

川沿いにできる階段状の地形

河岸段丘は地殻変動による地面の隆起や沈降、「河川の流れ」で浸食されてできた階段状の地形です。「河成段丘」とも呼ばれています。

河川の両端または片側にでき、川辺に向かって低くなっていく地形です。水量や、流れによって堆積していった砂や小石などの量の変化も、その成り立ちに関係しています。

平坦部は、昔から田畑や住宅地などに利用されてきました。日本各地にある多くの河岸段丘で、まちや畑が広がっている様子が見られます。

河岸段丘をあらわした図 Cristellaria , Wikimedia Commons

信濃川沿いの河岸段丘が有名

河岸段丘は全国にありますが、信濃川沿いで見られるものが有名です。新潟県津南町にある「マウンテンパーク津南」の展望台から一望できる河岸段丘は、9段にもなります。

日本でも最大級の規模で、古い段丘と新しい段丘の様子がはっきりと残っていることが特徴です。大昔の段丘がきれいに残っている場所は、日本でもかなり珍しいようです。

信濃川沿いには活断層が走っており、昔から地震が多い地域でした。約40数万年前から、活発な地震活動により地面の隆起が何度も起こったことで、このような地形になったと考えられています。

信濃川の河岸段丘

階段状の地形・海岸段丘を探してみよう

海岸段丘は、自然が長い年月をかけて作り上げた地形です。地殻変動や波の浸食が何度も繰り返され、階段状の地形になりました。

三陸海岸北部や高知県室戸岬などに、地形の特徴が顕著に現れています。平坦部は地盤が固いため建築物を建てられるほか、地域によっては畑作や畜産にも活用されています。

同じ段丘地形でも川沿いにできるものを河岸段丘と呼び、信濃川沿いで見られるものが有名です。海沿いや川沿いに出かけた際は周囲をよく観察し、階段状の地形がないか探してみるのも面白いかもしれません。

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構成・文/HugKum編集部

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