小学校では2018年度から、中学校では2019年度から、教科としての「道徳」の授業が始まります。
今回は、道徳が教科になる前から、先進的に道徳教育を行っている小中学校の様子を見てみましょう。
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東京都町田市町田第一小学校のケース
■「考え、認め合う」道徳教育
東京都町田市町田第一小学校は、平成27・28年度には町田市道徳教育研究指定校として、平成28年度には東京都道徳教育推進拠点校として認定を受け、道徳教育の研究実践に取り組んでいます。
お話をうかがった宮島徹校長先生によりますと、本校では「考え、認め合う」道徳教育を実践しているとおっしゃっていました。
これからの道徳の授業は、教員が道徳を教え込むのではなく、子どもたちが道徳について考える授業内容へと変わりますが、この学校では、道徳を学ぶ環境づくりを積極的に行いました。
道徳心の育成を促すために、各学級や校舎内のさまざまな掲示板には、道徳の授業内容を示したものを掲示したり、家庭と学校の両面から子どもたちの道徳性を育てるために、道徳の授業で児童1人ひとりが道徳ノートを活用したりしています。
ワークシートに児童が自身の考えや、自分の生活を振り返って考えたことなどを書くことで、思考を深めることにつなげるとともに、そのワークシートには、保護者がコメントを書く欄を設けました。
■ワークシートの活用で、自分の意見が言えるように
こうした取り組みによって子どもたちには、どんな変化が見られたのでしょうか。
授業で少人数のグループトークなどを取り入れることで、子どもたちはだんだん自分の意見を述べられるようになり、対話を重ねるうちに、他人の意見に触れることが楽しいと感じる子も増えたといいます。
また、授業で発言しなかった子でも、ワークシートを書くことによって、しっかりと考えた上で自分の意見をもっていることが、先生たちにも理解できました。
皆さんも、ワークシートにコメントを書くチャンスがあれば、お子さんが書いた意見をもとに道徳の話題について話し合ってみるといいかもしれません。
山梨県甲斐市立竜王北中学校のケース
■目標は、「考え、議論する道徳」
山梨県甲斐市立竜王北中学校は、平成28年度より山梨県のやまなし道徳教育研究推進事業の一環として道徳教育研究推進校の指定を受け、道徳教育の取り組みが始まりました。
お話は、同校の今村淳一校長先生と研究主任の成嶋久代先生にうかがいました。
同校では、「考え、議論する道徳」という目標のもと、生徒自身が、自分ならどうする、どう思うなど、自分のことに置き換えながら考えられる授業内容を重視しました。
道徳教育の取り組み始めたときは、まだ道徳の教科書がありません。子どもたちからいろんな考え方が出てくるように、これが答えだというものがないような教材を先生方が苦労して選んだといいます。
また、生徒全員にA4サイズのリングファイルをもたせ、授業で使った資料を保存させました。授業後に考えたことや気づいたことを書かせた道徳記録も一緒に3年間分ファイルしておけるようにしました。
これを振り返れば、どんな授業があったかがわかり、感想などから生徒自身が心の変化を知ることができるほか、先生たちもその心の変容を読み取ることができます。
■地域との交流活動、いじめ防止の活動も
さらに同校では、日常生活に道徳性を活かすために、授業外でも多様な活動を行っています。例えば、老人ホームの訪問や河川清掃、保育園との交流など地域と交流する活動をはじめ、近隣の竜王北小学校と連携して、生徒会主導のいじめ防止やあいさつ運動などに取り組んでいます。
道徳の授業スタイルを「考え、議論する」形に変えてからの生徒の変化は、これから調査していく予定だそうですが、生徒たちからの授業の評判はよく、生徒がつける記録についても、しっかりと自分の考えを書くように変わってきたようです。
東京都町田市町田第一小学校、山梨県甲斐市立竜王北中学校それぞれ特色ある取り組みを行っていますが、共通するのは、道徳の授業が変わるだけではないということです。保護者と連携したり、地域と交流したりするなど学校全体で道徳に取り組んでいる様子がうかがえます。
小中学校は地域や保護者といかに連携を図るかという課題を抱えています。もしお子さんが、学校の道徳教育の一環としてこのような活動をしていたら、保護者としてその活動を支援することを視野に入れてみてはどうでしょうか。
(「総合教育技術」記者/高瀬康志)