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「ウィリアム・テル」とは
オペラの題目や、ゲームのキャラクター名として『ウィリアム・テル』を認識している方もいるかもしれませんね。『ウィリアム・テル』とは、元々はスイスの建国にまつわる伝説であり、その伝説に登場する英雄を指します。
今回は、そんな『ウィリアム・テル』のお話のあらすじや時代背景、おすすめの映像作品・音読作品までをお伝えしていきます。
あらすじ・ストーリー紹介

14世紀のスイスは隣国であるオーストリアに統治され、人々は同国の役人であるゲスレルの圧政に苦しんでいました。
ある日、ゲスレルは街の広場の中心に帽子を掲げた長い棒を立てます。そして、その帽子はオーストリアの皇帝のものだと言い、前を通る時はおじぎをするようにと人々に命じました。
スイスの独立を願うウィリアム・テルは、ある祝祭日、広場の帽子におじぎをせずに通り過ぎようとしました。スイスでは、オーストリアの皇帝の帽子におじぎをする必要がないと思ったためです。
しかしながら、それではゲスレルが黙っていません。捕らえられたテルははじめは死刑を告げられますが、テルが弓矢の名手であることを知ると、ゲスレルはある提案をしました。それは、6つになる息子の頭上にりんごを乗せて、射抜くことができたら解放してやるというもの。
少しでも矢がずれれば息子は死んでしまいます。しかし、「ぼくは大丈夫。お父さんはスイス一の弓矢の名手だから」と励ます息子。テルは勇気を振り絞り、矢を2本取り出すと、息子の頭上のりんごに向かって1本を放ちます。矢は風を切って、りんごに見事に命中します。よって、息子もテルも無事にゲスレルの手を逃れることができました。
ゲスレルがなぜ2本の弓を取り出したのかと訊ねると、「もし息子が死んだら、もう1本であなたを射抜くつもりだった」と告げるテル。そのため、ゲスレルにやはり捕らえられてしまうテルですが、無事に脱出すると弓矢でゲスレルを射殺し、オーストリア軍に勝利します。やがてスイスは解放され、人々は自由を喜びました。

「ウィリアム・テル」の登場人物
ここでは、『ウィリアム・テル』のお話の登場人物をおさらいしましょう。
ウィリアム・テル
スイスの伝説的な弓の名手。スイスの独立を願っている。
ゲスレル
スイスを支配するオーストリア・ハプスブルク家の代官。
息子
ウィリアム・テルの息子で、ゲスレルの命令によって頭の上にリンゴを置かれる。
作者は?実在する?「ウィリアム・テル」の基本情報

『ウィリアム・テル(ドイツ語:Wilhelm Tell)』は、先述したとおり、イタリアの名作曲家であるジョアキーノ・ロッシーニによってオペラ化もされたスイスの伝説です。ここでは、そんなウィリアム・テルの時代背景や基本情報を知っておきましょう。
作者や時代背景は?
『ウィリアム・テル』の物語は、あくまでも14世紀初頭のスイスを舞台とする伝説であり、特定の作者がいるわけではありません。中世から口承で伝えられ、スイスの英雄譚として広まったと考えられています。
14世紀初頭、現在のスイス地域の一部(特にウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデン)は、神聖ローマ帝国の影響下にあり、ハプスブルク家の支配を受けていました。しかし、これらの3州は自治を求め、1291年に原初同盟を結成して抵抗を始めます。
このような背景の中でウィリアム・テルの物語が生まれたと語られることが多いですが、実際にこの物語が誕生した時期は明確ではありません。現存する最も古い記録は、15世紀半ばに書かれた『ザルネンの書』とされています。
ウィリアム・テルは実在する?
ウィリアム・テルが実在したかどうかは不明であり、歴史的証拠は存在しません。しかしながら、スイス人の6割はテルが実在したと信じているという調査結果もあるようです。
「ウィリアム・テル」の物語に触れるなら…
最後に、『ウィリアム・テル』の物語に触れる際におすすめの映像作品や音読をご紹介。ぜひお子さんと一緒に楽しんでくださいね。
Audible版『ウィリアム・テル』
世界中の昔話をお子さんにも分かりやすいように再編集&音読してくれる「せかい むかしばなし シリーズ」の『ウィリアム・テル』。7分でシンプルにまとめられており、寝かしつけの際にも最適です。Audibleの月額会員でない場合でも、単品購入が可能です。
世界名作アニメーション ウィリアム・テル(日本語吹替・英語オリジナル) [DVD]
アニメーションのほうが理解しやすいという子には、世界名作アニメーション版の『ウィリアム・テル』のDVDもおすすめです。全50分で丁寧に物語を追ってくれるので、ただ楽しめるだけでなく、物語への理解も深まります。日本語吹替・英語オリジナルの両方が収録されています。
ロッシーニ作曲 歌劇《ウィリアム・テル》 ミラノ・スカラ座 1988 [DVD]
ロッシーニの名作オペラ『ウィリアム・テル』のミラノ・スカラ座での公演の記録映像作品。収録されたのは1988年で、指揮者は巨匠リッカルド・ムーティが務めています。『ウィリアム・テル』の物語をオペラで楽しみたい方には、ぜひ手にとっていただきたい一作。
りんごを射抜くだけじゃない!当時のスイスの情勢を読み取れる物語
今回は、スイスの伝説『ウィリアム・テル』のあらすじや時代背景等をご紹介してきました。頭に乗せたりんごを射抜くシーンが有名ですが、物語の背景からは当時のスイスの情勢を読み取ることができます。気になった方は、ぜひ今回取り上げたおすすめの映像作品や音読作品を通じて、物語への理解を深めてくださいね。
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文/羽吹理美 構成/HugKum編集部