分類学上「魚類」は存在しない? 学問上の定義と一般的な認識について解説【親子で学ぶ生物】

普段、何気なく魚類と口にしてはいますが、あらためて「どのような特徴があるのか」「他の生き物との違いは?」などと聞かれると、答えに迷うことがあります。分類学上の定義や一般的な認識との違いについて、詳しく見ていきましょう。

「魚類」とは? まずは定義・分類をチェック

魚類と聞いて、海や川などに住む魚の姿を思い浮かべる人は多いはずです。分類学的に、他の生物とどのように分けられているのか見ていきましょう。

分類学では定義が難しい

分類学に「類」というくくりはなく、界・門・綱・目・科・属・種などに分けられます。これらは、生物を分類する際に使用する単位の一種です。例えばコイを分類する際は、「硬骨魚綱コイ目コイ科」となります。

以前は、魚類を魚綱(ぎょこう)や魚上綱(ぎょじょうこう)に分類していました。しかしDNAの研究が進むにつれ、同じ分類にしていた魚類の先祖や進化の過程がさまざまであると分かったため、現在では魚綱や魚上綱などの分類は使用されていません。

一般的な認識と分け方の違い

分類学上は魚類という分け方をしていませんが、一般的には「魚のように見えるもの」を魚類と呼んでいます。現在は、学術的に魚類を分類する際は「脊椎動物で四肢動物以外」という分け方をしています。

四肢動物とは、両生類・爬虫類・哺乳類・鳥類などの生き物のことです。脊椎動物の中でこれらの生き物を除いたものは、習慣的な呼び方としての魚類に分けられます。

一般的に「魚類」に分類される“魚のように見える生き物”

魚類は最初の脊椎動物

脊椎動物は体の中心に脊椎(背骨)があり、左右対称の体を持つなどの特徴がある生き物です。魚類は最初に誕生した原始的な脊椎動物で、海・川・湖などの水の中に住み、鰭(ヒレ)を持ち、鰓(エラ)呼吸をします。

魚類の種類は非常に多く、これまでに発見されているものだけで約3万6,000種以上です。2023年も10月2日までに257種もの新たな種類が見つかるなど、毎年新種が発見されています。

今後も新たな種類の発見をきっかけとして、分類学上における定義が変わる可能性もあるでしょう。

顎口類と無顎類に分かれる

魚類は、顎口類(がっこうるい)無顎類(むがくるい)に大きく分けられます。顎口類は、一般的によく見かける顎を持つ全ての魚類が含まれます。

無顎類は顎がなく、吸盤状の口を持っていることが特徴です。顎のない全ての魚類が含まれ、古生代(約5億4,200万~2億5,100万年以上前の時代)に繁栄しました。顎口類に比べると、現存する種類は多くありません。

【魚類の分類】顎を持つ「顎口類」

鮮魚店などで見られる一般的な魚は、顎口類>硬骨魚類>条鰭類に分類される

一般的な魚と聞いて、タイやアジなどの顎があるものを思い浮かべる人は多いでしょう。顎口類は、さらに硬骨(こうこつ)魚類軟骨魚類に分けられます。それぞれの特徴を見ていきましょう。

硬骨魚類

硬骨魚類は名前の通り、骨格が硬い骨になっている魚類を指し、魚の大部分が当てはまります。硬骨魚類は、「条鰭類(じょうきるい)」「肉鰭類(にくきるい)」に分けられることもポイントです。

条鰭類は、日常的に見かけるほとんどの魚類が該当します。イワシ・サバ・カレイ・サケなど、食用として普段スーパーや魚屋で目にする機会も多く、非常に多くの種類に分かれていることが特徴です。

一方、肉鰭類に該当する魚類は、シーラカンス類やハイギョ類などのわずかな種類のみです。四肢動物の中にも肉鰭類に分類されるものがあり、魚類よりも陸で進化していった生物たちに近い存在といわれています。

軟骨魚類

軟骨魚類は、体の骨が全て軟骨でできている魚類のことです。例えば、サメやエイなどの種類が該当します。

硬骨魚類とは骨以外にも異なる点が多く、軟骨魚類には鰓を保護するための鰓ぶたがなく、浮き袋もありません。他にも、数対の鰓孔(えらあな)を持つなど、複数の相違点があります。何層もの歯を持ち、一部が傷付くと生え変わる点も大きな違いです。

サメやエイは、顎口類>軟骨魚類に分類される

魚類は、軟骨魚類から硬骨魚類に進化したという定説がありました。しかし現在は、サメが誕生する以前に硬骨を持つ祖先がいたことが分かり、進化の過程であえて軟骨魚類になることを選んだのではないか、という説もあります。

【魚類の分類】顎を持たない「無顎類」

無顎類は、魚類の中で顎がない種類のことです。詳しい特徴や、現存する種類をチェックしていきましょう。

原生では最も原始的とされる

無顎類は、約5億4,000万年前のカンブリア紀に出現したとされます。体の中心には硬い脊椎の代わりに、脊索という柔らかい組織が通っています。円口類とも呼ばれ、顎がなく口は吸盤状になっていることが特徴です。

現存する生物の中では、ヌタウナギやヤツメウナギなどが無顎類に該当します。どちらもウナギと名前が付いているものの、うな重などにして食べているウナギとは別種の生き物です。

ヤツメウナギの一種「スナヤツメ」

ヌタウナギは危険を察知すると、体からヌルヌルとした粘液を出します。ヤツメウナギは鰓孔が7対あり、横から見たときに八つの目が並んでいるように見えることが特徴です。

無顎類から生物の進化も研究中

無顎類は、脊椎動物の脳の進化を探るための重要な手掛かりを持っていると考えられています。ヤツメウナギとヌタウナギの脳や胚の発見・研究によって、脊椎動物の進化形態の研究が進んでいるのです。

ヌタウナギを産卵させて脳の発生の過程を調べたところ、頭部の形態パターンが脊椎動物の共通祖先の特徴と類似していることが分かりました。今後もさらに研究が進めば、脊椎動物の脳の起源や進化の道筋が明らかになるかもしれません。

まだまだ研究途上の「魚類」に注目しよう

魚類は学術的な分類法ではなく、習慣的な呼び方です。学術的には、脊椎動物の中の四肢動物以外に分類するのだと覚えておきましょう。

顎の有無や骨の硬さなどで分類される点を押さえておくと、魚類に対する理解がより深まるはずです。魚類は非常に種類が豊富で、その進化についてはまだ多くの謎に包まれた部分があります。

今後研究が進み、新たな種類が発見されれば、再び分類法が変わる可能性もあるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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