消化のはじまりは口の中から
私たちが食事をとるのは、食べ物からエネルギーを得るため。その食べ物から栄養素を得て、それによって毎日を送っています。
消化とは
お腹が空いたり、しばらく何も食べていなかったりすると、からだに力が入らないように感じることがあるでしょう。それは、私たちが食べ物からエネルギーをもらって、毎日生活しているから。でも食べ物のそのままの形では、栄養をからだに吸収することができません。そこで、食べ物を分解して、体内に吸収できる大きさまですることを「消化」と言うのです。
分解してからだが吸収できる大きさにするというのは、結果的にアミノ酸、脂肪酸、グリセリンといった状態にすること。具体的には次のような形に分解されます。
- タンパク質→アミノ酸
- 脂質→脂肪酸+グリセリン
- 炭水化物・糖質→ブドウ糖(グルコース)
また、口から入った食べ物は、「口→食道→胃→小腸→大腸→肛門」というプロセスを経て消化されていきます。これらの器官は「消化管」と言います。
噛むことの大切さ
消化の最初のステップになるのが、口で食べ物を噛み砕くプロセス。ここで、たくさん噛めば噛むほど、食べ物はそれだけ細かくなります。すると、次に食道を通って胃に行ったときに、消化酵素によってさらにドロドロの状態になります。
口であらかじめ細かくしておいたほうが、胃やその先での消化がスムーズに進むわけです。「よく噛んでから飲み込もう」「一口で30回噛もう」などと言われるのは、そんな理由があるのです。
唾液の役割:消化の先駆け
食べ物を口で噛むと、耳、あご、舌の下にある唾液腺が刺激されて、唾液が分泌されます。唾液は、口の中に湿り気を与えて口の中を守ったり、虫歯や口臭を防いだりする働きもありますが、それと同時に、大切なのが消化を助ける働きです。
唾液にはアミラーゼという消化酵素が含まれていて、アミラーゼには炭水化物を分解する働きがあります。そこで、噛みながら食べ物と混ざり合って、でんぷんはブドウ糖に変えられ、胃腸の負担が軽減されるのです。
胃での食物の加工
口で咀嚼(そしゃく)した食べ物は、食道を通って胃に届きます。胃では、食べ物がおかゆのようにドロドロの状態になっていきます。
胃の構造と動き
胃は「J」に似た形をしていて、食べ物が入ると胃液が分泌されて、胃の周囲にある筋肉によって胃が動き始めます。こうして食べ物は、3~5時間ほどかけてゆっくりと消化されていきます。
ちなみに、胃は入る食べ物にあわせてゴムのように伸びて、空っぽのときはしぼんでいます。
胃酸の役割
胃液のうち、主成分となるのが胃酸です。胃酸は、phが1~2と強い酸性の性質があります。これだけ強酸性なのは、バクテリアや細菌などの侵入を防ぐ役割もあるから。食べ物と一緒に細菌などを口にする可能性がありますが、胃酸の強い酸性に胃の中は一定以上の酸性に保たれていて、それらを殺しているのです。
ただ、気になるのは胃酸で胃が溶けたり傷ついたりしないかということ。胃の内側は粘膜に覆われていて、それによって胃酸が直接触れないようになっています。ただし、なにかの原因で胃酸が多く出過ぎたり、空腹なのに胃酸がたくさん分泌されたりすると、胃の粘膜が傷つけられることになってしまう可能性があります。
小腸での栄養の吸収
胃でドロドロの状態になった食べ物は、次に小腸に運ばれます。
小腸の構造:ヒダと絨毛
小腸は、十二指腸、空腸、回腸をあわせた総称で、その長さは全部で6~7メートルにもなります。
小腸の内側はひだになっていて、さらに表面には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる突起が無数にあります。これによって小腸の表面積は、テニスコート1面の4分の1ほどと言われるほど、広いのです。そして、この広い表面積を利用して、栄養を無駄なく吸収しているのです。
栄養分の吸収メカニズム
小腸では、小腸液とよばれるものが作られていて、これには酵素がたくさん含まれています。この酵素によって、胃から運ばれた食べ物を完全に消化。
炭水化物はブドウ糖、脂肪は脂肪酸とグリセリンというように、最小のかたちに分解されるのです。そして分解されたこれらの栄養は、小腸の絨毛を通って、腸の血管に取り込まれていくのです。
大腸の役割と排泄
小腸を通ったら、次は大腸です。
大腸の主な機能
大腸は、盲腸、結腸、S字結腸、直腸でできていて、全部で1.6メートルほどの長さになります。大腸の働きは、小腸で栄養素を吸収した残りから、今度は水分とミネラルを吸収して、便にすることです。
水分と塩分の再吸収
口から始まった消化のプロセスでは、さまざまな消化液が分泌されるので、食べ物自体の水分も含めると一日にとる水分はかなりの量になります。その水分を小腸で吸収し、さらに大腸でも再吸収しているのです。また、塩分も吸収する役割もあります。
そして大腸の「ぜんどう運動」によって、食べ物を最後の直腸に向かって移動させていきます。
便としての排出
こうして水分が吸収されると、最後は便になり肛門から排出されます。肛門につながる直腸は、便を一時的にためる役割をもち、直腸に便がいっぱいになると、私たちはトイレに行きたくなって、便を外に出すのです。
消化を助ける消化酵素とは?
消化について知るうえで、欠かせないのが消化酵素の存在です。消化酵素には、どんなものがあるのか、確認しておきましょう。
消化酵素の種類と働き
消化酵素とは、食べ物を消化するときに食べ物を分解させる働きがあります。消化酵素は、次の3つがあります。
・アミラーゼ
炭水化物を分解する酵素。唾液の中に含まれています。
・ペプシン
たんぱく質を分解する酵素。胃液の中に含まれています。
・リパーゼ
脂質を分解する酵素。すい液の中に含まれています。
酵素が効率的に働くためのポイント
消化酵素がきちんと働いてくれないと、消化が不十分になってしまう可能性があります。そこで考えたいのが、どうやったら消化酵素を効率的に作用させられるか。
酵素は年齢を重ねると力が弱まってしまうことが知られていますが、食生活や睡眠不足、ストレスなどによっても不足してしまいます。そこで、ビタミンやミネラルをしっかり取って、栄養バランスのとれた食事をすること。ストレスをためずにしっかり質のいい睡眠を取ることも大切です。
消化不良にならないようにストレスにも注意!
ふだん何気なく食べているものが、私たちのエネルギーとなって、からだのもととなっています。そのエネルギーを得るために、こんなに長くて複雑な消化の仕組みがあるんですね。
ただ、私たちの消化のプロセスは、ストレスとも密接な関係があります。悲しいことや想い悩むことがあれば食欲がなくなるし、すぐに胃腸が痛くなったり消化不良を起こしてしまいます。また、ストレスが多いと消化酵素も十分に作られず、食べ物をしっかり消化できないことにもなってしまいます。
私たちが幸せに暮らしていくためには元気なからだがあってこそ。あらためて消化とからだの不思議に注目して、ハッピーに毎日を送れるようにしていきたいですね。
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文・構成/HugKum編集部