大腸の驚くべき機能。「免疫」「幸せホルモン」「脳の働き」と密接なヒーロー臓器に迫る 【親子で人体を学ぶ】

1.5メートルもの長さになる大腸。口から取り入れた食べ物が、体内で消化されて最後に通る臓器です。そんな大腸にはどんな機能や役割があるでしょうか? 知れば知るほど驚くような大腸のすごい機能に迫ります。

大腸の基本情報

まず大腸はどんな臓器で、どこにあるのか見てみましょう。

大腸とは

大腸とは人のからだの中にある臓器のひとつで、食べ物をとったときの最後の通り道です。私たちが食べ物を口からとると、次のようなプロセスを経て、それが便となって体外に排出されます。

口→食道→胃→小腸→大腸

  • 口:食べ物を歯で細かくかみ砕きます。
  • 食道:唾液と混ざり合った食べ物が食道に運ばれます。
  • 胃:胃の収縮と消化液によって、ドロドロの状態になります。
  • 小腸:栄養素が吸収されます。
  • 大腸:水分が吸収されて便となります。
食べ物は、胃の収縮と消化液によって、ドロドロの状態になり、小腸で栄養素が吸収され、大腸で水分が吸収されて便となります。
食べ物は、胃の収縮と消化液によって、ドロドロの状態になり、小腸で栄養素が吸収され、大腸で水分が吸収されて便となります。

口から入った食べ物は、口から大腸まで「消化管」と呼ばれる1本の管を通って、最後は便となって肛門から出ていきます。

消化管の長さは全部で9~10mにもなり、食べ物を口からとって、体外に排出されるまでは24~72時間かかります。大腸は、そんな消化管の最後の役割を担っています。

大腸の位置はどこにあるの?

大腸はお腹の部分にあり、大腸の長さは1.5mにもなります。お腹の右下から始まって、時計回りにお腹をぐるりと囲むようにしてまわり、最後は肛門につながっています。

大腸は、細かく分類すると、盲腸、結腸(けっちょう)、直腸(ちょくちょう)に分けられます。

  • 盲腸:退化した器官のため、特別な働きはないと考えられています。
  • 結腸:水分と、ナトリウムなどの電解質を吸収します。
  • 直腸:便を一時的に貯めておきます。

大腸と小腸は何が違うの?

よく間違えられやすいのが、大腸と小腸です。

小腸は大腸の前に食べ物が通る臓器で、食べ物から栄養素を吸収する働きがあります。それに対して、大腸は小腸で栄養分が吸収された残りから、さらに水分やミネラルを吸収して、排出しやすい固形の便にする役割があります。

小腸と大腸は、それぞれの役割で連携して、からだに必要なものを吸収して、不要なものを体外に排出する働きをおこなっているのです。

大腸の機能や役割

では、次に大腸にはどんな機能や役割があるのか見てみましょう。

機能や役割1:水分の吸収

大腸のもっとも大切な役割は、食べ物の消化の過程で、水分を吸収すること。口、食道、胃、小腸を通って、ドロドロになった食べ物が、1.5mにもなる大腸の中をゆっくりと移動しながら、少しずつ水分が吸収されていきます。

もし下痢になってゆるい便が出たら、それは大腸がしっかりと水分を吸収できていないことが原因かもしれません。

機能や役割2:便の形成

食べ物が消化管の間を通過していく間は、消化液などの働きによって、食べ物はドロドロの状態になっています。このままでは体外に排出しにくいので、大腸で水分を吸収して固形状の便にする役目があります。

大腸の最後の部分にあたる直腸に便が移動すると、人は便意を感じて、便として外に排出します。

機能や役割3:免疫を司る

細菌やウイルスなど、外部から侵入するものがあったとき、私たちの身体にはそれらを攻撃して守る「免疫」という働きがあります。免疫細胞は、そんな免疫機能を担う細胞です。

そして、その免疫細胞のおよそ7割が腸にあるのです。小腸に約5割、大腸に約2割あると言われ、大腸は免疫機能にも大きな役割を果たしているのです。「腸は最大の免疫器官」と言われるのは、こんな理由があるからなのです。

機能や役割4:第二の脳

「腸は第二の脳」と呼ばれているのを聞いたことがありますか?  実は、腸は脳と密接な関係があり、腸の状態が脳の健康にもつながっていると言われているのです。

これは、腸には多くの神経細胞が存在するから。そのため、腸の調子が悪いと、その不調が脳にも反映されてしまうのです。

腸と脳は密接に関係しています

「腹黒い」「腹が立つ」「腹の虫がおさまらない」など、日本語には昔から「腹(腸)」を使った表現が数多くありますが、私たちの気持ちの変化と腸を結び付けているのは、そんな理由もあるのです。

大腸と腸内フローラは、おなかの中の友達

大腸の話をするときに避けて通れないのが、腸内細菌のこと。小腸には約1兆個、大腸には100兆個もの腸内細菌がすみついています。顕微鏡で見ると、これが花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれているのです。

腸内細菌の役割

膨大な数の腸内細菌。人が消化できなかったものを消化して、エネルギーや代謝物質を作り出す役割があります。

また、腸内細菌は働きによって次のように大きく3つに分類できます。

  • 善玉菌:腸に良い働きをする菌
  • 悪玉菌:腸に悪い影響を与える菌
  • 日和見菌:善玉菌にも悪玉菌にも属さない菌

腸内フローラは、悪玉菌の増殖を抑えて善玉菌を増やすほか、免疫細胞を活性化させてからだの免疫機能を高める働きもあります。

プロバイオティクスとは

プロバイオティクスとは、イギリスのフラー博士が定義したもの。「腸内フローラのバランスを改善するために、人の体によい働きをもたらす生きた微生物」のことを指します。

プロバイオティクスの代表格に、乳酸菌やビフィズス菌があります。また、ヨーグルト、サプリメントなどで口から摂取したり、クリームなどで体内に取り入れたりすることもあります。

幸せホルモンを作る

「幸せホルモン」と呼ばれるのは、セロトニンという脳にある神経伝達物質。セロトニンが多く分泌されると、精神が安定して穏やかになって幸福感を感じることから「幸せホルモン」と呼ばれているのです。

このセロトニンは、脳で作られていると思われやすいのですが、実は腸内で作られていることがわかってきました。腸内細菌によって、セロトニンとなるものが作られ、それが脳でセロトニンになるのではないかと言われているのです。

大腸の健康維持│どうやってケアする?

便をつくるほかにも、私たちの健康にも深いつながりがあるのが大腸の存在です。そこで、大腸を健康な状態にキープするためには、どんなことに気をつければいいでしょうか?

食物繊維の重要性

大腸を健康的に保つためには、食物繊維が欠かせません。食物繊維は善玉菌のエサとなるので、善玉菌を増やすことにつながります。

食物繊維を多く含む食品には、わかめ、ひじきなどの海藻、キノコ類、ゴボウや芋などの野菜などが挙げられます。また、納豆やチーズなどの発酵食品もおすすめです。

大腸に優しい食事

食物繊維以外で、大腸にとって積極的にとりたいのが、オリゴ糖や乳酸菌。

オリゴ糖は食物繊維と同じように善玉菌のエサとなって、善玉菌を増やします。オリゴ糖を多く含むものには、ネギ、バナナ、玉ねぎ、ゴボウ、大豆食品などがあります。

また乳酸菌は善玉菌の一種で、ヨーグルト、チーズ、漬物などの発酵食品に多く含まれます。

大腸はハッピー&健康になるためのカギ

大腸というと、食べ物を消化する内臓のひとつです。でも、大腸にどんな働きがあるのかよく知っていくと、実はそれ以上にさまざまな役割があることがわかるはずです。1.5mもの長さになる大腸には、数多くの腸内細菌が住んでいて、私たちの健康を守ってくれているのです。

ただ、悪い食生活が続いたり、ストレスを多く感じたりすると、腸内細菌のバランスが崩れてしまい、不健康のスパイラルに陥ることも……。大腸は、私たちがハッピー&健康に生活するためには欠かせない重要な存在だと理解して、腸にいい食事や生活習慣を取り入れていきたいですね。

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