「消化酵素の不思議」胃・腸で何が起きているの? 重要な酵素名と働きをチェック【親子で人体を学ぶ】

日常生活での消化酵素の役割

消化酵素とは、胃や小腸などの消化器官から分泌されるもので、食べ物を細かく分解する働きがあります。そんな消化酵素にはどんな種類があり、具体的にどこで働いていているのか、それぞれの機能を見てみましょう。

まずは基礎から!消化酵素ってなに?

そもそも消化酵素とは何なのか、その基礎から確認しましょう。

酵素の基本的な役割

酵素とは、さまざまな化学反応を進みやすくする働きをもつもので、人のからだには5000種類もの酵素が存在すると言われています。そして、一つひとつの酵素が持っている働きは異なり、食べ物を食べたときに消化したり、栄養を吸収しやすくしたりするのが、「消化酵素」と言われる酵素なのです。

酵素は主にたんぱく質でできていて、酵素がもっとも働くのは35~40℃くらいのときです。また酵素の量は、年齢とともに少なくなっていきます。

なぜ消化に酵素が必要なの?

からだに数多く存在する酵素のなかで、消化に関わっているのが消化酵素。でも、なぜ消化には酵素が必要なのでしょうか?

消化は、まず口の中で噛むことから始まります。これは歯を使って食べ物を細かい大きさに砕いています。でも、からだが食べ物から栄養をとりこむためには、炭水化物ならグルコース、脂肪なら脂肪酸とグリセロールという具合に、最小のかたちに分解しなければなりません。そんなふうに化学的に働くことが消化酵素の働きなのです。

体のどこで働いているの? 消化酵素の舞台裏

まずは基礎から!消化酵素ってなに?
消化酵素はどこで働いている?

消化酵素はどこで働いているのでしょうか?  消化のプロセスの順に、口、胃、腸のそれぞれの消化酵素について見てみましょう。

口の中で始まる消化の旅

まず食べ物を口に入れると、唾液が分泌されます。この唾液に含まれているのがアミラーゼという消化酵素。アミラーゼは、でんぷんをブドウ糖に分解する働きがあります。

胃での酵素の活躍

食べ物は口で細かく砕かれたら、次は食道を通って胃に行きます。胃で分泌されるのが、ペプシンという消化酵素です。ペプシンは胃液に含まれていて、たんぱく質の分解を担当します。

腸での最終段階

食べ物は、胃の次に十二指腸、小腸に送られていきます。十二指腸ではリパーゼが分泌され、脂肪が脂肪酸とグリセロールに分解されます。

種類たくさん! 主要な消化酵素をチェック

からだのさまざまな場所で活躍する酵素。その中で、主な消化酵素といえば、「アミラーゼ」「ペプシン」「リパーゼ」の3つがあります。それ以外にも、消化酵素を見てみましょう。

アミラーゼ:炭水化物の消化ヒーロー

アミラーゼは、唾液や膵臓で分泌される消化酵素です。アミラーゼの働きは、でんぷんを分解すること。例えば、ごはん、パンなどのでんぷんをブドウ糖にします。

ごはんやパンを口の中で長く噛み続けると、次第に甘みを感じるようになりますよね。それは、でんぷんがアミラーゼによってブドウ糖に変化しているサインです。

ペプシン:たんぱく質の分解を担当

ペプシンは胃で分泌される消化酵素です。ペプシンの働きは、たんぱく質を分解すること。たんぱく質は、ペプチド、アミノ酸などに分解されます。

たんぱく質がアミノ酸に分解されるまでの略図。胃で「ペプシン」によってポリペプチドに分解されたあと、膵臓で「トリプシン」「ペプチターゼ」によって、さらに小腸で「ジペチターゼ」によってさらに分解され最終的にアミノ酸にまで分解される。
たんぱく質がアミノ酸に分解されるまでの略図。胃で「ペプシン」によってポリペプチドに分解されたあと、十二指腸や膵臓、小腸などで分泌される「トリプシン」「ペプチターゼ」「ジペプチターゼ」などの各種消化酵素によってさらに分解され、最終的にアミノ酸となる。

もともと、たんぱく質は20種類のアミノ酸でできています。そして複数のアミノ酸同士が結合したものをペプチドといいます。胃に届いたたんぱく質は、ペプシンによってまずペプチドなどに分解され、その後の膵臓や小腸で分泌される消化酵素によって、最終的にアミノ酸という最小の形にまで分解されていきます。

リパーゼ:脂肪を分解する酵素

リパーゼは、すい臓でつくられ十二指腸で分泌される消化酵素です。

リパーゼの働きは、脂肪を分解すること。脂肪は脂肪酸とグリセロールという形に分解されます。リパーゼは膵液に含まれていて、膵液は消化液の中でもとくに重要な存在と言われています。

マルターゼ:麦芽糖をブドウ糖に分解する酵素

マルターゼは、小腸で分泌される消化酵素です。アミラーゼはでんぷんを分解する酵素ですが、そこで麦芽糖(2つのブドウ糖分子が合わさったもの)をブドウ糖に分解する働きがあります。

でんぷんは、アミラーゼとマルターゼなどの働きによって、ブドウ糖まで分解されていくのです。

日常生活での消化酵素の役割

日常生活での消化酵素の役割
日常生活での消化酵素の役割とは

消化酵素は、消化という長いプロセスで、私たちの知らないところで活躍してくれている存在です。

食事と消化酵素の関係

消化酵素がないと、私たちは消化して食べ物から栄養をとりこむことができません。だから消化酵素に効率的に働いてもらうことが大切なのです。

ただし消化酵素の働きは、食事のとり方にも影響を受けます。適切な量の食事をとればいいのですが、食べすぎは消化酵素に負担がかかってしまい、消化が不十分になる可能性があります。ふだんから、炭水化物とたんぱく質、脂質、ビタミンなどの栄養バランスのいい食事をとっていると、消化酵素が元気に働きやすい環境になります。

酵素が不足するとどうなる?

消化酵素が不足してしまうと、当然、食べ物の消化と吸収が悪くなってしまいます。

年齢を重ねると、細胞で作られる酵素の量が少なくなっていくことがわかっています。高齢になっていくほど、「脂っこいものを食べると胃がもたれやすくなる」と感じることも多いでしょう。それらは、消化酵素が少なっていることも理由のひとつです。

また消化酵素の働きが悪くなると、血中の脂肪が分解されにくくなって、血液がドロドロになって不健康になりやすいということも言えます。

消化をサポートする食品

消化酵素も含めて、からだの中で作られる酵素の量には限りがあると言われています。だから、暴飲暴食や悪い食習慣などによって消化酵素がたくさん使われすぎてしまうと、からだ全体の酵素量が減ってしまうのです。

そこでからだの中の酵素をできるだけ不足しないようにするためには、からだの消化をサポートする食品を積極的にとることも考えておくといいでしょう。

おすすめなのは、納豆、みそ、漬物などの発酵食品です。発酵食品には酵素が数多く含まれているので、発酵食品を多く食べることで体内の酵素の量を増やすことが期待できるのです。また、果物、野菜などにも酵素が多く含まれています。

さまざまな発酵食品。多くの発酵食品には腸内環境を整える働きや、代謝を促進する働きがあるといわれている

もっと知りたい! 消化酵素のおもしろ情報

最後に、消化酵素のおもしろい情報もご紹介しましょう。

動物と人間の消化酵素の違い

人間の消化には、必要不可欠の消化酵素。でも動物の場合は、人間とは少し異なります。

例えば、犬の場合は、唾液には消化酵素が含まれず、腸で栄養を吸収します。ただ、人間のように長い腸を持っているわけではないので、繊維質の多い食事をとると十分に吸収されないことなどがあります。

科学の最先端!消化酵素の研究

からだの中に数多くある消化酵素は、まだわかっていないことも多くあります。最新の研究では、たんぱく質を分解するトリプシンという消化酵素が腸内細菌で分解されることと、その細菌の特定もされました。まだまだ謎の深い消化酵素の世界では、日々研究が行われているのです。

酵素がないと人間は生きていけない!

私たちのからだの中で、さまざまな働きを持って活躍してくれている酵素の存在。アミラーゼ、ペプシン、リパーゼなどの消化酵素は、人が食べ物を摂取して生きていくうえで欠かせないものなのです。

毎日、必要な栄養をとりこんで元気に暮らすためには、酵素が元気に働けるようにすることも大切。そんなことを考えて、健康的な生活を送れるよう心がけていきましょう。

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