「新そば」が食べられる季節はいつ? 旬は年二回、新そばにまつわるあれこれ

新そばとは、そばの実を収穫してから1~2カ月程度で提供されるその年の新鮮なそばのことです。新そばの旬は秋とされていましたが、近年は夏にも新そばを味わえるようになりました。夏そば・秋そばの特徴や、新そばをおいしく食べるポイントを見ていきましょう。

新そばって何?旬の季節はいつ?

「新そばの季節だね」などと耳にすることもあると思いますが、新そばが何を指すのか、知らない人は意外と多いのではないでしょうか? まずは新そばの定義や、おいしく食べられる季節を見ていきましょう。

新そばの定義

新そばとは、収穫してからおよそ1~2カ月のそばの実で作られたそばを指しています。収穫されたばかりのそばの実をすぐに加工し、そばに仕上げているのが特徴です。

そばの実は湿度や日光によって劣化が進みやすく、時間が経つにつれて風味が落ちる傾向があります。新鮮なまま加工された新そばは、そばならではの風味が感じられるのがメリットです。

フレッシュな実から作られた新そばだからこそ、特別な味と香りが楽しめます。旬のおいしさが味わえるのはもちろん、美しい色味を目で楽しめるのも新そばの魅力でしょう。

そばの実

一般的な旬は「秋」、現在は「夏」も

そばの実は10~11月頃に収穫されるケースが多いため、新そばは一般に秋が旬の食べ物と認識されています。ただし、地域によっては栽培時期が異なることも覚えておきましょう。

中には、6~8月にかけて収穫されるケースもあります。夏に収穫するものは春の間に種をまき、秋に収穫するものは夏に種まきを行います。

時期によって新そばを区別するため、それぞれ夏そば・秋そばと呼ばれ、年に二度にわたって楽しめるのがポイントです。他にも「夏または秋の新そば」を略して夏新・秋新と呼ぶこともあります。

新そばの収穫が複数回あるのはなぜ?

そばは秋の食べ物という印象が強いですが、なぜ夏にも旬を迎えるのでしょうか。そばという植物の特徴や、育て方について解説します。

成長の速さと需要による面も

そばは成長するスピードが速く、少し成長した「そばもやし」はそのまま生でも食べられます。種をまくとすぐに芽が出てぐんぐん成長するため、収穫にかかる時間が比較的短い作物です。

また、そばの需要は夏の時期にも高まることも挙げられます。加えて春に種をまくことで、夏から秋にかけて台風の時期を避けられることも、そばの実を夏に収穫するメリットです。

そばが春から夏にかけて育てられる背景には、成長のスピードや需要の高さなどさまざまな理由があるのです。さらに、地域によって気候が異なるのも、収穫時期が異なる理由といえます。

そば畑。白い花が美しい。

古くは「救荒作物」でもあった

そばはどのような土壌でも育つことから、古くから救荒作物して育てられました。すぐに収穫できるそばは非常時にも活躍し、米が育たないときの貴重な栄養源として人々を救ったのです。

古くは奈良時代からそばは育てられていたといいますが、16世紀頃までは現在とは形状が異なりました。「そばがき」と呼び、塊のまま餅のように食べることが多く、まだ麺のように細長い形ではなかったのです。

大正時代の文書に「そば切り」という記載があることから、この時期には麺状のそばがあったと考えられます。そばは非常食としても重要で、古くから食べられてきた食物だったのです。

新そばはおいしい? 夏・秋それぞれの特徴も

味や香りがよいといわれる新そばは、収穫時期によって異なる特徴を持っています。夏そば・秋そばのそれぞれの魅力をチェックしましょう。

江戸時代から愛されてきた「秋そば」

夏に新そばを食べられるようになった現在でも、新そばは秋のものと考える人は数多く存在します。古くから親しまれてきた秋そばは、そばならではの風味を堪能できるのが特徴です。

秋そばは、夏に種をまいて育ったそばの実から作られています。太陽の光をしっかり浴びたそばの実は、豊かな香りと風味を感じさせる新そばになるのです。

秋そばをつゆではなく水にくぐらせて食べる「水そば」を提供する店も存在します。新そばの持つ風味や味わいをダイレクトに感じたいなら、秋そばを試してみましょう。

打ちたて、切りたてのそば。

品種改良でおいしくなった「夏そば」

夏の時期に収穫される実を使った夏そばは、秋そばと遜色のないおいしさを楽しめます。さっぱりとした味わいが特徴で、暑い時期でも食べやすいのがメリットです。

昔は秋そばが浸透していたため、夏そばはあまり味がよくないというイメージを持たれていました。しかし栽培技術が発達したこともあり、夏そばも旬の食べ物として認められてきたのです。

夏そばの麺は、秋そばに比べて緑がかった色味をしています。あっさりした風味はもちろん、美しい色合いを見て楽しめるのが夏そばの魅力です。

そば粉の割合にも注目

そばには「二八そば」や「十割そば」などの種類がありますが、これらの数字は粉の配合率を表しています。そばにはつなぎとして小麦粉が使われており、小麦粉が2割入ったものが二八そばです。

つなぎを使わず、そば粉だけで作ったものを十割そばといいます。そば粉のざらざらとした食感や、そばの持つ風味を強く感じられるのが十割そばの特徴です。

小麦粉を使った二八そばは、十割そばよりもなめらかな食感でコシがあります。のどごしがよく、十割そばよりも長持ちするのが二八そばのメリットです。

新そばのおいしい食べ方は?

新そばのおいしさを味わいたいなら、食べ方にもこだわってみましょう。おすすめのメニューや、そばをすすって食べる理由について解説します。

シンプルな「ざるそば」がおすすめ

旬の時期にだけ食べられる新そばの魅力は、そばの持つ味や香りを堪能できるところです。そのため新そばを食べるなら、味がはっきりと分かりやすい「ざるそば」を選びましょう。

ねぎなどの薬味を少なめにすることで、そばの味だけをシンプルに楽しめます。つゆではなく塩を付けて食べるのも、そばが持つうま味を味わう方法の一つです。

また、つゆを付ける際には、麺全体を入れないように注意しましょう。つゆに浸すのは麺の下から1/3程度にすると、新そば本来の風味をしっかりと感じられます。

そばをすすって食べる理由

そばなどの麺類を食べるときに、麺をすすって食べるのは日本独自の文化とされています。音を立てて食べるのは下品だという考え方もありますが、実はすすって食べるメリットもあるようです。

麺をすする食べ方は、香りを強く感じられる効果があるといわれています。細い麺と一緒に空気を吸い込むことで、そばの香りや風味をより豊かに味わえるという理由です。

さらに江戸時代の庶民にとっては、麺をすするのが粋だったとする説もあります。せっかちな江戸っ子がそばを急いで食べたことから、すするのが伝統的な食べ方になったというのです。

新そばを楽しめるイベントはある?

日本三大そばのひとつ、戸隠そば

新そばの時期になると、日本各地でそばにまつわるイベントが開催されます。秋そばの時期に向けて、代表的なイベントをチェックしましょう。

各地で催される「新そば祭り」

諸説ありますが、長野県の戸隠そばと島根県の出雲そばは、岩手県のわんこそばと並んで日本三大そばに数えられます。これらのそばの産地でも、秋が近付くと新そば祭りが行われています。

「戸隠そば祭り」では、その年にできた新そばを神社に献納するのが特徴です。その他の地域でも祭りは開催され、「越前おおの新そばまつり」ではおろしそばやかけそばなどの豊富なメニューを楽しめます。新そばの食べ比べをしたい人におすすめなのは、「北海道そばフェス」です。北海道各地で作られた新そばが食べ比べられるだけでなく、そば以外のグルメも堪能できます。

新そばと普段のそばを食べ比べてみよう

そばの実を収穫してすぐに作られる新そばは、そば本来の豊かな風味が味わえます。味や香りに優れているだけでなく、美しい麺の色味も楽しめるのが魅力です。

新そばの旬は長年秋だと思われていましたが、品種改良などにより夏でもおいしいそばを収穫できるようになりました。春に種をまいて育てることで、台風の時期を避けられるのもメリットです。

あえてシンプルな食べ方を選ぶことで、新そば本来のおいしさを感じられます。普段食べているそばと比較しながら、新そばならではの味わいを堪能してみましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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