「鼓膜」のひみつ! 耳の奥のどこにあるの?破れたらどうなる?【親子で人体を学ぶ】

耳の中にある鼓膜は、どのような役割を果たしているのか知っていますか。この記事では鼓膜について取り上げ、役割や、音が伝わるしくみを解説していきます。また、鼓膜や耳を健康に保つ秘訣もご紹介します。

鼓膜とは?

まずは、鼓膜の基本情報を見ていきましょう。

耳のどの部分にあるの?

鼓膜は、耳の穴の奥にあります。外耳道の最も奥で、耳の穴の入り口からおよそ3cm奥の部分に鼓膜が張っています。

鼓膜の大きさや形

鼓膜の大きさは個人差がありますが、およそ8×10mmです。形は楕円形をしていて、厚さは0.1mmほどとなっています。

鼓膜の主な働き

鼓膜には、どのような働きがあるのでしょうか。主な働きを解説していきましょう。

音の伝達:振動のキャッチャー

耳には「耳介(じかい)」と呼ばれる部分があります。これは、目で見て耳と認識できる部分のことです。ここでは、空気の振動が集められます。鼓膜は空気の振動を捉え、内耳に伝える役割を担っています。

中耳との連携:音の伝達の仲間たち

鼓膜は耳のそのほかの部分と連携し、音を伝達しています。そのために重要な耳の部分と役割を説明していきます。

●外耳:空気の振動を集める
●鼓膜:空気の振動を内耳に伝える
●耳小骨(じしょうこつ):空気の振動を調整する(おもに増幅する)
●蝸牛のなかにあるコルチ器:空気の振動を神経の電気信号に変える
●蝸牛のなかにある基底膜:音の高い・低い、大きい・小さいなどを読み取る

音が伝わる仕組み

音は空気の振動です。この空気の振動を耳介が集め、外耳道を通り鼓膜、耳小骨に伝わります。耳小骨で空気の振動の大きさを調整し、蝸牛で神経の電気信号に変えられ、聴神経(ちょうしんけい)を通って大脳に届くのです。

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鼓膜の驚くべき構造

鼓膜はどのような構造をしているのか、説明していきます。

3層構造の秘密

鼓膜は3層で構成されています。一番外側(外耳道側)の層を「皮膚層」、内側(中耳側)を「粘膜層」、その中間を「繊維層」といいます。

この3つの層で、外耳と中耳を隔てているのです。

なぜ半透明? 鼓膜の特徴

鼓膜は、半透明な色をしているのが特徴です。皮膚層は皮膚からできており、粘膜層は内耳の粘膜の続きとなっています。

また弾力があり、血管も神経も通っていて、痛覚が鋭いのも特徴です。

なぜ耳が痛くなる? 鼓膜のトラブル

耳が痛くなる理由のひとつに、鼓膜のトラブルがあります。どのようなトラブルにみまわれやすいのか見ていきましょう。

耳の感染症と鼓膜

耳の代表的な病気に中耳炎があります。中耳炎とは、鼓膜の後ろ部分にある中耳が炎症を起こすことです。

急性の中耳炎の原因は、細菌やウイルスです。これらが中耳と喉をつなぐ耳管(じかん)という器官を通り、中耳に入り込むことで発症します。炎症がひどくなると膿がたまりはじめ、量が増えて鼓膜を破ることがあるため注意が必要です。

鼓膜の敵は外からの物体や気圧

鼓膜は外からの物体によって傷ついたり、穴が空いたりすることがあります。

よくあるのが綿棒や耳かきによるものや、衝撃が加わった場合などです。そのほか、昆虫や火花が耳の中に入り込んだりした場合も傷つくことがあります。

また、飛行機やダイビングなどの気圧で鼓膜が破れることがあります。

鼓膜が破れるとどうなる?

鼓膜が破れると、音が聞こえなくなると思われがちです。しかし鼓膜は再生能力が高いため、小さい穴なら1週間程度で元に戻ります。

ただし、鼓膜が破れると感染症を引き起こすこともあります。鼓膜が破れた、鼓膜を傷つけてしまったと感じたら、自然治癒しない場合もあるため耳鼻科を受診するようにしましょう。

鼓膜が破れているかどうかを確認するには「耳鏡(じきょう)検査」を行います。耳鏡検査とは、専用の器具を使って耳の中の状態を確かめる検査です。鼓膜の穴が小さい場合は耳鏡検査では確認できないことがあるため、顕微鏡による精密な検査を行います。

鼓膜を守るための日常のポイント

鼓膜は音を聞くための大切な役割を担っている器官です。ここでは、鼓膜をふくめた耳の健康を保つ秘訣を解説していきます。

イヤホンやヘッドホンの適切な使用方法

イヤホンやヘッドホンを使って音を聞くときには、長時間、大音量で聞かないようにしましょう。大音量で音を聞き続けると、音を伝える役目の有毛細胞が徐々に壊れ、それによって難聴になる恐れがあります。この難聴は「ヘッドホン難聴」と呼ばれる病気で、少しずつ進行していくため病気に気づきにくいのです。

大きすぎる音量で聞かない、イヤホンやヘッドホンを長時間連続して使わないなどして、適度にイヤホンやヘッドホンと付き合いましょう。

しっかり耳掃除!でも過度にはしない

耳掃除の正しいやり方をマスターしましょう。

●耳掃除の道具

まず、耳掃除に使う道具を準備します。耳掃除には、耳かきや綿棒を使うようにしてください。決して棒や爪楊枝、ペン先などで耳掃除をしないようにしましょう。これらの物を使って耳掃除をすると、外耳道や鼓膜を傷つけることがあります。

耳かきは、耳掃除が終わったらウェットティッシュで拭くなどして、清潔にしておくことも大切です。保管する場所は、薬箱の中がよいでしょう。ペン立てに挿して置くと、雑菌が繁殖してしまう可能性があるのでやめましょう。

●耳掃除の正しいやり方

耳掃除を自分で行うときには、綿棒を使うことをおすすめします。綿棒を耳の穴に入れる深さは、1cm程度にとどめてください。そして、耳の穴の側面を綿棒でやさしく拭うようにしましょう。奥まで掃除しようとすると、耳あかを奥に押し込んでしまったり、外耳道や鼓膜を傷つけたりすることがあるため注意してください。

他人の耳掃除をするときは、耳を後ろに引っ張り、上に持ち上げます。そうすると耳の穴が真っすぐになって奥まで見やすくなります。ただし耳かきや綿棒を耳の穴に入れる深さは1cm程度にとどめ、取れる範囲の耳あかだけ取り除くようにしてください。

耳掃除はきれいにしすぎないことが大切です

耳あかには皮膚を保護したり、虫の侵入を防いだりする役割があります。よって、掃除し過ぎないことが大切です。

●耳掃除の頻度

耳掃除の頻度は、耳あかのタイプで異なります。

耳あかが乾いたタイプの人は、ある程度自然に排出されるので頻繁に耳掃除をする必要はありません。一方、耳あかが湿ったタイプの人や、耳垢腺の分泌が多い人の場合は、定期的に耳掃除を行います。

外耳道の皮膚は約2週間で再生するため、その期間に合わせ、2週間から1ヶ月に1回程度で耳掃除を行うことで問題ありません。

耳の健康を保つ食生活と生活習慣

耳を健康に保つには、食生活と生活習慣にも気を配りましょう。

●食生活

耳の健康に役立つ栄養素には、ビタミンB12や葉酸、ビタミンC、カルシウムなどがあります。

ビタミンB12は、神経および血液細胞を健康に保つ役割がある栄養素です。あさり、シジミ、カキ、しらす、アジ、サバ、レバー、焼きのりなどに含まれています。

葉酸は、血流をよくしてくれる栄養素です。鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ホウレン草、ブロッコリー、枝豆などに含まれています。

ビタミンCは、ストレスへの抵抗力を強め、抗酸化作用がある栄養素です。パプリカ、菜の花、ゴーヤー、ブロッコリー、キウイ、イチゴなどにふくまれています。

カルシウムは、耳にある骨の構造を維持します。牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品、骨ごと食べられる小魚、豆腐や納豆などの大豆製品、野菜類や海藻などを積極的に摂りましょう。

●生活習慣

生活のなかでは、耳に負担がかかるような以下の行動を控えましょう。

・イヤホンやヘッドホンで大音量の音を聞く
・音が大きい空間に長時間身を置く
・耳掃除を頻繁にする
・鼻を強くかむ、頻繁に咳をする

音をキャッチする「鼓膜」を大切に

鼓膜は、空気の振動をキャッチして内耳に伝える重要な役割を担う器官です。鼓膜や耳を健康にキープするには、耳を酷使しない、耳掃除をやりすぎないように注意しましょう。

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