食べて良し 釣って良し「サヨリ」の下処理と食べ方。腹が黒い、エラに虫がいる…トリビアも紹介

細く流線型の体をもつサヨリは、脂肪の少ない淡白な味の魚です。干し物なら開きの他、丸干しの場合もあり、その美しい姿も見事。海の中で群れを組み、水面下を矢のように走る流麗な姿は「魚界の麗人」とも呼ばれます。そんなサヨリについて、おいしく食べる方法を詳しくみていきましょう。

細長い魚は脂質が多い場合が多いものですが、サヨリは淡白で上品な味わいの魚です。良質なたんぱく質を多く含み、低脂肪で低カロリー。独特の風味と旨味が味わえます。

お刺し身、酢締めの他、皮ごと干した一夜干も人気です。

サヨリ

下あごが極端に細く突き出ており、その下側は美しい朱色に染まっています。全長20〜30cmで、同じダツ目のサンマと同様に細長い体をもつのがサヨリです。その特徴をまとめました。

腹黒美人

透明感のある美しい銀色の皮が目を惹きますが、じつは、お腹を開くと真っ黒い色が見られることから「腹黒美人」なんて呼び名のある魚。「見かけによらず、腹黒い人」の代名詞なんです。

ただし、これは半透明の筋肉をもつ魚にはよく見られる特徴で、腹腔内に光が透過するのを防ぐ役目があるといわれています。

お子さんに人気の釣り

アジなどと並び、堤防から釣れる魚の代表で、冬〜春の寒い時期がその季節です。

湾の奥や河口域など、釣りやすい場所から釣ることができ、表層を泳ぐため、ウキ下の長さは20〜40cm程度が目安です。微細なアタリに合わせる釣りが、お子さんにも楽しめます。

サヨリは海面スレスレに群れを成して泳ぎながら、動物性のプランクトンや、海藻をエサにしています。潮にのって群れで回遊するので、何十匹釣れることも夢ではありません。

撒き餌用のカゴをつけた仕掛けや、イワシミンチなどを海水で薄め、足元へ撒いて釣る「のべ竿釣り」など、お子さんが喜ぶ仕掛けが多い特徴も。

産卵期は4〜7月ですが、10月には18cm程度に成長し、丸一年で25cm程度になります。寿命は2年で、旬は春ですが秋もおいしい季節です。

アニキサス他、寄生虫について

全長2〜3cmの白く細長い糸のような寄生虫アニキサスは、サヨリにも見られることがあります。目視でも確認できますし、新鮮なうちに口にすることで防ぐことができます。

また、サヨリをさばく最中に、エラから白いダンゴムシのような虫が出てくることが、かなりの確率であります。これはサヨリヤドリムシと呼ばれる寄生虫で、人に害を与えることはありません。間違って食べてしまっても、大丈夫なんです。両側のエラに、雌雄1匹ずつ寄生する性質があり、お子さんにとっては、これも興味の対象です。

サヨリのさばき方

新鮮なサヨリが手に入ったら、刺し身にして楽しみましょう。

腹開き

サヨリの腹開きは、一般的な魚のさばき方と同様です。鱗をひいて、内蔵を取り出すのが基本。内蔵は色が黒いので、手でしごきながらきれいに洗ってください。

【1】包丁の刃先を使って鱗をこすり落とします。

【2】腹びれをつまみ、引き抜きます。

または、胸びれの脇から頭部を切り落とせば、エラの中に潜む寄生虫ごと取り除くことができます。嫌でなければ覗き見ることで確認でき、指で取り除くこともできます。

【3】肛門から刃先を入れて、腹を切り開き、中身を取り出します。

【4】背骨に沿って血合い部分に切れ込みを入れてください。流水に当てながら、血合いを洗い流します。インクを流すように、黒い腹膜が流れていきます。

サヨリは身が細いので、腹開き、または二枚におろすのが一般的です。皮に旨味があるので、はずさずに食します。

二枚開き

骨をはずす際は、背骨の下に包丁を入れ、浮いた骨をつまみながら、身と背骨を切り離してください。包丁を滑らせるように動かすと、上手にはずれます。

二枚におろすなら、あとは身を切り離せば出来上がりです。

サヨリの食べ方、色々

サヨリの食べ方について、まとめました。入手しやすい焼きサヨリの通販も一緒にご覧ください。

大きさによる食べ方

大きなものは刺し身や寿司ネタにすると、特有の香りを楽しめます。白身魚というよりも、青魚に近い風味があり、生姜しょうゆで食べるのがお好きな方も。

体が小さい場合は、腹開きにして天ぷらや、塩焼きにして食べます。食感がフワリとしていて、身の甘さが味わえます。

より小さいものなら、丸ごと揚げるなどして調理することも。

地域別の食べ方

香川県では、糸造りにしたサヨリを、薬味と供にご飯にのせて、お茶漬けにします。

また、関東で好まれるのは酢締めです。適度に身がしまり、日持ちも長くなるので実用面でもおすすめの食べ方です。

その他、オリーブ油とビネガーでマリネにするのもおいしいです。

焼きサヨリ

おつまみにはもちろんのこと、おやつにも最適な焼きサヨリが、旬に関わらず通販で手に入ります。甘みがあって、さっぱりとした味。

サヨリを漢字で書くと

細く光る美しい身を持つ「サヨリ」には、呼び名にまつわる興味深いエピソードも多くあります。

名前の由来

サヨリの名前は、岸辺に近い場所に寄る習性から「沢に寄る魚」と名付けられたとされます。また、細い鱗を持つことから「細鱗(さいり)」と呼んだという説もあります。いずれも、群集する性質や、細い体つきからきています。

同じダツ目のサンマも「サヨリ」と呼ばれる場合がありますが、サヨリと偽って売られることもあったそうなんです。

また、日本各地で生息するので、地方での呼び名が多彩です。数多くの呼び名があり、中でも30cmを超える大物は「カンヌキ」と呼ばれます。

漢字で書くと

漢字では「細魚」「針魚」と表記しますが、地方名では「クチナガ」「クスビ」「スズ」のように呼ばれることも。

中国では「姜公魚」と書きますが、これは姜(きょう)という人が、サヨリの長いくちばしを釣り針に用いたという伝説にちなんでつけられた由来があります。ちなみに日本での「公魚」は、「ワカサギ」と読みます。

特性が面白い魚、サヨリ

キラキラと光る皮目が美しいサヨリを、旬の時期に見かけたらぜひ味わってみてください。淡白ではありますが、旨味があってファンの多い魚です。

さっぱりとした酢締めや、刺し身、焼いたり、天ぷらにしてもおいしいですよ。ぜひ、お腹に秘めた真っ黒な色や、エラに潜む海虫も観察しながら特性を楽しんでください。

こちらの記事もおすすめ

小2男子が釣りに挑戦! 釣りは親子で「成功体験」を得られる最高のアクティビティ
初心者は「管理釣り場」で釣りに挑戦! 日本は様々な釣りが楽しめることをご存じですか? 海、川、湖など地域や場所によって、釣れる魚も多...

構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)

編集部おすすめ

関連記事