子どもが人前で話す訓練には「1分間スピーチ」が有効!「話せない子」「無口な子」には成功体験を【元小学校教師が指南】

「自分の意見をしっかり持ち、それを人に伝えられる子に」。今の時代そう願うパパママは多いはず。しかし、人前で話す行為は本人の性格や経験値もあり、なかなか難しいものです。元小学校教諭で、自身も話し方講座に通って「スピーチ」のコツを学んだ教育ライターが指南する、1分間スピーチのコツとは。

「人前で話す」は訓練で上達する

「皆と一緒にしていれば安心」と考える子どもは多いでしょう。しかしながら、学校で皆とは異なる自分の考えやを意見持ち主張できる子は、重宝されるかもしれません。異なった意見から、新しいことを創造するヒントを出してくれるかもしれないからです。「皆と同じ意見」では、進歩がありません。

大人しく無口だった子ども時代を学校で過ごしてきた私ですが、高校時代と、そして教員になってからも「話し方」の講座に通い勉強してきました。500人程度の前で3分間スピーチを何度か経験し、人前でも話せるようになりました。

小学校の先生になってからは、子どもたちにも朝の会などでスピーチをしてもらったこともあります。

人前で話せなかった私が話せるようになったこと、子どもにもスピーチをさせてきたことから、スピーチをするコツをお伝え致します。

学校では「自分の考えや意見」を話す機会が多い

小学校では、ほぼ一日「話す」機会があります。朝の会、国語などの授業時間、体育などの技能教科の授業でも自分の意見を言うこともあります。学級会や委員会、クラブなどでもあります。

休み時間、給食の時間もそうです。昔は、給食中「黙食」と言って「黙って食べなさい」と指導する先生もいました。

最近では、コロナ禍で「黙食」を行う学校が多くありました。また以前からコロナ禍であるなしに関わらず「黙食」させていた先生もいたようです。しかし、今では、皆と一緒にワイワイ話しながら、にぎやかに食べる様子も戻ってきました。ひと言も発しないで、学校生活を送るほうが不自然なくらいです。

人前で話せない子に対してどうすれば良いか

学校生活の中でひと言も話さないのは不自然だと書きましたが、子どもによっては一日、ひと言も話さないで過ごす子もいます。昔の私のようにです。

自分で考えることはできる、自分の意見はきちんと持っているけれども、話せないという子もいます。また、間違えることを恐れて、発言できない子もいます。では、話すことができない子にはどのような指導、声掛けをすれば良いのでしょうか。

「話せた」という成功体験がカギ

私が小学4年生のときのこと。算数の授業前に先生に「発言してくれたらうれしいな」と声をかけられました。その先生を好きだったこともあり、頑張って発言してみようと思いました。

それは「小数点のあるかけ算の筆算では、小数点同士をそろえて計算しないといけないのか、もし、そろえなくていいのであれば小数点をどこにつければいいのか」という授業でした。

つまり、小数点のあるたし算の筆算では、小数点同士をそろえて計算しますが、たし算と同じように、小数点のあるかけ算の筆算でも小数点はそろえないといけないのかという問題でした。

子どもが説明するには難しい問題でしたが、自分なりに考え、何度か思い切って発言しました。周りの子たちは、私が発言したことに対して驚いたのではないかと思いますが、気になりませんでした。話せない、話さない子という周りの意識が変わったと思えたので、むしろ、話しやすくなりました。

授業後に「よく発言してくれたね」と先生に褒められたことがうれしく、また発言しようと思いました。

私自身のこんな体験から、話せない、話さない子には「話すことの成功体験」を積ませることが大切だと気づきました。

「話す」きっかけを周囲が作る

そうは言っても話をさせるきっかけを作ることが難しいかもしれません。

私の場合、学校で好きだった先生から声をかけてもらえたことがきかっけです。

家庭での場合は、『話せない子・話さない子の指導 増補版』(明治図書・野口芳宏著によると、「はい」「いいえ」で答えられないことを子どもに聞くのがいいと言われています。

「お父さんは元気?」と聞いたのでは「はい」と答えて話が止まってしまう。「お父さんは何時ごろ休むの」「それまではどんなことをして過ごすの」「どんなことがお好きなの」というような尋ね方をすれば子どもは説明せざるを得ない。(中略)話そうとすることの障害になるような緊張や強制をなるべく取り除いてやるとともに、自然に楽しく話せる場面に引きこむようにすることが大切である。

「はい」「いいえ」ではない言葉で答えてくれるまでに時間はかかるかもしれませんが、長い目で待ってあげましょう。少しでも話そうとする雰囲気が見られたら、言葉を発していなくても、話そうとしたことを褒めてあげるのもいいでしょう。

自分の「考え・意見」を持てる子にするには、どうすれば良いのか

 

自分の「考え・意見」を話すには、当然ですが「自分の考え・意見」がなければ話せません。また、「自分の考えや意見」は持ってはいるけど、短くしか話せない子もいます。

子どもに、「自分の考えや意見」を持たせたり、自分の気持ちや感想などを相手に伝わるように話させたりするには、どうすれば良いのでしょうか。

次の3つが大切です。

1つ目は、普段から「観察力」をつけておくこと。

2つめ目は、普段から「なぜ・どうして」と疑問を持つこと。

3つ目は、その出来事に対して、自分なら「こう思う・こうする」と普段から考えること

この3つは、作文を書くときと同じです。以下の記事に詳しく書いてあります。あわせてお読みいただればと思います。

▼参考記事はこちら

これなら書ける! 元小学校国語教師が教える「遠足・学習発表会の作文」の書き方。基本は「材料集め」→「構成」→「書く」の3ステップ。
国語教師が「作文」の書き方をレクチャー という私も、小学生のときは「作文」が嫌いでした。 「そして遊びました」「それから寝ました」と...

人前で話すときには「要点を書いたメモ」を用意

短くしか話せない子に対しては、スピーチなどする場合、自分の考えを箇条書きにしたメモを持たせておくのも良いでしょう。本番のときに、原稿を見てもいいのであれば、メモを見て話すこともできます。

全文を書いてしまうとどこを見ていいのか分からなくなります。ポイントがすぐ目につくように、全文でなく、箇条書きにしておきます。箇条書きにする作業をしている間に、すでに、話す内容が頭の中に入り、長く話せるようになることもあるかもしれません。

自分の「考え・意見」が相手に伝わる「話し方」は?

小学生くらいの子どもの場合には、1分間のスピーチができればじゅうぶんでしょう。そこで、「1分間スピーチの作り方・仕方」を紹介します。

3つの構成を意識する

1分間スピーチでは、「はじめ」「中」「おわり」の構成にすると作りやすいです。順序立てて作ることができ、話しやすくもなります。

この構成(「はじめ」「中」「おわり」)の「中」に自分の体験談(エピソード)を入れ、そのことから分かったこと、気付いたこと思ったことを話せば「自分の考え・意見」も、自然と話せていることになります。

1分間でも人前で話す前に家で練習させておくことが大切です。1分間だから、練習しなくても話せると思うのは間違いです。3分もあれば、多少余計なことや筋道から離れても時間があるので何とかなるでしょうが、1分ではそうはいきません。余計な言葉を入れられないからです。

「えー」「あのー」などという言葉は時間の無駄になります。削らないといけません。すぐ削れるように思えますが、実際には、よほど意識して練習しないとできません。

声の量も大事なポイント

何とか話せるようにはなったけれども、声が小さい」「良く聞こえない子もいます。そんな子には遠い場所から話させてみるのも良いでしょう。学校では、教室の後ろから前の黒板などに向かって話させたり、体育館のステージに向かって一番遠い所から話させたりします。私は「黒板に穴をあけるつもりで言ってごらん」などと、よく声をかけていました。

家の中では、遠い所に向かって声を出させるのは難しいでしょう。私が教室で子どもに言っていたように、「天井に穴をあけるつもりで言ってごらん」などと言ってあげるのがいいかもしれません。聞こえなくても、大きな声を出そうとしたら、褒めてあげましょう。

*  *  *

話せない子が話せるようになる、ましてや大きな声を出せるようになるには、ある程度の時間が必要です。子どもを信じて、気長に育てていきましょう。

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文/須貝 誠(すがいまこと)

塾国語科講師。教育・旅行ライター。現代ビジネス・マネー、コエテコサイト・ソクラテスのたまご、子ども学びラボに執筆あり。著者に「若手教師の働き方」(東洋館出版)がある。教育以外では年間100公演観劇したこともある劇団四季鑑賞マニア。斎藤一人の愛弟子でもある。

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