【子供の教育費シミュレーション】貯金はいくら必要?大学まで進学した場合の総額は?幼稚園・小学校・中学・高校・大学進学でかかるお金のまとめ

「教育にはお金がかかる」、子どもを育てている人であれば、誰もが共感できる悩みですよね。ただ、この「お金がかかる」という言葉。一体、幾ら必要なのか、正確にご存じでしょうか? なんだか漠然と「すごくかかる」と感じて、不安になっている人も多いはずです。そこで今回は公的な機関が発表する情報を基に、子どもの教育費についてまとめました。

教育費はいくら貯める必要がある?

教育にはどのくらいのお金が必要なのかを考える前に、まず「教育費」とは何を意味するのか、この定義からスタートしましょう。
今回の執筆にあたって主に参考にする情報の1つは、文部科学省が発表した『平成28年度子供の学習費調査』になります。全国に暮らす保護者に対して、学校教育や学校外活動に費やしたお金を聞いた調査です。この中では「教育費」を次の3つに分けています。

学校教育費(子どもに学校教育を受けさせるために使った費用の総額)
学校給食費(子どもの学校給食に使った費用の総額)
学校外活動費(子どもに学校外で習い事などの活動をさせるために使った費用の総額)

この分類を参考に、この記事では「教育費=学校教育費+学校給食費+学校外活動費」と定義します。こうした「教育費」が子ども1人当たり、どのくらい必要なのかを、まず大まかにまとめてみましょう。

子どもを大学まで行かせたときの教育費は?

子どもの大学進学率が、高まっています。文部科学省の『学校基本調査(平成30年度)』を見ると、全国平均で高校卒業後に大学(学部)に行く人の割合は49.6%。それでも裏を返せば、半数近くは大学に行きません。そこで、まずは高校卒業までに必要な子どもの「教育費」をまとめます。

幼稚園から高校まで全て公立⇒5,400,716円(公→公→公→公)
高校だけ私立⇒7,159,185円(公→公→公→私)
幼稚園から高校まで全て私立⇒17,699,339円(私→私→私→私)

全て公立で高校まで卒業させた場合と、全て私立で高校まで卒業させた場合では、子ども1人当たり1千万円以上の違いが出てくるのですね。

ではこの金額に、大学卒業までの「教育費」をプラスしたら、どの程度の額になるのでしょうか。

大学の場合、「教育費」は自宅から通わせるか、一人暮らしをさせるかといった問題が出てきます。そこで大学時代の「教育費」とは、学校教育費(子どもに大学での教育を受けさせるための費用総額)と一人暮らしをさせる費用の合計を「教育費」とします。

参考とする情報は、公益財団法人生命保険文化センターの調査になります。同センターは公平な立場から、生活設計と生命保険に関する情報を提供して40年以上の歴史を誇る組織になります。生命保険文化センターによれば、「教育費」は次の通りでした。

4年間
国公立 私立
(文系)
自宅通い 524.3万円 668.4万円
一人暮らし 812.3万円 933.2万円
4年間
(医歯系は6年間)
私立
(理系)
私立
(医歯系)
自宅通い 809.1万円 2579.5万円
一人暮らし 1073.9万円 2956.8万円

この金額は4年間(医歯系は6年間)の合計です。
大学に進学させる場合は、先ほど紹介した高校までの「教育費」に加えて、1から4のいずれかの教育費を足してみてください。子ども1人が大学を卒業するまでのお金の総額が分かります。

教育費はいくら貯めればいい?

ここまでで、「教育費」への大まかなイメージがついたと思います。
幼稚園から大学まで、全て国公立で自宅から通わせる場合は、子ども1人当たり10,643,716円の「教育費」になります。幼稚園から大学まで私立に通わせ、さらに6年間一人暮らしで私立の医学部や歯学部に通わせる場合は、子ども1人当たり47,267,339円が必要となります。

子ども2人に同じコースを歩ませる場合、前者は21,287,432円、後者は94,534,678円(つまり1億円近く)の「教育費」となります。将来的な収入の額をイメージしながら、現実的な範囲で子どもの「教育費」を考えます。

進路ごとにかかる教育費をシミュレーションすると?

先ほどは、幼稚園から高校までの「教育費」、さらには大学まで進んだ場合の「教育費」をまとめました。では、幼稚園、小学校、中学校、高校などステージ別に「教育費」を細かく見ると、どの程度になるのでしょうか。

幼稚園編

最初に、幼稚園時代の「教育費」を見ていきましょう。
先ほど参考にした文部科学省の『平成28年度子供の学習費調査』を再びチェックしてみます。同じ幼稚園でも公立と私立では「教育費」は大きく異なっています。それぞれ、まとめてみました。

公立幼稚園 私立幼稚園
学校教育費 12.1万円 31.9万円
学校給食費 2.0万円 3.0万円
学校外活動費 9.3万円 13.4万円
1年間 23.4万円 48.2万円
3年間 70.2万円 144.6万円

小学校編

次は、小学校になります。こちらも私立と公立で大きく額が変わってきます。

公立小学校 私立小学校
学校教育費 6.0万円 87.0万円
学校給食費 4.4万円 4.5万円
学校外活動費 21.8万円 61.3万円
1年間 32.2万円 152.8万円
6年間 193.2万円 916.8万円

私立の小学校に入ると、私立と公立の「教育費」の違いは、5倍近くになってしまうようです。

中学校編

中学校も小学校と同じく、私立と公立でかなり「教育費」に開きが出ています。

公立中学校 私立中学校
学校教育費 13.4万円 99.7万円
学校給食費 4.4万円 0.9万円
学校外活動費 30.1万円 32.1万円
1年間 47.9万円 132.7万円
3年間 143.7万円 398.1万円

金額の差は小学校ほどではありません。しかし、やはり私立と公立で教育費に3倍近い開きがあると分かります。

高校編

高校は、どうなのでしょうか。高校からは子どもに私立に通わせるという保護者も、多いと考えられます。

公立高校 私立高校
学校教育費 27.6万円 75.5万円
学校外活動費 17.5万円 28.5万円
1年間 45.1万円 104.0万円
3年間 135.3万円 312万円

公立と私立の違いは2倍ほど。

大学入学前で考えると、小学校が最も私立と公立で「教育費」に大きな差があると分かりました。しかも6年間と、一番長い間、学校に通います。子どもが大学に入る前にある程度のお金を貯めておきたいと思ったら、小学校は公立に通わせ、その間に一気に貯めるという戦略も効果的かもしれません。

いくら貯めた?教育費の平均貯金額とは?

こうしたお金を、子育て世代の人は、きちんと貯められているのでしょうか?

子どもの教育費、みんなの貯金平均は

厚生労働省が公開する情報の中に、『平成29年 国民生活基礎調査』という調査があります。厚生労働省が毎年行っている調査で、平成29年版では全国の46,473世帯から、お金に関する質問について回答を集めています。

その調査によると、子どもが居る子育て世帯の平均的な世帯収入は739万8千円。貯蓄の状況については、平成29年版に情報がないため、1年古い『平成28年 国民生活基礎調査』を参考にします。子どもが居る子育て世帯で、「貯蓄がある」と答えた世帯は82%。金額の平均で言うと、679.9万円になります。ただ、この数字は平均値で、金額帯のトップ2を見ると、

500~700万円・・・10.9%
100~200万円・・・10.3%

という2つの山があると分かります。全体的に貯金額が2極化しており、100万~200万円という世帯と、500~700万円という世帯に、大きく分かれているようです。この情報を踏まえて、もう一度、大学の「教育費」をチェックしてみましょう。

4年間
国公立 私立
(文系)
自宅通い 524.3万円 668.4万円
一人暮らし 812.3万円 933.2万円
4年間
(医歯系は6年間)
私立
(理系)
私立
(医歯系)
自宅通い 809.1万円 2579.5万円
一人暮らし 1073.9万円 2956.8万円

これは4年間、あるいは6年間の金額の合計になります。
単純に考えれば、学費は4年、あるいは6年に分けて支払います。財源は貯蓄だけでなく、月々の収入の余りからも出せます。仮に平均的な収入のある世帯が、貯金500~700万の状態で子どもの大学入学を迎え、自宅から国公立に通わせるといった場合は、十分に対応できそうですね。

しかし、私立の医学部や歯学部に一人暮らしで6年間通わせるとなると、世帯年収が平均を大きく上回る状態でない限り、厳しい状況になります。

また、子育て世帯に重くのしかかる借金の大きさも考えなければいけません。『平成28年 国民生活基礎調査』を見ると、「借金がある」と答えた子育て世帯は全体の53.5%。平均額を見ると947万円で、679.9万円という平均の貯金額を超えています。しかも最多の借金額価格帯は、

2000~3000万円・・・14.2%
3000万円以上・・・7.7%
1500~2000万円・・・7.5%

この大きな借金は、マイホーム購入のためのお金だと考えられます。借金の支払いで精いっぱいで、月々の収入の中から「教育費」が出せないとなると、貯蓄を切り崩す、あるいは奨学金や教育ローンを組んで、新たに借金を重ねて支払うしか選択肢がなくなってしまいます。

「教育費」は、マイホーム並みに必要です。とはいえ、やはりマイホームも購入したいという場合は、最初に「教育費」を確保して、その上でまかなえそうなお金を計算してみるといいのかもしれません。その範囲内でも十分に手に入りそうなマイホームを検討すると、無理なく生きられるのかもしれません。

文/坂本正敬 写真/石川厚志

 

【参考】

平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査 – 内閣府

学校基本調査-平成30年度結果の概要- – 文部科学省

結果の概要-平成28年度子供の学習費調査 – 文部科学省

平成28年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

平成29年 国民生活基礎調査の概況 – 厚生労働省

 

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