軟体動物とは何?
軟体動物とは、具体的にどのような生き物を指すのでしょうか。定義と主な特徴を紹介します。
無脊椎動物に分類される
地球上の生物は、大きく単細胞生物と多細胞生物に分けられます。多細胞生物のグループを「動物界」といい、背骨の有無によって「脊椎動物」と「無脊椎動物」に分類されます。
軟体動物は、無脊椎動物の中の一門「軟体動物門」を構成する動物の総称です。現在の地球上では、同じく無脊椎動物に分類される「節足(せっそく)動物」に次いで大きな動物群です。
外套膜(がいとうまく)と呼ばれる膜がある
軟体動物には、次のような特徴があります。
●体に骨や節がない
●外套膜を持つ
軟体動物は骨も節もなく、文字通り柔らかな体をしています。同じように柔らかな体を持つ動物は、他にもたくさんいますが、決定的な違いは軟体動物には外套膜があることです。
外套膜は、体の表面を覆う役割を持つ器官を指します。イカやタコの胴体部分や、貝類の内臓を包んでいる薄い膜が外套膜です。
イカやタコと貝類は見た目は大きく異なるものの、どちらも外套膜を持つことから、軟体動物に分類されます。
軟体動物の種類
軟体動物は、体の特徴や形態によりさまざまなタイプに分けられます。軟体動物の種類と、代表的な生き物を見ていきましょう。
8つの「綱」に分けられる
軟体動物は、八つの「綱(こう)」に分類されます。「綱」とは「門」の次に位置する、動物の分類階級です。動物は、上から界・門・綱・目(もく)・科・属・種の順に分類されることも、あわせて覚えておくとよいでしょう。
八つの綱のそれぞれの名称と代表的な生物は、以下の通りです。
●腹足(ふくそく)綱:巻貝
●掘足(くっそく)綱:ツノガイ
●多板(たばん)綱:ヒザラガイ
●単板(たんばん)綱:1枚の板状の殻を持つ生物
●二枚貝綱:シジミ・アサリ・ホタテガイなど
●頭足(とうそく)綱:イカ・タコ
●溝腹(こうふく)綱:カセミミズ・サンゴノヒモ
●尾腔(びこう)綱:ケハダウミヒモ
単板綱は主に深海に分布しており、詳しいことは分かっていません。溝腹綱・尾腔綱は貝殻のない、ヒモのような体を持っています。
軟体動物の身近な例
軟体動物は、地球上のさまざまな場所に生息しています。水中と陸上に分けて、身近な例を紹介します。
水中にすむ軟体動物
軟体動物の多くは、水中にすんでいます。中でもアサリやホタテなどの二枚貝は食卓に並ぶ機会も多く、大変身近な生き物といってよいでしょう。
イカやタコも、食材としてよく見かける生き物です。いずれも足が胴体ではなく、頭から生えているため、頭足綱というグループに分類されています。
海水浴場や海辺の観光地などで見かけるサザエは、腹足綱に属する巻貝の仲間です。巻貝には貝殻が退化したものもあり、ウミウシやクリオネもその一種です。
陸上にすむ軟体動物
陸上にすむ軟体動物では、カタツムリやナメクジが身近な例として挙げられます。
カタツムリは陸にすむ巻貝の総称で、日本には800種以上生息しています。
ナメクジは、カタツムリの貝殻が退化して小さくなり、見えなくなったものです。カタツムリもナメクジも、肺呼吸するのが大きな特徴です。いずれも外套膜の表面に血管が集まっていて、肺の役割を担っています。
湿った環境が好きで梅雨時期によく姿を現しますが、寄生虫がいる恐れがあるため、素手で触らないように注意しましょう。
軟体動物と間違えやすい生き物
柔らかい体を持つナマコやクラゲは、軟体動物と間違えやすい生き物の代表といえます。それぞれの正しい分類と、主な特徴を見ていきましょう。
ナマコは「棘皮動物」
ナマコは、軟体動物のウミウシによく似た生き物です。しかし軟体動物ではなく、「棘皮(きょくひ)動物門」に属しています。
棘皮動物とは、ヒトデやウニのような外皮にトゲがあり、全ての器官が五つの方向に放射線状に並んでいる生き物のことです。
ナマコの表面にトゲがあるようには見えませんが、実際はイボのような突起がたくさんあります。器官は腹側に3本、背中側に2本あり、棘皮動物の条件を十分に満たしているのです。
クラゲは「刺胞動物門」「有櫛動物門」
形がイカやタコに似ているクラゲは、「刺胞(しほう)動物門」または「有櫛(ゆうしつ)動物門」に属する生き物です。
刺胞動物に分類されるクラゲは、毒針を持っています。刺されると命にかかわることもあるため、誤って触らないように注意しましょう。万が一刺された場合は、すぐに病院を受診することをおすすめします。
有櫛動物のクラゲには毒針がなく、櫛板(くしいた)と呼ばれる繊毛を使って水中を泳ぐのが特徴です。
またクラゲは、体の約95%が水分でできています。残りの約5%は、塩分と有機物が占めています。
不思議な生き物、軟体動物を観察してみよう
軟体動物は無脊椎動物のうち、外套膜を持つ生き物のことです。軟体動物のうち、二枚貝や巻貝・イカ・タコは、スーパーの店頭や水族館など、身近な場所で見られます。
季節によっては、公園や庭にカタツムリやナメクジが姿を現します。子どもと一緒に、身近にいる軟体動物を観察し、生き物への理解を深めていきましょう。
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文・構成/HugKum編集部