「小惑星」とはどんな天体? 大きさや形の特徴から有名な小惑星まで

小惑星と聞いて、「惑星よりも小さな星」のような、漠然としたイメージを持っている人も多いでしょう。小惑星と他の天体との具体的な違いは、どこにあるのでしょうか。有名な天体もあわせて、小惑星の特徴を分かりやすく紹介します。

どのような天体が小惑星?

小惑星は、太陽系に属する天体のうち、一定の基準に当てはまるものを指します。どのような天体を小惑星と呼ぶのか、定義を見ていきましょう。

惑星・準惑星・衛星を除いた小天体

小惑星は「太陽系小天体」のうち、主に木星の軌道より内側で公転している天体を指します。太陽系小天体とは、太陽系の中で、太陽・惑星・準惑星・衛星のどれでもない天体のことです。

ほとんどの小惑星は木星と火星の軌道の間に集中していますが、水星の内側や海王星の外側にもあることが分かっています。

木星のイメージ。「太陽系小天体」のうち、主に木星の軌道より内側で公転している天体が小惑星

なお準惑星とは、2006年に「国際天文学連合」が新たに定義した天体の種類です。このとき、それまで惑星とされていた「冥王星」・海王星の外側で発見された天体「エリス」・最大の小惑星「ケレス」が、準惑星に指定されました。

彗星と小惑星の違い

太陽系小天体には、小惑星の他に「彗星」が含まれます。彗星と小惑星は、基本的に以下の点で区別されます。

●小惑星:主に岩でできており、ガスなどを放出しない
●彗星:岩の他に氷も含み、ガスなどの物質を放出している

光る尾をなびかせながら夜空を飛ぶ様子が、「竹ぼうき」に似ていることから「ほうき星」とも言われる彗星
光る尾をなびかせながら夜空を飛ぶ様子が、「竹ぼうき」に似ていることから「ほうき星」とも言われる彗星

小惑星は、太陽に近い木星と火星の間に多く分布するため、氷は全て蒸発して岩だけになっています。

一方、彗星は普段、太陽系の外縁部にいるため、氷が蒸発しません。太陽に近づいたときに、中の氷が溶けてガスなどと一緒に放出され、蒸気が太陽光に反射して尾を引いているように見えるのが特徴です。

ただし近年は、小惑星が集まる木星と火星の間で彗星のように物質を放出する天体も観測されており、両者の区別はあいまいになっています。

小惑星の特徴は?

小惑星の大きさや形には、何か特徴があるのでしょうか。惑星などと比べたときの、明確な違いを見ていきましょう。

名前の通り大きなものは少ない

小惑星はその名の通り、惑星や衛星などと比べると小さな天体です。ほとんどの小惑星が、長さ数百mから数十km程度で、100kmを超えるものは数えるほどしかありません。100kmといえば、東京から栃木県の宇都宮市までの距離とほぼ同じです。

小さな天体がたくさんできた理由には、約46億年前の惑星形成がかかわっていると考えられています。この頃、太陽の周りを回る「微惑星」と呼ばれる、とても小さな天体が大量に発生します。

微惑星同士が衝突を繰り返し、くっついた結果、惑星が生まれました。しかし木星と火星の間には、惑星を作るほどの量がなく、微惑星はそこまで大きくなれなかったとされています。

いびつな形をしている

惑星や衛星がほぼ球形なのに対して、小惑星のほとんどがいびつな形をしています。形状もコマやダイヤモンドのように、中心が出っ張っていたり、扁平だったりとさまざまです。その理由は、小さな天体ほど中心の圧力が小さく、いびつなままでも問題ないためとされています。

ではなぜ、いびつな形になったのでしょうか。前述の通り、微惑星が集まって惑星を形成していたとき、木星と火星の間のエリアは微惑星の量が少なく、なかなか大きくなれませんでした。

そのうち木星が誕生して大きな重力を持ち、微惑星の軌道に影響を与えるようになります。そのため、微惑星同士が激しくぶつかることになり、破片となって散らばったと考えられています。

有名な小惑星はある?

小惑星の中には、名前をよく知られているものもあります。代表的な小惑星と、主な特徴を見ていきましょう。

詳細な観測が行われた「イトカワ」

「イトカワ」は公転中に、地球に接近する小惑星群の一つです。1998年に発見され、日本の小惑星探査機「はやぶさ」による観測が行われたことで、有名になりました。

相模原市立博物館に展示されたイトカワの模型 Photo by Edomura-no-Tokuzo, Wikimedia Commons

イトカワは長さが約535mで、幅は300mに満たない細長い形状が特徴です。角度によっては、サツマイモのように見えるかもしれません。

2003年に打ち上げられた探索機・はやぶさは、2005年にイトカワに着地して観測を開始します。そして2010年には採取した微粒子などとともに、地球に帰還しました。

岩石の密度が地球より小さく、内部にすき間があると考えられています。また、場所によって表面の色が違っており、その理由については現在解析中です。

最大の小惑星「パラス」

「パラス」は、1802年にドイツで発見された小惑星です。当時は2番目の大きさでしたが、2006年に「ケレス」が準惑星に分類されたため、最大の小惑星となりました。

撮像装置「SPHERE」によって撮影されたパラスの画像 : ESO/Vernazza et al. – cropped from File:Potw1749a.tif, which was obtained from http://www.eso.org/public/images/potw1749a/, Wikimedia Commons

大きいとはいえ、パラスは地球に最も近づくタイミングでも、約3億kmも離れており観測は容易ではありません。アメリカの研究チームが2020年に撮影した画像により、表面に多くのクレーターがあることが分かっている程度です。クレーターの発見者は、その様子をゴルフボールに例えています。

小惑星の探査で何が分かる?

日本では現在、探査機「はやぶさ2」を打ち上げて、小惑星の探査を継続しています。2019年には「リュウグウ」と呼ばれる小惑星にてサンプルを採取し、サンプルの入ったカプセルを地球に届けることに成功しました。

小惑星の探査によって、どのようなことが分かるのでしょうか?

太陽系の成り立ちを研究できる

小惑星の探査には、太陽系の成り立ちを解明するヒントの発見が期待されています。

実は地球を含め、現在の惑星や衛星を構成する成分がどこから来たのかについては、よく分かっていません。惑星ができる際、衝突によるエネルギーで熱が発生し、成分は蒸発したか、溶けて混ざり合ってしまったからです。

一方、小惑星は「太陽系の化石」ともいわれ、惑星になる前の状態が続いていると考えられます。もし今の惑星には残っていない何かが小惑星で見つかれば、太陽系の謎を解明できるかもしれません。

太陽系の秘密が詰まった小惑星に注目!

小惑星は地球と同じ太陽系にありながら、大きさも形もさまざまで、謎の多い天体といえます。今後小惑星への探査が進めば、太陽系の秘密がもう少し分かってくる可能性もあります。

惑星や衛星などとともに、小惑星にも注目すれば、宇宙空間への興味がより深まるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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