「裸祭り」が熱い! 現地で楽しむには? 代表的な裸祭りや親子観覧の注意点も

裸祭りは日本各地で見られる伝統的な祭りです。下帯姿の男性たちがもみ合う迫力満点の様子は、テレビやネットのニュースにもしばしば取り上げられます。一度は現地で見ておきたい有名な裸祭りを、祭りの由来や観覧の際の注意点とあわせて紹介します。<上画像:国府宮はだか祭 Photo by KKPCW, Wikimedia Commons>

裸祭りはどんな行事?

裸祭りには、どのような特徴があるのでしょうか。まずは、裸祭りの見どころと行事の由来を紹介します。

下帯姿の男たちによるもみ合いが見もの

裸祭りの見どころは、白い下帯(ふんどし・まわし・さらしなど)と足袋を身に着けた男性たちがもみ合う様子です。神聖な行事には生まれたままに近い姿がふさわしいとされているため、参加者はほとんど衣服を身に付けない状態で裸祭りに挑みます。

下帯姿の男性たちがぶつかり合う姿は勇ましく、数万人の参拝者が集まるケースもあるほどです。なお、裸祭りは日本各地で行われており、身を清めて生まれ変わるとするものや、福の争奪戦でその年を占うなど、地域によっても多少内容が異なります。

厄払い・五穀豊穣を祈願する神事に由来

裸祭りはもともと、厄払いや五穀豊穣を祈願する神事でした。現在ではもみ合いのシーンがクローズアップされているため、「裸祭り」と聞くと男性たちがぶつかり合う様子が頭に浮かぶ人もいるかもしれません。

しかし現在も、厄払いや五穀豊穣に関する神事は続いています。例えばもみ合いをする前に、参加者たちは川に入ったり冷水を浴びたりして身を清めるのが一般的です。

中には、「裸祭りに参加した男性は風邪をひかない」や「裸祭りに参加した男性が身に付けていたまわしを腹帯にすると、元気な子が生まれる」といった御利益が期待できる裸祭りもあります。

代表的な裸祭り

日本各地で見られるさまざまな裸祭りから、代表的なものを三つ紹介します。当日の大まかな流れや、2024年の日程をチェックしておきましょう。

岡山県「西大寺会陽」

「西大寺会陽」で、西大寺本堂に集う裸の男衆 Photo by Mstyslav Chernov/Unframe/http://www.unframe.com/, Wikimedia Commons

岡山県岡山市の西大寺で行われる会陽(えよう)は、特に有名な裸祭りです。歴史も古く、基となった新年の大法会(だいほうえ)は奈良時代に始まったといわれています。

1510(永正7)年、当時の住職が旧正月の元日から14日間行われる大法会の最終日に守護札を出したところ、希望者が殺到したそうです。集まった信者の頭上に投与すると、信者が守護札を手にしようと裸になって争奪戦をしたことが裸祭りの始まりとされています。

当初、守護札には紙が使われていましたが、激しいもみ合いに耐えられるよう「宝木(しんぎ)」と呼ばれる木を用いるようになりました。そのため現在の会陽では、本堂の御福窓から投下される2本の宝木を参加者同士で奪い合います。

2024年の裸祭りでは4年ぶりに争奪戦が復活し、2月17日(土)22時に宝木が投下される予定です。

参考:会陽起源について | 西大寺(観音院)-岡山県

岩手県「黒石寺蘇民祭」

初夏の妙見山黒石寺 Photo by Fujinami Azumi, Wikimedia Commons

旧正月7日の夜半から8日の早朝にかけ、岩手県奥州市で行われる黒石寺蘇民祭(こくせきじそみんさい)には、川に入って身を清める夏参りや火の粉を浴びて気勢を上げる柴燈木(ひたき)登りなど、大きく五つの神事があります。

裸祭りと呼ばれる「蘇民袋争奪戦」もその一つで、下帯姿の男性たちが護符がぎっしりと詰まった蘇民袋を取り合うのが特徴です。

蘇民袋争奪戦は明け方4時ごろに開始され、災厄を免れるといわれる護符を取るために参加者が殺到します。護符だけではなく破れた蘇民袋も取り合い、最終的に袋の首部分を持っていた人が「取主」とされて終了する流れです。

2024年は2月17日(土)18〜23時に行われ、蘇民袋争奪戦は22時から始まる予定です。なお、黒石寺蘇民祭は2024年を最後に終了が決定しています。

出典:蘇民祭 妙見山 黒石寺

愛知県「国府宮はだか祭り」

国府宮はだか祭り Photo by KKPCW, Wikimedia Commons

国府宮はだか祭りは正式名称を「儺追神事(なおいしんじ)」といい、767(天平神護3・神護景雲元)年、悪霊退散の祈祷を行ったことが始まりといわれています。

祈祷と「くじ」で、神男(しんおとこ)と呼ばれる儺負人(なおいにん)を決めるのが特徴です。神男に触ると厄落としになるといわれるため、下帯姿の参加者は一斉に神男へと押し寄せます。参加者に触られた神男が人々の災いを一身に負って儺追殿に納まると、もみ合いは終了するそうです。

裸祭りの後、深夜3時からは「夜儺追神事(よなおいしんじ)」と呼ばれる神事が行われます。夜儺追神事では、神男に災いをつき込んだとされる土餅を背負わせ、境内から追い払います。追い払われた神男は途中で土餅を捨てて家に帰り、その土餅を神職が埋めて世の平穏を願う流れです。

2024年の儺追神事は、2月22日(木)の15時に開始予定です。

出典:はだか祭 – 尾張大國霊神社 国府宮

親子で裸祭りを観覧する際の注意点

裸祭り当日は混雑が予想されるので、会場となる寺社の公式サイトで注意事項を確認し、厳守しましょう。そのほかに、親子で裸祭りを観覧する際に知っておきたい注意点を紹介します。

有料チケットが必要な会場もある

現地に行ったからといって、必ずしも裸祭りを観覧できるとは限りません。例えば西大寺会陽では、有料の観覧チケットが必要です。安全面や子どもの負担を考慮すると、立ち見席よりも指定席がおすすめです。

人気の裸祭りはチケットが売り切れるケースも少なくないので、公式サイトをこまめにチェックしましょう。なお、チケットが不要の会場でも、混雑状況によっては入れない可能性があります。確実に観覧するためには、早めに現地に出向くなどの工夫も大切です。

公共交通機関の利用がベター

裸祭りの当日は観光客などで混雑することから、会場周辺で交通規制が実施される可能性があります。駐車場が限られているケースも多いので、電車・バスといった公共交通機関の利用がベターです。寺社によっては最寄駅からシャトルバスが出る場合もあるので、上手に活用しましょう。

夜遅くまで行われる裸祭りも多いため、遠方から参加する場合には宿泊先の手配もおすすめです。宿泊場所があると時間に余裕ができますが、子どもの負担にならないように深夜の観覧は控えましょう。

防寒対策は念入りに

真冬に外で行われる裸祭りの観覧には、防寒対策が必須です。ダウンジャケットのような暖かい服装に、マフラーや手袋、耳あてなどを活用しましょう。カイロやブランケットなどをバッグに入れておくと、寒さが強まった際にも安心です。

ベビーカーは移動に手間がかかるため、赤ちゃんを連れていくときには抱っこひもを利用するとよいでしょう。観覧スペースも限られているので、雨の場合には傘ではなく、レインコート・レインポンチョなどを使用する配慮も大切です。

国府宮はだか祭の賑わいの様子 Photo by KKPCW, Wikimedia Commons

裸祭りに関するQ&Aもチェック

一般的な祭りとは異なる裸祭りには、独自のルールも少なくありません。参加者や開催時期など、裸祭りに関する疑問をピックアップして解説します。

裸祭りには女性も参加できる?

裸祭りは男性が中心ですが、女性が衣服を着て参加できる神事もあります。例えば黒石寺蘇民祭では、川で身を清めて厄よけや五穀豊穣を祈願する夏参りに女性の参加が可能です。

西大寺会陽でも白装束で身を清め、境内を練り歩く「女性はだか」があります。国府宮はだか祭りでは、2024年から「儺追笹(なおいざさ)奉納」という神事に女性も参加できるようになりました。

そのほか、西大寺会陽の「少年はだか祭り」のように、子どもを対象とした裸祭りが行われるケースもあります。

裸祭りが開催されるのは冬だけ?

裸祭りは冬だけではなく、春から秋にかけても日本各地で行われています。4月19〜20日ごろに岐阜県飛騨市で開催される「飛騨古川祭」は、さらし姿の男性たちが巡行する「起し太鼓」が特徴です。

「飛騨古川祭」の起し太鼓の様子 Photo by teru, Wikimedia Commons(PD)

夏の裸祭りでは、茨城県常陸大宮市の「大宮地区夏祭り(祇園祭)」が知られています。7月下旬ごろに2日かけて行われる行事では、六つの町が南北の2組に分かれ、一方の組が神輿を担いで神木と神社の間を通って出ていくのをもう一方の組が邪魔します。下帯姿の男性たちがぶつかり合う、見ごたえのある祭りです。

大分県豊後高田市では、毎年11月下旬ごろに「若宮八幡神社秋季大祭・裸祭り」が実施されます。下帯姿の「川組」と呼ばれる担ぎ手たちによって桂川を渡る、総重量約1tの神輿が見ものです。

なお、いずれの裸祭りも2024年の日程は未定なので、興味がある場合は公式サイトをこまめにチェックしましょう。

出典:
飛騨古川祭 | ユネスコ無形文化遺産の飛騨古川祭
大宮地区夏祭り(祇園祭) | 常陸大宮市公式ホームページ
若宮八幡神社秋季大祭・裸祭り – WEBロケハン – 豊後高田市ホームページ

伝統的な裸祭りの熱気を体験しよう

日本で古くから行われている裸祭りは、下帯姿でもみ合ったり、神輿をかついだりする男性たちの姿が特徴的な行事です。大規模な裸祭りはニュースなどで報道されるケースもありますが、会場に出向くことで参加者たちの熱気を感じられます。

代表的な裸祭りは冬に開催されるので、マフラーや手袋を着用といった防寒対策は必須です。さらに裸祭りの当日は混雑する傾向にあるため、時間に余裕を持って行動すると、子どもへの負担も減らせるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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