「高山祭」はユネスコ無形文化遺産の〝屋台行事〟が魅力! 春祭りを詳しく紹介【HugKumお祭りガイド】

高山祭(たかやままつり)は、岐阜県高山市で行われる祭りです。「屋台」と呼ばれる豪華な山車(だし)を見るために、毎年全国から多くの観光客が訪れます。春と秋に行われる高山祭のうち、春の祭りを詳しく紹介します。

高山祭とはどんな祭り?

高山祭とは、どのような祭りなのでしょうか。祭りの概要や特徴、歴史について詳細を見ていきましょう。

飛騨・高山で春と秋に行われる例祭

高山祭は、岐阜県北部に位置する高山市内の神社で、春と秋に開催される例祭を指します。春は飛騨山王宮日枝神社(ひださんのうぐうひえじんじゃ)、秋は櫻山八幡宮(さくらやまはちまんぐう)で行われ、それぞれ「山王祭(さんのうまつり)」「八幡祭(はちまんまつり)」とも呼ばれています。

春の例祭が行われる飛騨山王宮日枝神社(岐阜県高山市)

 

秋の例祭が行われる櫻山八幡宮(岐阜県高山市)

高山祭に訪れる多くの人を魅了するのが、精巧かつ美麗に作られた「屋台」です。屋台とは、祭りで使う山車のことです。異なる装飾を凝らした屋台が並ぶ様子は壮麗で、「日本三大美祭」の一つに数えられます。

高山祭の開催日は、例年春は4月14~15日、秋は10月9~10日です。2024年の春も、例年同様4月14(日)~15日(月)に開催されると考えてよいでしょう。

飛騨匠の木工・彫刻技術が光る

高山祭の屋台は、「飛騨匠(ひだたくみ)」の技術の粋を集めたものです。飛騨匠とは、優れた木工技術を持つ飛騨地域の職人を指します。

豊かな森林に囲まれた飛騨地方には、卓越した木工技術を持つ職人が多く出ました。彼らは都で重要な建築物の建造を任されるケースも多く、法隆寺の夢殿(ゆめどの)や東大寺といった神社仏閣から、平城京・平安京の造営まで深く関わったといわれています。

匠によって仕上げられた、精度の高い彫刻と華やかな装飾にちなみ、高山祭の屋台は日光東照宮の陽明門(ようめいもん)にも例えられます。

高山祭の華やかな「屋台」

起源は領国大名・金森氏の時代

高山祭が始まったのは、金森氏が統治を始めた1586(天正14)年ころから、天領(江戸幕府の直轄地)となる1692(元禄5)年の間とされています。屋台については、1718(享保3)年の記録が最も古いとされ、この時期すでに4基が存在していたようです。

金森氏が他の国に移され、江戸幕府が直轄地として治めるようになると、飛騨地域にも江戸の文化が流入してきました。また屋台を飾る装飾は、京都から取り寄せられたものも多くあります。

江戸や京都の文化の影響に加え、高山商人の富を背景とした、屋台を管理する組同士の競い合いも起こり、技巧を凝らした豪華なデザインへと発展していきました。

春の高山祭の見どころ

春の高山祭には、豪華な屋台以外にもいくつかの見どころがあります。主な見どころをチェックしましょう。

屋台を間近に見られる「曳き揃え」

曳き揃え(ひきそろえ)とは、12基ある屋台をお披露目する行事です。高山祭の屋台は国の重要有形民俗文化財に指定されているほか、屋台行事も2016年にユネスコ無形文化遺産に登録されています。

間近に見ることで、飛騨匠によって施された精緻な彫刻や雅な装飾を楽しめるでしょう。注目したい春の屋台と特徴は、以下の通りです。

神楽台(かぐらたい):金の鳳凰(ほうおう)や大太鼓が目印
麒麟台(きりんたい):名工2人による彫刻の共演
五体山(ごたいさん):円山応挙(まるやまおうきょ)など名絵師の下絵を使った刺繍幕

なお秋の高山祭では、屋台が町内を練り歩く「曳き廻し」が行われますが、春はありません。登場する屋台の数も異なり、春は12基、秋は11基です。

巧みな動きが楽しい「からくり奉納」

からくり奉納とは、屋台に取り付けられたからくり人形を使った演舞です。春の高山祭では、御旅所前で3基の屋台が奉納することとなっています。

からくり人形を操るのは、「綱方(つなかた)」と呼ばれる職人です。熟練の技によって操られる人形の早変わりや、繊細な演舞はとりわけ人気です。

からくり奉納の実施時間には、激しい混雑が予想され、御旅所前まで行けない可能性もあります。近くで見物したい場合は、早めに会場へ向かうほうがよいでしょう。

からくり人形が取り付けられた屋台

時代絵巻のような「御巡幸」

御巡幸(ごじゅんこう)とは、いわゆる「祭り行列」のことです。伝統的な衣装を身に着けた人々が、神輿(みこし)を中心に市内を練り歩きます。

獅子舞や、闘鶏楽(とうけいらく)と呼ばれる祭りばやしなどの後に、裃(かみしも)を着た人々に警護された神輿が続き、その規模は数百人にも及ぶといわれています。

春の高山祭では、行列は14日の午後に日枝神社を出発します。氏子の家々を巡った後は御旅所で1泊し、翌15日の午後に日枝神社へ戻る流れです。

春の高山祭へ行くには?

高山祭には、全国から多くの観光客が訪れます。観覧を希望する場合は、事前にアクセス方法や注意点を確認しておきましょう。

高山祭へのアクセス

春の高山祭は、日枝神社の氏子地域である旧高山城下町の南半分で行われます。電車の場合、JR高山本線「高山駅」で下車すると、日枝神社までは徒歩約25分です。

関東から自動車で行く場合は、長野自動車道の松本ICを利用しましょう。松本ICからは、国道158号線を高山方面に進み、約1時間50分で市街地に到着します。

関西から向かう場合は、名神高速道路の一宮JCT・東海北陸自動車道の飛騨清見ICを経て中部縦貫自動車道に入ります。高山ICで下りると、市街地までは約10分です。

楽しむための注意ポイント

高山祭開催期間中は、市内で交通規制が実施されます。特に国道158号線は混雑が予想されるため、交通情報を確認しましょう。駐車場や道路の混雑状況は、公式サイトや高山国道事務所が運営するサイト「高山観光ダッシュボード」で確認できます。

また当日の天候によっては、行事が中止されたり、時間や場所が変更されたりすることがあります。あらかじめ天気予報や公式サイトで、情報をこまめにチェックしておくとよいでしょう。

高山の街並み

高山祭には飛騨の伝統が色濃く残る

高山祭は、江戸や京都の文化を取り入れて発展した、飛騨高山地方ならではのお祭りです。国の重要有形文化財や、ユネスコ無形文化遺産に登録されている屋台と屋台行事は、一見の価値があるといえます。

春の高山祭は例年4月14~15日に行われ、華やかな春の城下町の雰囲気を感じられます。昔ながらの文化を受け継いだ御巡幸や、屋台の曳き揃え・からくり奉納などを観覧すれば、飛騨高山の美しい伝統を肌で感じられるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

出典:
春の高山祭(山王祭) | 飛騨高山観光公式サイト
国指定文化財等データベース
ユネスコ無形文化遺産に登録されました|高山市
飛騨山王宮日枝神社【公式サイト】
アクセス | 飛騨高山観光公式サイト
高山観光情報ダッシュボード

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