和洋中と様々な料理に使える万能な鶏肉は、自然と食卓に上る回数が増えがち。お買い得品でまとめ買いして冷凍保存している方も多いそうです。
けれども、この鶏肉には“カンピロバクター”という菌が増殖しやすく、食中毒になりやすいのをご存じですか? 保存法によっては、知らずに菌を増やしていることもあるんです。今回は、正しい鶏肉の保存法について解説していきます。
鶏肉の保存で知っておきたい危険性
鶏肉の菌って何!?
「そもそも鶏肉に菌がいるなんて、知らなかった!」という方もいるかもしれません。鳥だけでなく、豚や牛などの家畜のほか、ペットや野生動物など。あらゆる動物の腸管内には、実はカンピロバクターという菌がいる可能性があるのです。
特に鶏肉には、カンピロバクターの保菌率が高く、市販の鶏肉の40~70%は汚染されているとも言われています。かなり怖いですよね…。平成29年度の細菌性食中毒の中で、最も発生件数が多かった人畜共通の食中毒菌として話題になりました(厚生労働省調べ)。
牛や豚レバーの生食が禁止になったのは、腸管出血性大腸菌(O157)をはじめとする食中毒や、E型肝炎ウィルス、サルモネラなどのリスクを避けるためですが、このカンピロバクターもリスクのひとつ。カンピロバクターその他の食中毒事故は、季節問わず気をつけておきたい菌の1種です。
カンピロバクターの特徴とは
まずは、敵をよく知ることから始めていきましょう(笑)。カンピロバクターは、微好気性菌(びこうきせいきん)という仲間。読んで字のごとく、微量な空気を好む菌種になります。熱には弱く、加熱調理すれば死滅します。
もしも食中毒に罹った時の潜伏期間は、2~5日とやや長め。症状としては、下痢や腹痛、発熱やめまいなどがあります。「5日前に食べた料理なんて覚えてな~い」って声が聞こえてきそうですね。このように時差があり、熱は通常38℃程度のため風邪と間違われることも多いようです。
鶏肉の生焼けには、ご用心!
突然ですが、ここで問題です。例えば、焼き鳥屋さんに行ったとします。そこの店主が「さっき、鶏肉を切り分けたばかりだから鮮度抜群! 半生ぐらいが最高に美味しいよ」といって、生焼け状態の焼き鳥が出てきたらどうしますか?
ここでのポイントは、“鮮度がいい”というところ。カンピロバクターの特徴は、微好気性菌でしたね。空気に触れている時間が短い方がカンピロバクターには好条件なんです。「鮮度がいいから完全に焼かなくてもいいんだ♪」と、ピンク色の鶏肉を食べないこと!! 切り分けたばかりの新しい鶏肉のほうが、かえって危ないのです。
鶏肉の冷蔵保存のポイント
次に、鶏肉の正しい保存の仕方について学んでいきましょう。
買ってきたパックごと保存はNG
冷蔵だけでなく冷凍保存にも言えることですが、パックごと保存するのはダメ! よく見るとパックの隅に赤いドリップ(肉汁)が出ていることに気がつくはずです。鶏肉は、他の肉類と比べて水分が多く、ドリップが出やすい状態。きちんとパックから取り出して、キッチンペーパーなどで拭きとることが重要です。
鶏肉は、1枚ずつキッチンペーパーで包んでからラップをし、保存用袋などに入れること。できれば、下味をつけてから保存する方が傷みにくくなります。塩と酒を少量ふって保存するとよいでしょう。塩分とアルコールには、細菌効果も抜群です!
冷蔵庫保存の場合は、比較的温度の低いパーシャル室やチルド室に入れて保存しましょう。
鶏肉の冷蔵保存の期間
冷蔵庫のパーシャル室やチルド室で、1~2日ほど冷蔵保存可。
鶏肉の冷凍保存のポイントは「氷の膜」
生の状態の鶏肉を冷凍保存するには、氷水に一度つけてから氷の膜を作る方法があります。この氷膜のことをグレーズと呼び、乾燥と酸化を防ぐ働きがあると言われています。
余分な水分をキッチンペーパーなどで拭いたら、ラップに包んで冷凍用保存袋に入れて冷凍庫へ。急速冷凍が美味しい保存のコツなので、可能であれば金属トレーにのせて冷凍しましょう。
下味をつけて冷凍保存する場合
冷蔵保存のところでも説明しましたが、塩と酒を振ってから保存すると傷みにくくなり、おすすめです。作る料理が先に決まっている場合は、あらかじめ調味料で味付けしてから冷凍保存するという手も。解凍後もしっかりと味が染みて美味しくいただくことができます。
味付けの利点としては、他にもあります。冷凍中に調味料が肉に浸透して肉質がやわらかくなり、さらに調味料の塩分などによる殺菌効果も◎。このように味付け保存は、美味しさと安全をキープしてくれるわけです。
写真は、タンドリーチキン用です。ヨーグルトやスパイスで味付けして冷凍庫へ。解凍後は焼くだけなのでラクちん♪
食べやすいサイズに切って冷凍する場合
鶏肉は切ってから冷凍しても大丈夫ですが、前出のように塩や酒などで下味をつけるか、または味付けしてから保存するのがベストです。
もしも、下味などをつけず、ただ切ったまま冷凍した場合はどうなるか? 解凍後は、ドリップと旨味成分が一気に流失してしまいパサパサになりがちです。切って冷凍する場合は必ず下味をつけるようにしましょう。
鶏肉の冷凍保存できる期間
清潔な環境で冷凍保存できた場合で、2~3週間ほど保存可。
鶏肉がおいしくなる解凍方法
冷凍した肉類は、急激な温度変化をできるだけ避けるのが美味しく解凍するコツ! 氷水につけながら解凍する方法がおすすめです。この解凍法は、ドリップが出にくく旨味もキープしてくれます。
よく常温で解凍する方がいますが、これは鶏肉が保菌しているカンピロバクターを増やしてしまいます。常温での解凍は、くれぐれも控えましょう。
そのほか、鶏肉の扱いで気をつけること
鶏肉からの二次汚染に気をつけて
保存する際に気をつけてほしいのは、基本の“手洗い”です。
鶏肉は、カンピロバクターという菌が多いというのは理解してもらえたと思いますが、生の鶏肉を触った後に、生野菜などを調理して食中毒を起こした事例があります。これは、給食などの集団調理の現場で起きたことですが、家庭でも同様に注意が必要です。しっかりと手洗いをし、二次汚染での食中毒を起こさないように心がけましょう。
鶏肉を食べる時は、しっかり中まで加熱を!
カンピロバクターは、加熱に弱い菌です。食中毒を起こさないためにも保存した鶏肉は、しっかりと中まで火を通すことが肝心。家族の健康を守るのは、ママの知識が大切です。正しい保存法ときちんとした加熱調理で、美味しい鶏肉料理を楽しんでくださいね♪
撮影・文/川越光笑(たべごとライター・発酵食スペシャリスト)
冷凍鶏肉を使った簡単レシピ
HugKum編集部がご紹介する鶏肉レシピです。上手に冷凍・保存した鶏肉で美味しくつくってくださいね。
【1】しっとり蒸し鶏を使ったシンガポールチキンライス風
オリーブオイルで鶏むね肉でもしっとり!忙しい日は作り置きした優しい味の蒸し鶏をバターライスにONするだけでボリュームたっぷり!
◆材料
(大人2人+子ども1人分)
しっとり蒸し鶏 10切れ(子ども2切れ)
温かいごはん 300g
バター 大さじ1
にんじん(すりおろし) 大さじ3
プロセスチーズ(小さめの角切り) 30g
ゆでたブロッコリー 適宜
◆作り方
【1】ボウルにごはんとバター、にんじんを入れてしっかり混ぜ合わせる。
【2】器に【1】を盛ってプロセスチーズを適量散らし、食べやすく切った蒸し鶏をのせてブロッコリーを添える。
◆ポイント
作り置きで時短!下ごしらえをまとめて済ませて、 調理の時間と手間をカット!
応用範囲の広い鶏肉は、まとめて仕込んでおくと便利!
【しっとり蒸し鶏】
オリーブオイルを加えた蒸し鶏は、やわらかくて食べやすく、風味も豊か。
冷蔵庫で4~5日、冷凍庫で3週間保存可能。
● 材料(作りやすい分量)
鶏胸肉 大2枚(約600g)
片栗粉 適宜
酒 1/4カップ
オリーブオイル 大さじ3
塩 小さじ2/3
●作り方
【1】鶏胸肉はひと口大のそぎ切りにして、片栗粉を薄くまぶす。
【2】【1】をフライパンに並べて、酒とオリーブオイル、塩を振り入れる。
【3】フタをして弱めの中火にかけ、ときどき返しながら約7分蒸し煮にする。
教えてくれたのは
武蔵裕子さん
むさしゆうこ/料理研究家。作りやすく、おいしいレシピに定評のある、家庭料理のエキスパート。自らも働きながら双子の息子を育て上げ、今も3世代の食卓を担う日々。忙しい主婦が真似しやすい時短レシピを数多く提案している。
『めばえ』2017年4月号
【2】チキンナゲット
おかずにもお弁当にも欠かせないチキンナゲット。ヘルシーな豆腐としょうゆを加えた〝ちょい和風味〟!豆腐とチーズの兼ね合いもバッチリです。ぜひ作り置きして!
◆材料
(大人4~5人分)
鶏ひき肉 200g
絹ごし豆腐 100g
プロセスチーズ 60g
玉ねぎ 1/4個
【A】
卵 2個
小麦粉 40g
しょうゆ 大さじ2
揚げ油 適量
※分量の大人1人分は、子ども2人分くらいになります。
◆作り方
【1】豆腐はキッチンペーパーに包んで耐熱容器にのせ、電子レンジ(600Wの場合)で2分加熱し、粗熱をとる。チーズは5mm角に、玉ねぎはみじん切りにする。
【2】ボウルに【1】とひき肉を入れてよく混ぜ、ひと口大に丸める。
【3】別のボウルに【A】を合わせ、【2】を入れてからめ、170℃に熱した油で揚げる。
教えてくれたのは
YOMEちゃんさん
女の子のママ。愛情たっぷりの育児日記と日常のアイデアあふれる献立を綴ったブログ「よめ膳@YOMEカフェ」 が毎月200万アクセスを誇る。
『ベビーブック』2013年10月号
【3】てりやきチキン
酒、しょうゆ、みりんの味付けは鉄板の味。ちょっと多めに作って他のおかずにリメイクするのにもぴったり。
◆材料
(大人4人分+子ども4人分)
鶏もも肉 3枚
塩・こしょう 各少々
片栗粉 大さじ2
サラダ油 大さじ1
【A】
しょうゆ 大さじ3
みりん 大さじ3
酒 大さじ3
砂糖 大さじ2
◆作り方
【1】鶏肉は脂肪を切り落として半分に切る。塩、こしょうをふって、全体に片栗粉をまぶす。
【2】フライパンにサラダ油を熱し、【1】の皮を下にして入れる。焼き色がついたら裏返し、余分な脂をキッチンペーパーで拭きとる。
【3】【A】を加えてフタをし、中弱火で5分煮、フタを取り、汁けが少 なくなるまで煮詰める。
教えてくれたのは
島本美由紀さん
料理研究家・ラク家事アドバイザー。 忙しい主婦に向けて、身近な食材でパパッと作れるおいしい時短レシピを考案。テレビや雑誌を中心に活躍。暮らし全般のハッピーもプロデュース。
『ベビーブック』2017年5月号
【4】鶏のから揚げ
定番の唐揚げはレンジで作ればグッと簡単に!ポリ袋を使えば手も汚れないので、より手軽に調理できます。
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
鶏もも肉 400g
【A】
しょうゆ 大さじ1
砂糖 大さじ1
酒 大さじ1
おろしにんにく 小さじ1/2
強力粉 大さじ2
サラダ油 大さじ1
◆作り方
【1】鶏肉は一口大に切り、合わせておいた【A】をからませる。ポリ袋に強力粉とともに入れ、空気を入れて袋の口を閉じ、よく振って粉をまぶす。
【2】クッキングシートを敷いた耐熱皿に、【1】を皮を下にしてドーナッツ状に並べ、サラダ油を少しずつかけてスプーンの背でなでつける。
【3】小皿に【2】をのせ、ラップをせずに8分加熱する。
◆ポイント
■肉はドーナッツ状に並べる
円の中心は熱が当たりにくいので、外側から並べる。サラダ油はスプーンの背でなでつけて、なじませる。
教えてくれたのは
村上祥子さん
福岡在住。国内外を飛行機で飛びまわる「空飛ぶ料理研究家」。電子レンジ料理のエキスパートであっと驚く独自のワザを次々に開発中。
『ベビーブック』2011年7月号
【5】チキン南蛮
塩を振り、水にさらし、水気をしっかり取るなどの”ひと手間”が美味しさの差に。子供が大好きなチキン南蛮は手作りタルタルソースでより美味しくいただきましょう。
◆材料
(大人2人分+子ども2人分)
鶏むね肉 1枚(約350g)
塩・こしょう 各少々
小麦粉 適量
ポン酢しょうゆ 適量
揚げ油 大さじ4~5
【A】
玉ねぎ(みじん切り) 1/4個
マヨネーズ 大さじ3
牛乳 大さじ1
パセリ(みじん切り) 適宜
◆作り方
【1】【A】の玉ねぎは塩少々(分量外)をふってもみ、水に2~3分さらし、キッチンペーパーに包んで水気をよく絞ってから、【A】の他の材料と混ぜ合わせて、タルタルソースを作る。
【2】むね肉は一口大に切り、塩・こしょうをふり、小麦粉を薄くまぶす。ポン酢しょうゆはバットかボウルに入れておく。
【3】フライパンに油を入れて中温(170℃)に熱し、肉を入れて4~5分返しながら揚げる。軽く油をきり、すぐにポン酢しょうゆにつけて全体に絡める。
【4】器に【3】を盛り、【1】のタルタルソースをかける。
※お好みでレタスやミニトマトを添えても。
教えてくれたのは
武蔵裕子さん
料理研究家。総菜から保存食まで幅広いジャンルを得意とし、だれでも簡単に作れるシンプルでおいしいレシピが好評。
『ベビーブック』2017年10月号
構成/HugKum編集部