筑前煮は冷凍できる
冷凍保存は、食材に含まれる水分が氷になる過程で、食材の繊維を壊す作用を伴います。解凍すると大きく食感を損ねることもありますから、冷凍してもおいしいままの食材と、冷凍にはむいていない食材があります。
冷凍できない煮物とは
水分量の多いじゃがいもは、冷凍するとボソボソの食感へと変わってしまいます。同じように、繊維質のものは筋っぽい食感へ、油分が多いものは水分と分離されます。
脂の多い牛肉を使って炊いた肉じゃがは、食感の変化と油の分離がおこるので、冷凍には向かない煮物の代表と言えます。
それに対して筑前煮は、鶏肉、れんこんなど、比較的劣化が少ない食材が使われています。にんじんや筍は、やや食感に変化がありますが、小さめに切っておくことで気にならなくなります。このように、いくつかのポイントに気をつけながら冷凍することで、おいしさを保ったままで冷凍することができるんです。
ただし、こんにゃくは除いて
残念ながら、こんにゃくだけは除いてから冷凍するのがが無難です。こんにゃくは90%が水分です。これが凍ると、食物繊維だけが残され、解凍後はコリコリの食感へと変化します。
この変化したこんにゃくの食感を楽しむ食べ方もありますので、興味のある方はぜひこちらをご参考になさってくださいね。
筑前煮の冷凍方法
それでは、具体的な冷凍方法を、写真と一緒に確認していきます。
煮汁ごと容器へ入れる
にんじん、筍がある場合は小さめに切ってください。こんにゃくはあらかじめ除いておきます。その後、冷凍用保存袋やタッパーなどを用意して、煮汁ごと移し替えます。
空気を抜く
空気が入っていると、霜がつく原因になります。できるだけ空気を抜いて防いでください。手で押し出しながら、煮汁が溢れないようにしっかりと封をします。
小分けはお弁当におすすめ
お弁当用には、小分けにしておくと便利です。バランスよく具材を選び、ラップで包んでください。できるだけ空気を抜いて、ピッチリと包んでくださいね。冷凍用保存袋に詰め、空気を抜いて冷凍します。
保存期間
冷凍が長引くと味や香りが劣化してしまいます。おいしく召し上がるためには、できるだけ早めに消費するのがおすすめですが、1か月までは保存ができます。
食事の際に少量ずつ取り入れながら消費していくのも、長期保存の要です。忘れてしまわないように、気をつけてください。
筑前煮の解凍方法
解凍は、冷凍した食品をおいしく味わえるかどうかを左右する工程です。
自然解凍
お弁当には、凍ったまま入れてOKです。朝、お弁当に詰めておけばお昼には食べごろです。自然解凍は食感の変化が少ない解凍方法ですから、普段の食事の際にも3時間程前に冷凍庫から冷蔵庫へ移して、ゆっくり解凍すればおいしくいただけます。
レンジ解凍
お急ぎの時はレンジでチンします。オート機能を使い、解凍から温めまで一度に加熱してください。自然解凍とは逆に、手早い加熱で食感の劣化を防ぎます。
冷凍野菜を使って簡単調理
根菜の下処理は手がかかりますね。すでに茹でてある野菜を冷凍した商品を使えば、下ごしらえが必要ありません。忙しい時にはパパッと仕上げることができますよ。
冷凍野菜商品名「和風野菜ミックス」
にんじん、里芋、れんこん、ごぼう、たけのこ、しいたけが入っている商品です。
冷凍野菜を使う時のポイントは
ミックス野菜の他、単独野菜の冷凍もあります。どちらも解凍せずにそのまま調理して、手早く加熱してください。冷凍によって細胞が壊れているため、味が染み込みやすくなっていますよ。
ただし、調理後の再冷凍はできないので、注意してください。
筑前煮の作り方
それでは、基本的な筑前煮のレシピをご紹介します。
筑前煮
炒め煮もフライパンで作ればくっつかず、火の通りも早い! 作りおきにも最適なレシピです。
◆材料
(大人2人+子ども2人分)
鶏もも肉 1枚
にんじん 1/2本
エリンギ 2本
大根 4cm
れんこん 4cm
サラダ油 大さじ1/2
【A】
水 150cc
酒 大さじ2
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ4
砂糖 大さじ3
◆作り方
【1】鶏肉とにんじん、エリンギは一口大に切り、大根とれんこんは1cm幅のいちょう切りにする。
【2】【A】を合わせる。
【3】フライパンにサラダ油を熱して【1】を炒め、【2】を加え、弱火で20分ほど煮る。
◆ポイント
鍋で炒めるより、具材がくっつかないからラク。そのまま水と調味料を入れて煮込めば、面積が広いぶん火の通りが早く、味も早く染み込みます。
教えてくれたのは
尾田衣子さん
「ル・コルドン・ブルー」やイタリアにて料理を学び、OLから料理研究家に転身。現在、「料理教室 Assiette de KINU」を 主 宰。男の子のママでもある。
『ベビーブック』2011年2月号
筑前煮 下味冷凍
最後に、下味をつけて加熱前の状態で冷凍する方法をご紹介します。味がよく馴染んで、具材も柔らかくなり、2日目の煮物のように感じられます。煮込み時間はたったの15分です。
冷凍方法
具材を切って、下味をつけるまでが冷凍の下ごしらえです。
材料
(大人2人+子ども2人分)
鶏もも肉 1枚
にんじん 1/2本
エリンギ 2本
大根 4cm
れんこん 4cm
【A】
酒 大さじ2
みりん 大さじ1
しょうゆ 大さじ4
砂糖 大さじ3
作り方
【1】鶏肉とにんじん、エリンギは一口大に切り、大根とれんこんは1cm幅のいちょう切りにしてください。
【2】冷凍用保存袋に【A】を混ぜ合わせ、鶏肉を入れて揉み込みます。野菜を入れて空気を抜き、袋を閉じます。
【3】平らにして冷凍庫へ入れます。
解凍方法
【1】半解凍にしてから、鍋に入れます。
【2】水50ccを加えて蓋をして、中火にかけます。煮立ったら弱火にして落し蓋をし、時々混ぜながら15分程加熱します。最後は蓋をとって、煮詰めれば完成です。
懐かしい煮物を常備できる冷凍保存
根菜を柔らかく煮た筑前煮は、ほっこりと心まで温めてくれるメニューです。栄養のバランス面でも、おいしさを味わう面でも癒しの一皿となってくれますね。手がかかる煮物ですが、冷凍保存を活用すればおいしく、手早く味わうことができますよ。ぜひ、冷凍保存を活用して暮らしに取り入れてくださいね。
構成・文・写真(一部を除く)/もぱ(京都メディアライン)