「知事」と「市長」の違いとは? 仕事内容や権限、選出方法をチェックしよう【親子で学ぶ現代社会】

知事と市長に対し、どちらも「偉い人」という漠然としたイメージを持っている人もいるでしょう。しかし両者は権限が及ぶ範囲や、管轄するエリアなどが異なります。知事と市長の違いや仕事内容、選出方法などをチェックしていきましょう。

知事と市長の仕事内容の違い

知事と市長はどちらも地方自治法で決められた職業であり、身分は地方公務員です。ただし地方公務員法が適用されない「特別職」に該当します。両者の仕事内容の違いについて、詳しく見ていきましょう。

知事の主な仕事

知事は都道府県の首長のことであり、地域の経済活動において重要な役割を持ちます。主な仕事内容は、都道府県が税金などで得た財源をどのように事業に使うのか、職員とともに検討し予算案を作成することです。

憲法や国の法律に反しない範囲で地域に合った条例を作り、商業や工業、農業などを活性化させるために働きます。都道府県の顔として、イベントなどでPR活動を行うことも重要な仕事の一つです。

知事には地域の問題を客観的に把握する能力や、強力なリーダーシップが求められます。

市長の主な仕事

市長は市の首長であり、自治体のトップとして市の予算を組み、条例を制定し、改正案を市議会に提出します。市の顔として、さまざまな会議や行事に出席するのも市長の仕事です。

市の取り組みをメディアに伝え、SNSなどでアピールするのも重要な仕事です。ときには市にとって重要な交渉や決断をしなければいけないこともあり、非常に責任が重い立場だと言えます。

どちらも地方自治体の首長

知事と市長に共通するのは、どちらも地方自治体の首長であるという点です。

知事は都道府県、市長はその都道府県下にある市の長であるという違いがありますが、首長としては、それぞれの自治体において同じような役割を果たしているといっても差し支えありません。

知事であれば都道府県議会と、市長であれば市議会と連携して、以下のような仕事をこなしています。

<自治体の首長の主な仕事内容>
●議会に議案を出す
●予算を決めて使う
●税金の徴収
●自治体の財産の管理
●自治体の施設の設置 など

出典:
地方自治法 第百三十九条 | e-Gov法令検索
地方公務員法 | e-Gov法令検索
東京都|都政のしくみ/執行機関[知事]

知事と市長の権限の違い

東京都庁は、地方公共団体である東京都の行政機関であり、その首長は東京都知事

知事と市長の大きな違いは、管轄する地域の範囲が異なる点です。それぞれ、どのような権限を持っているのか見ていきましょう。

知事が持つ権限

知事の主な権限は、人事権・拒否権・専決処分権などです。

●人事権:知事部局の人事に関する権限
●拒否権:議会で決定された予算や条例を拒否する権限
●専決処分権:速やかに条例を定めなければいけない状況になったとき、独断で条例を制定する権限

他にも地方税を設置する権限や、議会解散権などを持っています。中でも東京都知事は巨大都市のトップであるため、動かせる予算が大きく、権力や影響力が大きいとされます。

市長が持つ権限

議決機関である市議会と市長は、ともに市政を担っています。議会の主な権限は以下の通りです。

●議決権:条例の制定や改廃、予算の決定などをする権限
●承認権:決算承認や専決処分などを承認する権限
●選挙権:市議会の議長や選挙管理委員などの選挙をする権限
●検査権・監査請求権:市の事務に関する書類について、監査委員に監査を請求する権限 など

一方、市長には「事務の管理及び執行権」や「統括代表権」「職員の指揮監督権」などがあります。自治体を代表して議会が決めたことを執行したり、職員を監督したりするのが、市長の権限といってよいでしょう。

出典:
都政のしくみ/執行機関[知事]|東京都
議会の役割 | 会津若松市
地方自治法に定める市長の権限 

知事と市長の選出方法

知事も市長も、直接選挙で選ばれる

知事や市長は地域の発展や安定性に深くかかわる立場であり、私たちの暮らしにとって重要な存在といえます。それぞれどのように選出されるのかを見ていきましょう。

知事選挙

選挙は4年に1度行われ、知事が選出されます。任期は4年間ですが、住民による解職請求(リコール)や都道府県議会が不信任議決を行った場合は、この限りではありません。

都道府県知事に立候補できるのは、満30歳以上の人です。日本国民であれば、立候補する都道府県以外に住んでいる人でも知事になれます。

選挙権は満18歳以上で、その都道府県に3カ月以上住んでいる人に与えられる決まりです。ただし、禁固刑に処されている人や執行猶予中の人、政治資金規正法に定める犯罪を犯した人は選挙権を失います。

市長選挙

市長に立候補できるのは、満25歳以上の日本国民です。選挙期日に25歳に達している場合、立候補できるとされています。

市長選挙では、政治経験のある人が候補者になることが一般的です。任期は知事と同様4年間と決まっていて、議会解散や任期満了などで当選人がいなくなった場合も選挙が行われます。

選挙権は満18歳以上で、 引き続き3カ月以上その市区町村に住所のある人に与えられます。選挙権を失う条件は、知事選挙と同じです。

若年層の市長も誕生

近年は、若年層の市長が当選する例が増えています。2023年に兵庫県芦屋市の市長選挙で、4人の候補者の中から、無所属で新人の髙島崚輔(たかしまりょうすけ)氏が当選しました。

歴代最年少となる26歳の市長が誕生したことに、驚いた人は多いでしょう。髙島氏は市民との対話を重視した市政をアピールし、支持を得ています。

また、京都府八幡市の市長選挙では、元京都市職員や参議院議員の秘書の経歴を持つ、33歳の川田翔子(かわたしょうこ)氏が初当選しました。これまでに当選した全国の女性市長の中では最年少で、企業誘致の促進や駅前開発などの実現を掲げています。

出典:総務省|選挙権と被選挙権

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知事と市長に注目し、政治へ興味を持とう

知事は都道府県のトップ、市長は市町村のトップです。どちらも地方自治法で定められた職で、知事や市長になるには選挙に当選しなければいけません。

一方で、満18歳以上になると選挙権が与えられます。子どもが投票に行くようになる日も、遠からず訪れるでしょう。自身が住んでいる地域の福祉や経済の発展などが気になるのであれば、知事や市長の人選に力を入れる必要があります。

選挙の際は立候補者の人柄や経歴、公約などを確認し、子どもにも意見を問うなどして、政治への興味関心を育んでいきましょう。

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構成・文/HugKum編集部

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