「2人の娘も水泳をやってます」競泳・五輪メダリスト寺川 綾さんの子育てモットーは?「夢中になって楽しむ力」を育むためにやっている声掛け

ロンドン五輪100メートル背泳ぎメダリストで、現在はミズノ㈱スイムチームコーチ、スポーツキャスターなど多方面で活躍している寺川綾さん。後編となるこちらの記事では、ふたりのお子さんの母である寺川さんに子育てで大切にしていることをお聞きしました。

寺川綾さんの子ども時代のお話(前編)はこちら>>

二人のお子さんが水泳をはじめた意外な理由とは?

お子さんたちは今、どのような習い事をしていますか?

二人とも水泳とチアダンスを習っていて、高学年になる上の子は習字と塾にも通っています。

長女が小さい頃は、本当にびっくりするくらい水が苦手で、お風呂に入っている時に顔に水滴がつくと泣いちゃうような子でした。ある時に保育園の先生に呼び出されて「水遊びをするときに絶対に入りたくない、水着にもなりたくないって言うんですけど大丈夫ですか?」と聞かれたのですが、本人が嫌がるなら無理をして水に触れさせなくていいと思っていました。

そうしたら、娘から「自分だけプールができない!」って急に言われて。負けず嫌いなのでみんながプールで遊んでいるところを見ていたら自分だけできないのが嫌だったようですね(笑)。

「じゃあ、スイミングスクール行ってみる?」と聞いたら「行く!」と言って4歳から通い始めました。今では水泳が大好きになりました。勉強よりプールに行きたい!という感じで、昔の私を見ているようです。

次女は、お姉ちゃんがピンクのゴーグルをつけているのを見て「私もやりたい!」と。ゴーグルが欲しさに同じく4歳からスタートしました(笑)。

画像はイメージです

水泳教室でお子さんに唯一注意したことは?

コーチがいるので、泳ぎに関しては一切口出しはしません。でも一度私が練習を見ていた時に、先生が見ていないのを見計らって娘が途中で立っているのを見たんです。その時は、みんながちゃんと泳いでる時に輪を乱すようなことをするなら辞めてしまいなさいと叱りました。泳ぎのことに関しては言わないのですが、礼儀・マナーには厳しくしています。

子どもたちとの習い事のルール

2年前くらいにスキーに連れて行ったら長女がハマり、今年も家族で行ってきました。スポーツが大好きで、どんどん好きなものが増えていく感じです。子どもたちは好奇心旺盛ですね。

現在は水泳の練習も増え、他のことを削っていかないといけない状態になっています。

自分がやりたくてはじめたことなので、自分でやると決めたことはちゃんと頑張らないとねとは話しています。もし、学校でやらなくてはいけないこと、宿題などをさぼりはじめたら好きなことから削るよ!って伝えています。最低限やらなければいけないことは、きちんとやってもらいたいと思っています。

メンタルケア&習い事のサポート法

お子さんのメンタルケアなどのサポートはしていますか?

まったくしていないです。娘はまだ悔しいと思ったり反省することがあんまりないんですね。練習でも良いところを拾って「こんなことできた!」って素直に喜ぶタイプです。私からすると、反省しないといけないことの方が多いと思うのですが、本人が楽しいと感じている事が一番いいかなと思っています。

私も選手時代に、良かったこと悪かったことよりも常に楽しいことを優先してやっていました。私も「反省していないな」とコーチに思われていたと思います。親子でよく似ていますね(笑)。

アスリートとして子育てで気を付けていることは?

気を付けているのは食事と挨拶です。

次女は恥ずかしいのか挨拶がなかなかできないんですよね。でも理解しているけどタイミングがわからないだけなのかもしれないと思い、先日病院に行ったときに「せーの」と私が横で小さく声掛けをすると「こんにちは」と言うことができました。

挨拶ができないと決めつけていましたが、もしかしたら今までも私が先に挨拶をしていたので、この子のタイミングを奪っていただけなのかもしれないと思いました。見方を変えたり子どものペースに任せることの大切さにも最近気付きましたね。

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食事に関しては、母にしてもらったことを私も子どもたちにしてあげたいという気持ちが大きいですね。この間は子どもたちと一緒に、味噌作りや料理をして楽しみました。
できる範囲でですが、食事はなるべく手作りのものを用意できるようにしています。今までお弁当は必ず手作りだったのですが、先日娘が初めてコンビニのおにぎりを食べたときには、袋の開け方に驚いていましたね(笑)。

お子さんの水泳について声掛けなどはしますか?

娘が通うスイミングスクールは選手コースになるとコーチに一任してもらいたい、ということもあり、気が散らないように親はなるべく見に来ないでくださいと言われています。大会の応援には行きますが、本人が楽しそうに帰ってくると「よかったねー!」って感じで迎え入れて。泳ぎについては何も言いませんね。

自分が泳いでいるわけではないので、娘が何に成功、失敗してるかわからないですし、見ている私が勝手に判断するのは違うかなと。大会で上手くいったと本人が感じたならそれが一番いいと思っています。

ですが、娘からしたら、私は泳ぎも教えないし「おにぎり食べた?」くらいしか言わないので、あまり応援してくれないって思ってるかもしれないですね。

私が見ているのを知っている時は泳ぎがどうだったか聞かれますが、「コーチは何て言ってた?」と聞き返しています。小さい頃は、体の成長などで泳ぎが変わりやすい時期なので、今の泳ぎが良いとか悪いとかいうのは一概に言えないと思っています。でも最近は、「考えてわからないんだから聞いてるんだよ!」って怒られたりもして……。子どもとの距離は難しいですね(笑)。

思春期との向き合い方と家族のルール

子どもの思春期で困っていること

長女は高学年になり思春期も意識しなければならない時期になってきました。今はまだ思春期とは違うと思いますが、とにかくどちらも負けず嫌いなので姉妹のケンカが絶えないんですよ。それで仲裁しようと間に入ると、今度は私が巻き込まれてしまうのでそれは少し困りますね。

最近長女が私に怒られたとき、こそっと睨んでいたことがあり、私が「今の目は何?」とさらに叱ったことがありました。普段はとても仲の良い親子ですが、上下関係はきちんとしていこうと思っています。だいぶ厳しいママだと思いますね。

下の子は、まだ幼いですが姉の姿を見て、何をしたら怒られるかわかっているようですごく要領がいいんです。長女と私の言い合いがはじまると「この洗濯物畳んでおいたよ」とか関係ないところから入ってきます(笑)。下の子あるあるですね。

ママがオリンピック選手であること

長女は、私のことを理解してきていて「日本で一番早い記録ってママなんでしょ?」と言ってきたり、刺激にはなっているようです。
最近は私と自分を比較し始めて、「ママは小学生の時はどうだった?」と聞いてくるんです。

私がやってきた練習など経験談は話すのですが、私と長女では時代も環境も異なります。比べはじめると長女の方が練習回数が少ないとか…悩みはじめてしまうので、「ママの話を聞いたところで、それが正解というわけではないし、そのまま同じことをできるわけでもないから、自分が楽しくてやりたいって思えることが一番いいからね」と伝えています。

家族で決めていること、ルールなどはありますか?

休みが合わなかったり、夜はそれぞれの仕事や習い事で家族全員が一緒に過ごす時間が少なくなっているので、家にいる時は必ず朝ごはんを揃って食べるようにしています。

あとは、喧嘩をした時に家族みんなで話し合いをすることがルールですね。

子ども同士だけではなく、夫婦喧嘩をした時にも、子どもも一緒に話し合いをします。子どもは夫婦喧嘩を聞かないふりをしても、実は聞いていて「なんでパパとママは喧嘩しているんだろう?」と不安に思っていたりするんですよね。こちらもその視線を感じるので、だったらみんなで共有して考えましょうと。子どもにも意見をもらい「謝ったほうがいいと思う」とか言われたりします(笑)。

子どもの好きなこと、楽しいことを大切に見守りたい

娘には楽しみながら好きなことに挑戦してほしい

長女はとにかく水泳が大好きなので、練習が休みの日もプールに連れて行ってほしいと(笑)。私の仕事で、土日の小学生向けのレッスンイベントがあり、娘も入れそうな時は、娘も参加することがあります。仕事の準備をしている私を見て「なんの仕事に行くの?水着を持ってるからプールでしょ!行っていい?」という感じです。

仕事なので迷惑をかけないように、遊びではないからねと常に伝えていますが、結構な頻度でついてきますね(笑)。親の仕事を見ることは良いことだと思うので、できる範囲で連れて行ってあげたいと思っています。

寺川綾さんのレッスン風景
寺川綾さんがコーチをするレッスン

親は子の「夢中になって楽しむ力」を育むことが大切

子どもが手を伸ばして届く範囲というのは限られています。伸ばした手のさらに先へ連れて行ってあげられるのは、親じゃないとできないことだと思うので、親としては子どもが好きなことに出合う機会を増やしてあげられるといいですよね。

好きなことを見つけて、夢中になって楽しむことができれば、あとは子どもが自分自身の可能性を広げていけると思うんです。

寺川綾さんの幼少期から水泳選手になるまで。楽しさと葛藤、そして家族のサポートについてお話しいただきました。「好き」と「なりたい自分」が一致したときに水泳選手になるスイッチが入った・・・前編を読む>>

 

寺川綾さんプロフィール

1984年、大阪府大阪市生まれ。3歳から水泳を始、中学時代より頭角を現す。2001年、高校2年生で世界水泳選手権に初出場。その翌年、2002年パンパシフィック水泳に出場し、200m背泳ぎで銀メダルを獲得。以降、アテネ、ロンドン五輪2大会出場、福岡、上海、バルセロナ世界選手権3大会出場と国際大会で活躍。ロンドン五輪では個人種目(100m背泳ぎ)、リレー種目(4×100メドレー)の2種目で銅メダルを獲得した。50m背泳ぎ、100m背泳ぎの日本記録保持者。
2013年12月、現役を退くことを表明。現在、ミズノ㈱スイムチームコーチとして後進の指導及びスポーツの振興に尽くす。スポーツキャスターを始め、多方面で活躍。プライベートでは二児の母。

撮影/黒石あみ 取材・文/やまさきけいこ

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