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「一喜一憂」とは?
まずは、『一喜一憂』の意味と読み方をおさらいしておきましょう。
読み方と意味
この言葉は、『一喜一憂』と書いて、「いっきいちゆう」と読むことができます。冒頭でも述べたとおり、「ひとつひとつの状況の変化に、喜んだり悲しんだりすること」を意味する言葉です。
「喜」は「よろこび」、「憂」は「心配すること」の意を持つ漢字なので、覚えやすいですね。
語源は「中国の詩」との説あり。日本では江戸時代から使われていた!
『一喜一憂』の語源は、正確には明らかになっていません。
有力な説としては、中国の宋代の詩人・陸游(りくゆう)が詠んだ詩の中で、人生の苦悩や心の揺らぎを『一喜一憂』と表現し、それが日本へ伝来したことが挙げられます。
日本では、江戸時代末期から明治時代に活動していた戯作者・ジャーナリストの染崎延房の「近世紀聞」(1875年)で『一喜一憂』が用いられていたことがわかっています。江戸時代を生きた人たちも『一喜一憂』することがあったのかと、想像が広がりますね。
使い方を例文でチェック!
では、ここからは『一喜一憂』の具体的な使い方を例文を通してチェックしていきましょう。
1:育児には嬉しいことと同様に、不安や心配ごとも付き物だ。【一喜一憂】しながら、日々子どもと向き合っている。
育児をしていると、日々嬉しいこともあれば、不安なこともたくさんありますよね。このように、ひとつひとつの出来事に喜んだりハラハラしたりする様を『一喜一憂』で言い表すことができます。
2:自分のチームのシュートが決まって喜んでいたら、相手チームもすぐにシュートを決めて焦ってしまった。試合を見ているとついつい【一喜一憂】してしまう。
スポーツ試合のシチュエーションで『一喜一憂』を使用した例。自チームが優勢になっては喜んで、劣勢になっては焦って……そんな、喜んだり焦ったりして、感情が揺れ動く様子を表現する際に使うことができます。
3:就職活動の合否には【一喜一憂】しても仕方がない。何事も「縁」と捉えて、冷静に取り組んだ方が良い。
就職活動や受験など、合否のかかった物事にはつい『一喜一憂』してしまいますよね。喜んですぐに落ち込んで……なんてことも、よくあることです。このような、感情が揺れ動いて落ち着かない様子を言い表す際に『一喜一憂』を用いることができます。
類語や言い換え表現は?
では、『一喜一憂』にはどのような類語や言い換え表現があるのでしょうか。ここでは、『一喜一憂』と近い意味を持つ類語をご紹介します。
1:一顰一笑 (いっぴんいっしょう)
『一顰一笑』とは、「顔をしかめたり笑ったりすること」を意味する言葉です。「喜んだり悲しんだり」する『一喜一憂』に近い意味を持つ類語と言えます。
ただし、『一喜一憂』が喜んだり悲しんだりする感情の動きを指しているのに対して、『一顰一笑』では、顔に出る感情の動き=表情に焦点が当てられていることに注意しましょう。
2:悲喜こもごも(ひきこもごも)
『悲喜こもごも』は、「悲しみと喜びが入り交じっている様子」「悲しみと喜びを同時に味わうこと」を意味します。
「喜んだり悲しんだりすること」を言い表す『一喜一憂』と似た意味を持つ言葉ですが、『悲喜こもごも』のほうが、ふたつの感情を“同時に”味わうニュアンスが強くなります。
3:一進一退(いっしんいったい)
『一進一退』とは、「良くなったり悪くなったりして、進んだり後退したりすること」を意味する言葉です。
『一喜一憂』と似た意味を持つ類語として挙げられますが、『一喜一憂』が感情の浮き沈みに焦点を当てているのに対して、『一進一退』は状況の浮き沈みに焦点を当てている点が異なります。
対義語は?
『一喜一憂』には、どのような対義語があるのでしょうか。ここでは、『一喜一憂』とは反対の意味を持つ言葉をチェックしていきましょう。
1:泰然自若(たいぜんじじゃく)
『泰然自若』とは、「なにが起こっても落ち着いていて、少しも動じない様子」を意味する言葉です。
「彼は『泰然自若』としていて騒がない」のように使われます。ちょっとした変化に喜んだり悲しんだりする『一喜一憂』とは反対のニュアンスがありますね。
2:余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)
『余裕綽々』とは、「大いに余裕があって、悠然と構えている様」を表す言葉です。ひとつひとつの変化に喜んだり焦ったり落ち着かない様を言い表した『一喜一憂』とは反対の様子を表現することができます。
3:冷静沈着(れいせいちんちゃく)
『冷静沈着』は、「物事に動じず、あわてることのない態度」の意味を持つ言葉です。
『一喜一憂』とは反対に近い意味を持つ言葉ですが、『一喜一憂』は感情、『冷静沈着』は態度のニュアンスが強くなる点が異なります。
英語表現は?
ときには、『一喜一憂』という状態を英語で伝えたいシーンもあるかもしれません。最後に、『一喜一憂』の英語表現をお伝えします。
1:Riding the emotional rollercoaster.
英語には、“Riding the emotional rollercoaster.”という表現があります。「感情のジェットコースターに乗っている」と直訳でき、喜んだり、悲しんだり、感情が大きく揺れ動く様子をジェットコースターに喩えた、『一喜一憂』と訳されることもある慣用句です。
なかには、ジェットコースターではなくヨーヨーに喩えて、“an emotional yo-yo”とする場合もあるようです。
2:Ups and downs
“Ups and downs”は、「上昇と下降」「上り坂と下り坂」と直訳される言葉ですが、「(感情の)浮き沈み」を言い表すこともできます。『一喜一憂』の英語表現として使うことができる言葉のひとつです。
何事にも『一喜一憂』せずに、できるだけ『泰然自若』を目指しましょう
今回は『一喜一憂』の意味や語源、例文、関連語をお伝えしてきました。『一喜一憂』という言葉に言い表される状態がどのようなものか、理解が深められたのではないでしょうか。
日々生活をしていると、つい『一喜一憂』してしまうシーンが多々ありますよね。なるべく『一喜一憂』しすぎずに、『泰然自若』としていたいものです。
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文・構成/羽吹理美