教えて!親野智可等先生「宿題にてこずる」「勉強が好きじゃない」小学1年生への処方箋

幼稚園や保育園にはなくて小学校にはあるもの、それが宿題です。子どもの学力もやる気も千差万別なのに、宿題は一律に出されます。子どもが進んでやってくれればいいですが、そうでない場合、親はどのようにサポートすればいいのでしょうか。取り掛かりやすくするための工夫や声かけの方法など、今日からできることを親野智可等先生にお聞きしました。子どもの学びを楽しくサポートするためのヒントを、一緒に見つけてみませんか?

「うちの子、宿題にてこずってる」そう感じたら、おすすめしたい3つの方式

①「先に宿題? 遊ぶ?」子どもが決める選択肢方式

自分で決めると「やらなきゃ」と思うように。

まず紹介したいのが選択肢法です。

「先に宿題をやってから遊ぶ? それとも遊んでから宿題をやる?」

このように声をかけ、子ども自身に選ばせてください。たとえ先に遊ぶ方を選んだとしても、「自分で決めた」という責任を感じるので遊んでから取り掛かる可能性は高まります。決めたことをきちんと実行できた時には、しっかりと褒めてあげましょう。

宿題に限ったことではありませんが、日ごろから全体を漠然と見るのではなく、部分的に褒めるポイントに気づいてあげることが大切です。小さな成功や努力を見逃さずに、具体的に褒めることで子どものやる気を引き出しましょう。

②簡単な問題でスイッチオン!ウォーミングアップ方式

付箋に書くのは簡単な問題だけ。やる気アップしたところで、宿題スタート。

宿題を始める前に簡単な問題を解くことで、勉強モードに切り替える準備をします。

こんな話があります。ある時、お子さんが学校の宿題に手をつけていないことにお母さんが気づきました。やる気がでていないことが分かったお母さんは、大きめの付箋に単純な足し算の問題を5問書いて「1問20点で100点満点ね。さあ、やってみようか」と声をかけます。簡単なので子どもはパパっと解いて全問正解。そこでお母さんは「すごいね!」と大きな花マルと100点を書いてあげました。すると、その子は一気にやる気がでて、宿題を終わらせてしまったそうです。

宿題の前に簡単な問題でウォーミングアップすることで、子どもの集中力とやる気を高めることができるんですね。

③ランドセルの中身を全部出す!とりあえず準備方式

ランドセルの中身を大きな箱に全部出して見える化する。

学校から帰ったらランドセルを放り投げて遊びに行ってしまう元気なお子さんには、ランドセルをいったん空っぽにする方法がお薦めです。

玄関にランドセルが2つ入るくらいの広さで深さ5,6の箱をおき、遊びに行く前にランドセルの中身を全部その箱に出すようにします。すると、宿題のプリントやドリルが目に見える状態になり、遊びからかえってから手に取りやすくなります。また「漢字一字だけ書いてから遊びに行こう」とハードルを下げて促すのも効果的。一字書くと全体の見通しが持てますし、そのまま一気に全部やってしまうこともありえます。

子どもが先に遊びに行く場合も、お母さんがやるべきプリントをテーブルに広げておくとか、宿題のページに下敷きを置くなどしておくと、子どもが帰ったらすぐに宿題に取りかかりやすくなります。ランドセルの中身を見える化することで、自然と宿題に対する意識を高めることができます。

「勉強が好きじゃない」我が子への4つのアプローチ

①否定的な言葉は絶対NG

否定的な言葉は控えよう。

「自分でやらなきゃダメでしょ」、「なんでできないの?」といった否定的な言葉は、子どもにとってマイナスでしかありません。それを聞いた子どもは、「僕ってダメな子なんだな」、「お母さんは私のことをダメな子だと思ってるんだな」と感じてしまいます。

その結果、親への不信感が生まれ、「大事にされていないかも知れない」、「勉強ってイヤだな」と思うようになり、負の連鎖を引き起こしてしまうのです。

否定語の声かけを続けると、脳が「宿題・勉強=不愉快」と認識して勉強が嫌になる

ではなぜ、負の連鎖が起こってしまうのでしょうか。

それは、脳は勘違いの名人だからです。宿題のことでに叱られると、子どもは不愉快な気持ちになります。宿題や勉強の中身ではなくの言葉が不愉快なのですが、脳が勘違いして宿題・勉強は不愉快という認識になってしまうのです。その結果、次第に勉強が嫌になってしまうというわけです。

勉強で叱られると、子どもは勉強自体の価値を下げて自分のプライドを守ろうとする

イソップ童話「すっぱいぶどう」の教訓は?

もう1つ、イソップ童話の一つである「すっぱいブドウ」に由来する、「すっぱいブドウ効果」というものがあります。これは、キツネが高い木にあるブドウを取ろうとしますが、どうしても手が届かず、最終的に「どうせすっぱいブドウだから」と諦める話です。

これは、ブドウの価値を下げることで自分のプライドを守ろうとする意識の働きです。同様に、子どもは勉強のことで叱られると、勉強の価値を下げることでプライドを守ろうとします。「勉強、勉強ってうるさいな。勉強よりもっと大事なものがあるよ」というように。

つまり、勉強の価値を下げることで自分の価値をあげようとするのです。これらを避けるために、勉強に関する否定語は一切言わないと腹をくくるようにしましょう。

②勉強のハードルを低くする

リトルサクセスで自信をつけていこう。

例えば、宿題の前のウォーミングアップが有効です。「3+5」「8+4」など簡単な計算問題を5つ書いた紙を子どもに見せて、「1問20点。何分でできるかな?用意ドン」と言います。子どもはあっという間にやってしまうはずです。

やり終わったら「はい、7秒でできました。すごい」とほめ、丸つけをして「全問正解100点満点」とほめます。これがリトルサクセスになって、脳の線条体というところにあるやる気スイッチが入ります。これで、宿題に取りかかるハードルが下がります。

この他にも、取り組みのハードルを下げる方法として、お母さんが問題を読んであげる、最初はお母さんと1問ずつ交代で解く、ヒントや答を教えてあげるなども効果的です。取りかかりにくい子は、とにかくエンジンがかかるまでは手厚くサポートしてあげましょう。エンジンがかかれば、だんだん自分でできるようになりますので。

また、丸をつけるときは「かわいい花まる」が効果抜群です。「かわいい花丸」で検索すると、さまざまなデザインの花丸が出てきます。ぜひ、こうしたちょっとした演出で「勉強って楽しい」と感じさせてあげてください。

③学校のノートを見て、ピンポイントのつまずきに気づいてあげる

ノートを見てあげて、つまづきポイントを確認しよう。

学校のノートを見ることで、どこでつまずいているのか具体的に把握することができます。

「算数ができない」とひとくくりにするのではなく、「引き算ができない」、さらに「13-8の計算で、10-8ができていない」というように、ピンポイントで問題点を見抜くことが重要です。それを見つけられれば、お子さんに的確なアドバイスができるようになります。

特に「足して10になる数」(補数)が瞬時に出るかどうかは非常に大切です。つまり、7の補数は3、8の補数は2です。子どもには「補数」という言葉は難しいので「7の相棒」という言い方をすることもあります。これが瞬時に出るようになれば、繰り上がりの足し算や繰り下がりの引き算で苦労しなくてすみます。瞬時に出ない状態なら、子で楽しみながら練習するといいでしょう。

④どうしてもダメなら担任の先生に交渉を

同じ一年生でも個人差は大きく、学力も集中力も百人百様です。宿題は一律に出されるので、中には大苦労する子もいます。それが毎日だとが叱ることが増えますし、子どもの気持ちが荒れたり自己肯定感が下がったりします。

もしわが子にとって負担が大きすぎると感じる場合は、担任の先生に宿題の量について相談してみてください。クレームではなく、悩み相談として話すことがポイントです。先生に相談することで、お子さんに適した宿題の量や内容に調整してもらえ、宿題への負担が軽減されるかも知れません。お子さんがより前向きに宿題に取り組めるように大人の交渉術を発揮してください。

まだ1年生ですので、焦る必要はありません。その子に合ったハッピーなアドバイスを工夫し、勉強が楽しいと思えるように、ゆっくり取り組んでいきましょう。

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教えてくれたのは…

教育評論家
親野 智可等先生

教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。Twitter、Instagram、YouTube、Blog、メールマガジンなどで発信中。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。『子育て365日』(ダイヤモンド社)、『「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣』(Kindle版)など、著書も大人気。公式ホームページ「親力」

取材・文/黒澤真紀

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